パパとおじいちゃんとお兄ちゃん。
僕のお腹の上には丸くなり眠っている2歳位の男の子がへばりついている。
…何…?これ?すごいがっちりとへばりつかれている…。
団長さんに退かしてもらおうとするも全然離れない。
え…、何?小さい子ってこんなに力強いの?
しばらく奮闘していたけどもう諦めよう。取りあえずこのままで良いや…。
危機は脱したので今回の件について精霊さん達に話を聞くことにした。
「結局今回の事は何だったの?皆が守っていたものを魔獣達が狙っていたの?何であんな状況になってたの?」
精霊さん達の話を要約するとこうだ。
○精霊さん達が守っていたのは次期精霊王となる現精霊王の子供。
○現精霊王が広い世界を見せる為にある夫婦の元へと送り込んでいた。
○元々力のある精霊は香しい魔力を放ち、それが魔獣を引き寄せやすい。その為、次期精霊王である子供が成長するに当たって魔獣が頻繁に出現するようになった。
(チャコル伯爵領に魔獣の出現が頻発し、瘴気が広がったのはそのせいのようだ。)
○先日魔獣に襲われた際、夫婦が身を呈して子供を守り、夫婦は帰らぬ人に。このままでは次期精霊王の子供は魔獣に食べられてしまうため精霊さん達が慌てて保護した。
○子供は幼いながら夫婦が魔獣に襲われ儚くなる所をずっと見ていた為、ショックで寝覚めを拒否しているのかずっと眠りについている。
○先程僕が魔力を精霊さん達に分けた時子供にも僕の魔力が浸透し、僕から離れなくなった。
(この子を覆うように囲んでいた精霊さん達を僕が魔力のプールにちゃぷんしちゃったからね)
……次期精霊王……、つまり…、この子か…。
まぁ、つまりは精神的に不安定になっていた次期精霊王に不用意に僕が魔力をあげたもんだから、僕を親だと認識して離れたがらないって事だ。きっと自分を守ってくれる何かの側にいようとする自己防衛本能なのだろう。
…なんて事だ…。
僕は齢13歳にして2歳の子持ちになってしまった…。
この子を立派に育て上げなければというプレッシャーがのしかかる。だって僕はあと数年で自由気ままに世界を見て回る予定だったんだよ?!
でもそんな事をしたらこの子に十分な教育を受けさせてあげられないじゃないか!
僕がこの子を立派に育て上げ、幸せにしてあげなければならないなんて…。
頭の中であれも教えてこれも体験させて…、と未来の教育パパとなっている。
なんて事だ…。僕はもうこの子を僕が育てるのを受け入れているじゃないか……。
魔力、体力も回復したのでここを片付けて帰ろう。
…取りあえず…、助けて!ジルおじいちゃん!!
お腹(に子供)を(抱えて)大きく(お腹を膨らま)した僕を出迎えた面々は確実に混乱の坩堝へと陥った。
なんかすみません……。
その中でジルは2秒だけフリーズしてから笑顔で、
「お帰りなさい、アル様。ご無事で何よりでした。そちらの可愛いお子様の事も是非ご紹介下さい。」
僕は感動したね!!さすがジル!!
あの2秒で僕の葛藤や不安やら全てを感じて、ジルの葛藤も飲み込んで受け入れてくれたんだから!!
さすがジル!!
”元居た所に返してきなさい“や、”子育ての責任を取れるのですか?“とか言われてたら僕は…、僕はこの子を育て上げる決意を、覚悟を踏みにじられてジルへの信頼が揺らいでしまったかも知れないのだから!!
さすが!ジル!!
僕のお父さんで、この子のおじいちゃんだ!!
とにかくこの子が離れない…。眠ったまま僕の服をがっちり掴んでいる。取りあえず僕はシロガネに使った抱っこ紐を調整してこの子を抱えながら歩いている。
ライデンの元へ行くと、聖獣の仔達がわらぁ〜っとやってくるも、近くまで来ると怪訝そうにして、
「なぁに?それ?」
「アル、変なのぉ〜!」
と、僕を観察するようにグルグル周る。
シロガネとヤモ君の所へ行き座る。シロガネとヤモ君はこの子をふんふんとしながら、
「アル〜、この子どうしたの?」
「聞いて、シロガネ、ヤモ君。今日から僕はこの子の父親になるよ。今日からこの子も僕達の家族になるんだ。」
と言うと、
「じゃあ、僕はお兄ちゃんになってあげるね!」
「僕も!!可愛がってあげるね!!」
なんてよい仔達だ……。僕は感動した。
そしてこの子もこの仔達も立派に育て上げることを胸に刻んだのだった。
アルは誕生日を迎えて13歳になりました。




