パラダイス
…僕…太った…。シロガネも…太った…。
実は薄々気が付いていたんだ…。ズボンがきつくなったなぁ…とか最近お顔に出来物が出来るなぁとか…、討伐していて体が重いなぁとか…。
ジルも僕が太っていく事を気にしてたみたいだけど初めてのお友達とのパーティーだからって好きにさせてくれたんだって…。
ありがとう…、ジル…。
痩せなきゃ…。暫くは黒い板の料理は封印して、ご褒美の時だけポチるか…。
美味しい物は脂肪と糖で出来ているって女性冒険者が言ってたもんね…。残念…。あんなに美味しい物があるのに食べられないなんて…。本当に残念…。
…あれ?でもジルが食べてたようなあっさりした料理なら大丈夫じゃないかなぁ?
今までこってり系が多かったから僕太ったんじゃない?あっさり系なら太らないんじゃない?
…駄目だそうです…。ジルから指導が入りました。暫くはポチり禁止だそうです。ソウデスカ…。
やめて、ジル!大丈夫、分かったから!もうこっそり食べようとしないから毎日の体重チェックは許して…!
僕の食への欲望が信用出来なくてジルが徹底管理を言い出した。それは辛いので僕、ポチりを封印する事にした。週に一度だけ…、一度だけ許可が出た。
良かったぁ〜!今度は何食べようかなぁ〜!
傷心の僕だったが、ハクエンが帰ってきたので僕達は聖なる山へと行ってみる事にした。
ハクエン、シロガネ、ジル、精霊さん達と僕で出発〜!!
って転移で一瞬だけどね。
そこは緑の多い自然豊かな山だった。精霊さん達がそこかしこで戯れていて、ラス君達も気持ち良さそうに遊びに交じっている。
ふと、奥の方に気配がある事に気が付いた。のそりと大きな影が動いたかと思ったらライデンだった。
その後ろに小さい影がたくさん見える。
「ようこそ聖なる山へ、アル。賢者である君ならば歓迎しよう。しかし転移とは本当に一瞬なのだな。
ハクエンが行ったかと思ったらすぐに戻って来たから驚いたぞ。
紹介しよう。ここにいる仔達が我が護っている聖獣の幼子たちだ。」
ライデンの後ろには小さな仔達が…。
はわぁぁぁ〜!可愛い!!
そこには小さな熊や鹿、狼や鳥や兎、猫の他にトカゲに蛇やヤモリまでいた。皆聖獣の赤ちゃんだ。
総勢十数匹をライデンは護っていたのだ。
逆にいえばライデンがいなくなり、この仔達はさぞ不安だった事だろう。
皆ライデンにピタリと寄り添うようにくっついている。
はぁ、可愛い…。
ライデンが僕を聖獣の仔達に紹介してくれた。初めて見る人間だからか、皆興味津々だが遠巻きにされている。
いいよいいよ。警戒心を持つ事は良い事だからね。
でも慣れたら仲良くしようね。
反対にシロガネは一瞬で仲良くなった。
羨ましい…。
「大丈夫だよ。こいつはアルっていって美味しい物をくれる人間だぞ!痛い事や嫌な事はしないから安心していいぞ。」
よしよし、シロガネもう少し僕を褒めてくれ。
聖獣の仔達が少し近づいてきてくれた。
もうちょい!シロガネ、ハクエン、僕を褒めて!
「ねぇねぇ、アル。あの甘いやつが頂戴。美味しいからこの仔達にも食べさせてあげたい!」
シロガネは良い仕事をしてくれる。
「いいよ。甘いのってこの飴の事?」
疲労回復の飴をマジックポーチから取り出す。
ポチッたやつはまだ幼い仔達には不安なので出さなかった。
掌にのせて、はい、どうぞをする。
また3歩位僕との距離が近付く。あと少し…!
腕を伸ばすと小さな熊の聖獣君が近づいてきて僕の手をふんふん臭いを嗅き始めた。それを皮切りに他の仔達もふんふんし始める。
はあ〜…、可愛い仔達だなぁ。癒される〜。
熊の聖獣君がパクリと飴玉を口に入れる。
「っ!甘〜い!!美味しい!」
よし!!好感触!もう1つ飴玉を手にのせると今度は鹿の聖獣君がパクリ。
「本当だ…。美味しい!」
僕も私も…と大人気。僕の飴が…。
望まれるまま飴をあげていたらいつの間にか僕は聖獣パラダイスだった。キラキラお目々のもふもふに囲まれお膝にも乗られ頭や肩にはツルツルむっちりボディの円らな瞳が可愛いトカゲさん達が乗っていた…。
はぁ〜…、癒される〜…。
ここはパラダイスかなぁ…?




