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何これ??


 魔獣達が中心にいる何かを狙っている。

きっと物音1つでこの均衡は崩れ魔獣達による暴走と殺戮が始まるだろう。それ程に空気が張りつめている。

あの子達は何を守っているのだろう…。

いや…、それを考えるのは今じゃない。まずは確実にこのピンチを切り抜けなければ。

失敗は許されない…。


僕は気づかれないように薄く薄く魔力を周辺に馴染ませていく。

うっかり気づかれないように、地中から全てを支配するように、このフィールド全てを僕の支配下に置くように。



 未だかつてここまで繊細に魔力を練り上げ行使した事はない。

冷や汗が滲み、手が冷たく震える。頭の中が白くパンッと弾けそうになる。

その全てをギリギリの所でコントロールし、意識を失わない様に魔力を拡げた。


もう少し…、もう少しで全てを支配出来る…。

その時、不意に精霊達が守っていた何かの魔力が揺らいだ。

その時を待っていたかのように、魔獣達と精霊達の均衡が崩れた。


魔獣達が咆哮を上げ、一斉に襲い掛かる。

僕は練り上げ拡げた魔力に一気に魔力を込め、辺り一帯を水没させる。

一匹残らず絡め取るように、水圧で流されるのではなく水に吸い込まれるように飲み込まれるように全ての魔獣を水の中に取り込んだ。



 水没した一帯にポッカリと穴が開くように水没していない場所がある。そこには精霊さん達と精霊さん達が守っていた何かがいる。



良かったぁ〜……。上手く行ったぁぁぁ〜…。


僕はガックリと力が抜けてその場に膝を付く。

あぁ…、まだ意識を失ってはダメだ…。マジックポーチからポーションを取ろうと奮闘するも手が震えて取れない…。力が入らない…。

早く早くと狭くなる視界に焦っていると、サンガリア公爵家の騎士団長さんが慌てて僕の手にポーションを乗せくれた。飲もうとするが、手が震えて開けられない…。

団長さんがポーションを開けて僕の口まで持って来て飲ませてくれる。


…お手数お掛けします……。



……はぁ〜…、僕、復活!!

ヤバかったね!倒れる寸前だったね!!


「ふぅ…、助かりました。ありがとうございます。」

いやぁ…、一緒に来て貰って良かったよ。

安心してぽやぽやしていると、真後ろから何かが飛んできた。

チャコル伯爵家の騎士団長さんがその何かを切り払う。


魔獣だった。


あと少しで完全にフィールドを支配下に置けた瞬間に均衡が崩れたもんだから、その支配下から漏れた魔獣だろう。

「いやぁ…、助かりました。ありがとうございます。」

「いやいや、こちらこそ。あの数の魔獣を一気に倒すだなんて驚きで言葉もありません。緻密な魔力操作も…、いやぁ……、勉強になりました。」


えへ、褒められたぁ〜!こんなに頭パンってなるくらい頑張ったんだもん!褒め言葉は素直に受け取ろう!もっと褒めてもいいんだよ!僕、頑張ったんだからね!!


と、褒められ待ちをしていると、精霊さん達から、

「アル!早く向こうに行こうよ!!」

「早く!早く!」


…あ…、あ、もう少し待ってもらっても良いですか?

あぁ…、ダメですか…。そうですか…。


僕は水没させた一帯を一部解除して精霊さん達の元へと向かう。その際、周りを見てはいけない。

うっかり虚ろな目と目が合おうものなら僕はしばらく魘される自信がある…。


出来るだけ足早で通り抜け、

「大丈夫だった?甘い物あるよ?元気になるよ?何かして欲しいことはある?」

力ない精霊さん達に焦ってあれこれ声をかける。

「…この子を…、この子をお願い…。守って。」

存在が薄れそうになる精霊さん達に僕は焦る。

「アル!お願い!魔力を分けてあげて!!消えちゃう!!」

「えぇ!!消えちゃだめぇ!!」

魔力で精霊さん達を包む。さながら羊水の様に、魔力補給のプールの様に。

おぉぅ…、ぐんぐん魔力が取られていく…。

その甲斐もあって精霊さん達の輪郭がはっきりしてきた。

ぐんぐん魔力が抜けていく…。

精霊さん達の目に力が戻って来た。

「もっと頂戴〜!」


…待って…、無理ぃ…。1回魔力補給させてぇ…。

僕の目の前が白くなりプツンと意識を失った。




 目が覚めるとテントだ。このテントは見覚えがある。僕がロバート様にあげた”遠征でもへっちゃら。騎士さんも大喜びテント“だ。

僕の自信作。テントに空間拡張して、遠征でも野営しなくて済むように生活環境を整えた上に、体力と魔力の回復促進の魔法陣を付与した逸品だ。


その甲斐もあって魔力が少し回復したのだろう。

しかしまだ頭がガンガンするぅ…。

魔力欠乏だ。僕はフィラムの花から作ったマジックポーションを取り出し飲む。

さすが僕作、中々の効き目だ。

自画自賛しながら2本目を飲んだら全快。


はぁ〜、辛かったぁ……。



「あっ!アル!気が付いた?もう大丈夫?」

しょんぼりしてラス君が、

「ゴメンね、アル。僕達必死でアルの事見てなかったんだ…。ごめんね…。」

クウちゃんがしくしく泣きながら謝ってくれる。

「大丈夫だよ。もう何ともないよ。今ならもっと魔力あげられるよ。」

僕が元気づけたくて明るく言うと、

「おやめなさい。今日はもうダメです。」

団長さんに窘められた。




……それはそれとして…、これは何?

僕のお腹の上で眠っている子供……。


…いつの間に……?

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