夜露死苦!
結局、今回のジルブチギレ騒動の黒幕はマリア様だった。
マリア様は騎士団員の1人の男性が好きだったんだって。その人に自分を意識させたくて僕を婚約者にする為にスティーブ様が動いていると嘘をつき、助けて欲しいと泣きついたらしい。スティーブ様にはそんな気はなかったから嘘がバレないように王宮ではアテンザ公爵家の付き人を部屋から追い出した結果、僕と2人でお茶になったらしい。
マリア様が好きな人も騎士道精神?私が護りますモードを発揮し、僕を敵対視してたんだって…。
僕の悪評を吹き込んで燃え上がったらしいよ。
僕は両親から冷遇されせるとか、社交界にも出せない程落ちこぼれているとか、成人と共に家から放逐されるとか、何の取り柄もない存在感もない、無い無い尽くしの有り得ない男だと…。
ほぼ当たっているじゃないか……。その通りだ…。
これが恋の鞘当て?当て馬?っていうの?僕…、それに巻き込まれたの?
僕もジルもギルもロバート様もサンガリア公爵家騎士団長さんもスティーブ様もアテンザ公爵家家令さんも…、皆んな皆んな…、ぐったりしちゃった…。
何じゃそりゃ……。
女性の恋愛に対する行動力は凄いなぁ…。
これが恋愛脳っていうんでしょう?
面倒くさい…。
僕、恋愛出来るかなぁ…。
スティーブ様は平謝りしてくれた。マリア様は暫くは謹慎と称した再教育になるらしいし、騎士団の男性は他の場所に異動となって鍛え直しになった。
元々実力はある男性なので色々見聞を広げて成長出来たらまた戻れるかも知れないと。
まぁ、その時には僕は会う事もないからどっちでもいいけどね。
そして、ジルのお怒りは僕にも向いた。女性と2人きりになるなんて危機感が足りないと。
これがもしも賢者との繋がりを求める者や陥れたい者ならば簡単に術中に嵌っていたぞ…と…。
確かに…。それを考えると今回はあの子をで良かったんだと思う。
僕に興味のない子だったから…。
気を取り直して当初の予定通り、アガールの森について話を進めよう。アガールの森の瘴気はそこまで濃い訳では無い。魔獣も溢れる程ではない為、騎士団が定期的に見回り討伐をすれば管理出来る程度だそうだ。
ロバート様が愕然としていた。
だよね、モートンの森の管理は大変だったもんね。
まずはフィラムの花の種を渡しておこう。
「これはフィラムの花の種です。これは瘴気を吸って育つ花です。今この森には危機が迫っていないからといってそれがずっと続くかは分かりません。ですのでこの花の種をお渡ししておきます。
今植えて育て種を収穫するのも良いですし、未来のアテンザ領の為に保管しておくのも良いです。アテンザ公爵家当主であるスティーブ様にお任せ致します。」
次はカーの設置と別荘の場所についてだ。
「地図をお見せ頂いてもよろしいですか?瘴気は薄いとの事ですので僕のカーはこの深部へと設置しておきますね。別荘の位置はスティーブ様にお任せ致します。」
カーを出して自動運転。設置場所へと移動する。
「はぁ〜…、アル君冗談抜きでアテンザ公爵家へ来ないかい?」
スティーブ様がカーに乗り込みポカンとしながら話すも即座にジルに追撃される。
「スティーブ様、冗談は笑えないと冗談とは言えないんですよ。昔からスティーブ様は笑えない冗談ばかりを言うので先代ストロイエ侯爵からよく指導が入ったじゃないですか?忘れたなら思い出させて差し上げますが?」
笑わないジルが言う。
「は…ははは…、じ、冗談だよ。」
笑ってスティーブ様が言う。
なんだかんだ昔馴染みの2人だ…。
なんだかもやもやする…。僕のジルなのに…。
ダメだよ。ジルを取らないで。
貴方にはたくさんあるじゃない。実の親も子供も愛情も地位も名誉もお金も友人も。
ジルは僕のお父さんなんだから取らないで…。
ギルがそっと手を握ってくれて、もやもやが少し収まるが、心の狭い僕に落ち込む。
ギルがお昼寝に誘ってくれたのでありがたく便乗する。
…お休みぃ…。
目的地に着いたのでジルが起こしてくれる。
さすがに森の深部だと瘴気は濃い。スティーブ様も瘴気の濃さに顔を青褪めた。深部まで来た事がなかったので今更ながら瘴気の森の管理の難しさを痛感したようだ。
いつまでも今の管理しやすい森ではないと危機感を覚えたようだ。
アガールの森は比較的瘴気が薄くアテンザ公爵家にとっては管理しやすいと思われてた為、マリア様の次期当主教育もそこまで厳しい物ではなかったそうだ。
その結果娘はああなったし、深部の瘴気の濃さが発覚してこりゃ不味いぞと。
まあまあ楽にやっていこうぜ、から、ごりごりやっていくから夜露死苦へとシフトチェンジしたようだ。
頑張れマリア嬢!騎士団の人達!




