勝手にすれば良い。
残酷な描写があります。
皆、何か起こったのか分からず時が止まる。瞬き一つ、直後皆が絶望の顔で僕を見て悲鳴をあげる。
「アル様!!」
「兄様!!」
「アル君?!」
その中で突如笑い出したマリア嬢。
「死ね!死ね!お前のせいであの方が遠くへ行ってしまった。お前のせいで私はあの方と共にいれなくなった!!お前さえいなければ!」
狂気を孕んだ顔で醜く笑いながら怨嗟を吐き出す。
僕は結界内に戻ろうとするが大型魔獣が僕に気付き尻尾で払われる。
僕の体はぽーんと空に巻き上げられるが、結界を張っているから痛くも痒くもない。
しかし、僕の肩にいたヤモリ君がその勢いで僕の肩から外れて森の中に飛ばされてしまう。
「っ!!ヤモ君!」
手を伸ばすも届かない!ラス君がすぐさま飛んできてヤモリ君にしがみつきながら、
「この仔は任せろ!」
と叫びながら木々の中へ消えていく2人へ、僕は咄嗟に包むよう結界を張る。
ヤモリ君は子どもの聖獣だから瘴気に弱いし、精霊さんも瘴気に長く当たると弱ってしまう。
そんな仔達が僕のせいで瘴気の森へと投げ出されてしまった。
早く!早く迎えに行ってあげなければ!!
頭の芯が静かに冷えていく。
僕は体制を整えて着地するとすぐさま2体の大型魔獣に水の刃を飛ばしスパンッと首を刎ねる。
「邪魔だ!」
次に小型の魔獣が2人を襲わない様に殲滅させるべく何百という圧縮した水球を辺り一面に炸裂させる。
「ギャォォ!!」
水球を避けられなかった魔獣達から黒い血飛沫が上がり辺りを暗くする。
その後、殺り損ねた魔獣にあの仔達が襲われない様に辺り一面を粘度の高い水で覆い魔獣を水没させる。
後は?後あの仔達を危険にさらす奴は殺さなければ…!どいつだ?どいつが敵だ?
マリア嬢と目が合う。
こいつだ…。こいつがあの仔達を危険な目に、あの仔達を殺そうとした奴だ。
僕は恐怖で硬直するマリア嬢の頭を掴み結界から引っ張り出す。
「きゃあ!!やめて!!触らないで!化け物!」
僕は無言でマリア嬢を殺り損ねた魔獣を捕らえた水に水没させる。
粘度の高い水の中でマリア嬢が必死にもがいている。
パンッと頭から水をかけられる。上を見るとクウちゃんが怒っている。
「そんな奴いいから早く助けに行けよ!!」
はっ!そうだ!何しているんだ、僕は!
早く…、早く迎えに行かなきゃ!!
まだ回らない頭で体だけが勝手に動き出す。ヤモリ君とラス君の飛ばされた方へ駆け出す。僕の魔力を頼りに探し出せるはず!僕は魔力を薄く広範囲に伸ばし探知する。
見つけた!!僕の結界が僕の出した水から2人を守っていた。
ヤモリ君とラス君は草むらで目を回して倒れていた。ゲガは無い。ラス君は言葉通りヤモリ君を護ってくれていた。ヤモリ君にしっかり抱きつき2人が倒れている姿を見て、僕は涙が止まらなかった。
ごめんね、ごめん。
僕がここに連れてきたから…、マリア嬢が何か企んでいる事を察してたのに放置したから…、僕がマリア嬢を怒らせたから…、怒りに任せて助けに来るのが遅くなったから…。
泣きながら2人をそっとすくい上げ大事に胸に抱える。
…無事で良かった…。
冷えていた頭に血が戻る。
まずは聖なる山へ帰ろう。そして目を覚ましたら2人に謝ろう。許してくれなかったらもう近づくのは止めよう。2人の傷付いた心が癒えるまで姿を消そう。
袖で涙を拭ってカーへと戻る。
「兄上!ご無事でしたか!」
ギル達が駆け寄ってくる。あんな怖い姿を見せたのにまだ僕を慕ってくれるギルを見てまた涙が出て来る。
「兄上?!」
「アル様、どこかお怪我でも?」
ジルが気遣ってくれるのを、首を振って否定する。
「アル君?どこか痛いの?」
アレク君やウィル君が心配そうに見てくる。
聖獣の仔達もふんふんしながら「大丈夫〜?」と見上げてくる。
あんな酷い事をしたのを見てたのに怖がらずに僕に声をかけてくれるなんて…。
ポロポロと涙が止まらない。
スティーブ様が膝を着き頭を下げる。
「申し訳ございませんでした。我が娘を見誤っておりました。前回の件で長女を次期当主から廃し、このソフィアを次期当主として立てる予定でおりましたが、今回だけは見届けたいと言われ連れてきてしまった私の責任でございます。賢者とその護り育てている仔を、精霊を危険に晒し事、誠に申し訳ございません。この責任はアテンザ公爵家当主である私にございます。如何なる処分でも甘んじて受けます。」
「いえ…、私の見通しが甘かったのです。」
横目で助けられたマリア嬢が目に入る。気を失ったようでぐったりとして地面に転がっている。その身には騎士団長がやったのか縄がかけられていた。
「スティーブ様にもアテンザ公爵家にも思う所はございません。
しかし、マリア嬢だけは2度と私の前に出さないで下さい。」
「この者は公爵家より廃し聖獣と聖者を害した罪で公に裁きを受けさせます。」
ならば良い。勝手に生きて死ねば良い…。




