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その頃、他の方々は ⑤


 ある公爵家当主の葛藤


 悩んでも仕方がない事は分かっている。


アル君がこの国の瘴気の森を浄化して数年。5つあった瘴気の森は残りあと1つ。この森の浄化を頼めばアル君は嫌な思いをする事になるだろう…。

その森のある地の領民には何の咎は無いし、頼めばアル君はやってくれるだろう…。

しかし、あの家と関わる事はアルにとって決して良い事ではないのだ。


 先日アテンザ公爵家の瘴気の森の浄化を行った際アル君は理不尽に傷付けられた。

いつもニコニコ笑っているあの子があんなに泣くなんて…。ウィルだけでなくギル君やアレク君も、ただただ涙を流すアル君を初めて見て動揺していた。


次の公爵家の面々に会うならばもっと辛い思いをするかも知れない…。


 私はあの子に傷ついて欲しくないのだ…。

どのようにしてあの子を守っていくか…。



 ある公爵家当主の贖罪


 私は娘を見誤った。多少我儘だが、きちんとした伴侶を得て手綱を握ってもらえば次期当主として立てると思っていた。しかし私が思っていた以上にあの子は傲慢だった。


 小さい頃から上の子は表面を取り繕うのは上手く、内面の幼さが気になっていたが、大人になるにつれ成長するだろうと楽観視していた。

当主としての資質は下の子の方があったが、幼い頃から好きあっていた子との婚約が決まり上の子を教育していくしかなかった。


結果、上の子は罪人として国からの裁きを待つ身になり、下の子はあんなに好きあっていた子と別れ、これからこの公爵家を支え得る男と生きていかねばならぬ事となった。

今後何かあってもこんな事を仕出かした家として簡単に賢者を頼る訳には行かないのだから。


私は何も見えていなかったのだ…。

娘を不幸にし、家の存続を危ぶまれ、それでも生きていければならないのだ…。

娘を犠牲にして…。


 ある日ジル殿が来て、しこたま怒られた。この年になりこの身分となってから、あれ程怒られたのは初めてだ。


ジル殿は私がまだ子供の時、当代随一と名高いストロイエ侯爵家当主の右腕として辣腕を振るっていた方だ。アル君にとっては先代侯爵、お祖父様となる方だ。

あの頃のストロイエ侯爵は武に秀でた歴代の当主の中でも群を抜く程強かった。その為私は先代の公爵である父にストロイエ家へと預けられしばらくの間鍛えて頂いたのだ。

ジル殿は右腕として武でも知でもストロイエ侯爵を支え、先代侯爵の信頼の厚い方だった。私は悪ガキだったのでよくジル殿に捕まり教育的指導を受けていた。その為今でも頭が上がらないのだ。

そのジル殿から、

「私が育て上げたアル様があれしきの事でお怒りになる訳がございません。アル様の懐は大きく温かく、先代侯爵様に負けず劣らず、この私が心から仕えるに足る方です。心配なさらず困った時には声をおかけなさい。無下にする方ではありません。

無駄な事をして更にお嬢様を不幸にしてはなりませんよ。」

 

 私は下の娘の幸せを願っても良いのだろうか…。好き合う男と共にいる事を望んで良いのだろうか。



 あの様に優しく声をかけて下さったジル殿だが、あの時、娘がアル殿を突き飛ばした時のジル殿はすぐさま娘の首を跳ね飛ばす程の形相であったことを忘れてはならない。




 ある兄上大好きっ子の企み


 あいつら何か企んでいるようだ。両親と婚約者の家とあの気持ち悪い奴。あいつらがコソコソと影で話し合いニヤニヤと影で笑い合っている姿が尋常でなく気持ち悪い。思わず手を出す所だった。



 家の掌握は出来たのでそろそろ片付けるかな…。





 ある公爵家の企み


 やっと我が領にも奴が来るようだ。賢者だの何だの偉そうに言われているが所詮はガキだ。

しかも愛されていない、な…。

せいぜい我が公爵家と我が領地の役に立ってもらおうか。

その位しかあいつには使い道がないのだから。



 さぁ、アルよ。さっさと来るがいい。


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