正義なんだ。
ひとしきりもふもふツルツルして満足した僕は聖なる山の瘴気についてライデンから話を聞く。
本題はこっちだったのに僕のもふもふツルツル欲求が満足するまで待っていてくれた…。
ライデン優しい…。
今いるここは本当に聖なる山の中心でここにはまだ瘴気は発生していないとの事。でもいつまでもここに閉じ籠もっている訳にはいかないし、仔達にはのびのび運動もさせたいから何とかしてもらいたいとライデンから頼まれた。
ガッテン!任せろ!!あの可愛いもふもふツルツルの為ならば何とかしてませようじゃないか!!
…ということで仔達はシロガネとハクエンが見てくれている間に、僕はライデンとその瘴気の発生現場を見て回る事にした。
確かに中心部分から少し外れると空気が少し変わった。あの重苦しい空気に少し似ている。
歩いていると靄が発生している所がある。
瘴気だ。
まだ小さいが放っておくと周りを飲み込んで大きくなっていくだろう。取りあえずそこはまだ小さいのでフィラムの花を植えてみた。
これがどの位効果があるか今後要観察だな。
歩いているとまた瘴気が発生している。ライデンがいた頃にはなかったようで、新しく発生したもののようだ。ここにもフィラムの花を。
あちこち回ってみて、小さな瘴気が多数。大きな瘴気が2カ所あった。
う〜ん…、瘴気に弱い仔達にとっては安心出来る環境ではないなぁ…。
僕の能力を知っているハクエン、この山を知り尽くしているライデン、2人に相談して今後の方針を決定した。
まずは山の中心から仔達の生活圏に結界を張る。これは瘴気だけでなく、この山や聖獣達に害意や悪意を持っている者達を排除する役割もある。
その生活圏の外側に別荘を何個か配置して聖なる山自体に瘴気が湧かないようにする。
そして、僕がたまに別荘へ来て問題ないか確認する。
ついでにもふもふツルツルさせてもらえればありがたい。皆、本当可愛いんだよ。
一旦ストロイエ侯爵別邸の僕の屋敷に帰った後、クレイス様に面会を申し出る。
今回の件を説明し、アミンの森からカーを撤退させる旨を伝える。
「あぁ、もうこの森もスピール公爵家も大丈夫だ。アル君には感謝する。君のお陰で私達は崩壊せず持ち直す事が出来たんだ。それに、次期当主のアレクの事もお礼を言わせておくれ。
あの子は妻が出ていってから笑う事を忘れてしまった。感情を抑え、いつでも冷静に振る舞うようになってしまった。それに気が付いていたのに私は騎士団の立て直しに奔走してあの子を1人にさせてしまっていた。
でも、君と…、君達といるようになってから昔のあの子に戻って、よく笑いよく怒りよく遊ぶようになった。年相応のあの子を見るのは何年ぶりだったのだろう。
本当にありがとう。今後君が何か困った事があった時にはサンガリア公爵家だけでなく、我がスピール公爵家も君の後ろ盾となり君とストロイエ侯爵家を守ると誓おう。」
過分なお言葉を貰ってしまった。でも違うよ。
アレク君は最初から感情があったよ。アレク君はクレイス様を見て心配かけたくなかっただけだよ。
そんな立派なアレク君はクレイス様の背中を見て育ったんだよ。
「ありがとうございます。アレク君は笑わなくなったのではありませんよ。
アレク君はお父上であるクレイス様の冷静さを見て真似ていただけですよ。クレイス様が大好きなのですよ。」
これからも僕はアレク君とも遊びたいしギルの為にも良い関係を続けていきたいと思っている。
「どうか、これから色々経験するであろうギルバートをよろしくお願いいたします。」
僕は頭を下げてギルを頼んだ。
これで王国の瘴気の森は5箇所中3箇所は目処がたった。
聖なるの森と並行してもう1箇所浄化していきたいなぁ…。
今日は聖なる山へ結界を張る予定だ。
転移して聖獣さん達の元へ。
「あっ!アル兄ちゃん!いらっしゃい。また美味しいの持ってる?」
仔達にわぁ〜と囲まれる。熊の仔にのしかかられて僕は後ろに倒れる。そこへ鹿の仔に顔をふんふんされて、兎の仔に胸に乗られ、猫の仔にお腹をふみふみされて、トカゲとヤモリの仔におでこに乗られて顔を覗き込まれ蛇の仔に頬をツンツンされて…。
僕…、もう…、幸せ…。
僕の手から転げ落ちた飴を追いかけて皆いっせいにいなくなったけど…。
いいんだ。
美味しい物は正義だ。可愛い子も正義なんだ。




