何があるの?
「…あ…、…ル、……、ア……て…、」
……なんかうるさい……?まだ僕は寝てるのに…。
…ル…、アル…、アル、…きて…、
…ん〜…、なにぃ〜…、まだ寝せてよぉ……。
…ばっしゃぁぁん!!!
「なっ!なっ!何っっ?!」
寝てる所、いきなり水をかけられた……。
何これ……、僕…、呆然としちゃうんですけど…?心臓止まっちゃうかと思った……。まだバクバク…してる……?…大丈夫?僕の心臓ちゃんと動いてる?
「やっと起きた!!アル!起きてって言ってるでしょ!!ぼんやりしてないで早く行くよ!!」
周りに精霊さん達が集まって寝ていた僕を責めたてる…。何これ…?何があったの?
「ま…、待って…。どうしたの?何でこんな事になってるの?!」
……説明求む……!!
「説明なんてしてる暇ないよぉ!!早くしてよぉ!早くしないと死んじゃうよぉ!!」
わんわんと泣きながら僕の手を引っ張る精霊さん達。
待って!行くから準備させて!!
どうやら精霊さん達にとって大切な何かがピンチなんだそうだ。人か仲間か、まだ別の何かか?
緊急事態のようだからジルを呼び出しチャコル伯爵と騎士団長さんに声をかけてもらう。
ジルはただならぬ雰囲気の精霊さん達を見て直ぐに動いてくれた。
他国で他領だから念の為ね。勝手に動いて国際問題になったら大変だからね。
その間僕は1人で準備を整える。びしょ濡れだった髪は魔法の温風で乾かして、念の為貴族の服ではなくマジックポーチに入れてあった冒険者としての服を着ておく。腰に双剣を差してフード付きマントを羽織る。
そこでジルが僕を呼びに来た。チャコル伯爵と騎士団長さんが深夜にもかかわらず僕と会ってくれるそうだ。ありがたい。
「お休みの所申し訳ございません。」
チャコル伯爵は寝ていたのだろう。簡易な羽織の下は寝間着のようだが、さすが伯爵家当主。緊急事態に備えた覇気を持って僕を迎えてくれた。
「精霊達の様子がおかしいのです。ただならぬ様子で僕を迎えに来たので、すみません。何があったのか不明ですが僕はちょっと行ってきます。」
「ちょっと待て!分からないのに行くのか?」
「えぇ。分からないけど行かないといけないのです。」
「待ってくれ!誰かを一緒に行かせよう!賢者1人で行かす訳にはいかん!!」
えぇ~…、早く早くと急き立てるこの子達を横目に
「直ぐに出なければいけません。きっと一刻の猶予もないのでしょう。」
「ならば私がお供致します。」
チャコル伯爵家の騎士団長さんとサンガリア公爵家の騎士団長さんが申し出てくれて直ぐに出立の用意をしてくれた。
外に出てハクエンとライデンに聖獣の仔達と孤児院の子供達の事を頼む。一緒に寝ていたシロガネとヤモ君も聖獣の仔達が寝ていた籠の中へと寝かせるとハクエンが、
「何かがおきている。魔獣の暴走か…、」
後ろにいた伯爵や騎士さん達がざわめく。
「しかしそれだけでは精霊達があれだけ騒ぐことは無い。他に何かあるのだろう。我の耳にも精霊達の悲痛な叫びが聞こえてくる。移動の時間が勿体ない。我に乗れ。空を駆けそこまで連れて行ってやろう。」
「うん。ありがとう、ハクエン。」
僕は後ろを振り返り、伯爵に後の事を頼んだ。援軍を送るのか、守りを固めるのか。
ジルの事も見ると頷く。きっとジルはジェラルド様や聖獣の仔達や孤児院の子供達を避難させてくれるだろう。
「早く乗れ!」
僕達3人はハクエンの背に乗り何かがあったであろう場所に向かった。
チャコル領の端、村人もあまり立ち入らないと言う森へと降り立った。
…すごい瘴気だ。
「いつの間にこんな…、此処は深淵の森と近隣の村人に言われております。人を拒絶するような雰囲気がある為余程のことがない限りここへは皆立ち入りません。ですが…、こんなに禍々しい雰囲気ではなかったはず…、…何があったのか…。」
僕は念の為ハクエンと団長さん2人に護りの魔法陣を付与する。
「こっちこっち!早く!」
「大丈夫かなぁ…?無事かなぁ…?」
「まだ気配がある。間に合ったかなぁ…?」
精霊さん達の案内で森の中へと入って行くが、確かに魔獣達の様子がおかしい。何かをきっかけに暴走が始まりそうだ。
「そんな奴ら放っておいて!先にこっち!!」
僕が魔獣を水に沈めようとすると、精霊さん達に怒られた。
「暴走が始まったらもう誰にも助けられない。先にあの子を助けて!」
「僕達もあの子を助けたら手を貸すから。今はまだ魔獣に手を出して刺激しないで!!」
あの子?訳が分からない。精霊さん達にとってそんなに大事な子?
森の中を魔獣に見つからないように進む。神経を張るからかいつもよりも疲れる。
「ここ!!着いた!」
「あの子を助けて!お願いアル!!」
そこは一発触発、魔獣に囲まれ今にも力尽きそうな精霊達が何かを大事に守っていた。
ひぇ……、ここに乗り込むの……?




