禁断の扉を開けてしまった…。
スピール公爵家のアミンの森の危機は過ぎたのではないかと思う。
これで何かあるようなら別荘を更に建てて浄化を進めるまで。モートンの森同様、後は時間をかけて少しずつ浄化していければ良いと思う。
そして次に手掛けたいのが聖獣さん達の居る聖なる山だ。まだ小さい仔達が不安を感じてるかもなんて考えたら居ても立っても居られない…。
「ライデン、体力は戻った?」
初日ライデンは草のお陰でまったりしてたけど最近は回復してきたのかハクエンも放置しているようだ。
「あぁ、だいぶ回復してきた。そろそろ山へ帰ろうかと思っていた。
そこで今代の賢者よ、力を貸しては貰えないだろうか。我が山も浄化してもらいたいのだ。」
「勿論だよ。むしろこちらからその話をしようと思ってたんだ。」
次は聖なる山の浄化だ。
ライデンに転移陣を刻んだ装飾品をつけて貰い、先に聖なる山へ帰って貰う。その後僕が転移すれば効率良く聖なる山へ辿りつけるのだと思う。
聖なる山は遠く、ライデンの足でも1週間はかかるそうだ。
その間いくつもの瘴気の森を通らねばならないらしい。
「と言う事で我も一緒に行く事にしたぞ。ライデン1人では遅れを取るかも知れんからな。」
ハクエンが言う。
ビックリ…。今まで長い時間シロガネから離れることなんてなかったから、シロガネもショックを受けるている。
「な…、何で?何で母様も行っちゃうの?危ないんでしょう?ここにいてよぉ…。僕と一緒にいてよぉ…。」
シロガネかハクエンの足元に纏わり付きながら引き止めるが、
「シロガネよ、そなたは強くなり母の元を離れても良い時期になってきた。そなたより小さく幼く弱い仔達を守ってやらねばならぬのだ。」
「母様は僕よりその仔達が大切なの?僕より?」
「シロガネ、よく聞きなさい。そなたは強くなった。だからこそ、そなたもそなたより弱い仔を守ってやって欲しいのだ。
何、それでもわしはそなたの母だ。必ず戻って来る故、少しの間アルと待っておれ。必ずシロガネ、そなたの元へ帰ろうぞ。可愛い我が子よ。」
シロガネはキュンキュン泣きながらもハクエンと離れる事を納得したようだ。
「シロガネ。ハクエンが戻るまで僕と一緒に居よう。一緒に寝て一緒にご飯食べて一緒に魔獣討伐にも行こう。きっとすぐだよ。すぐにハクエンはシロガネの所に帰ってくるよ。
そしたら一緒に聖なる山に行こう。きっとシロガネの仲間達がたくさんいるよ。」
翌朝早くにハクエンはライデンと共にホーエンの森を発った。
シロガネはハクエンがいなくなった方向をずっと見ている。しばらく動かなかったけど日が高くなってきた頃こちらを向いて、
「…アル…、僕と一緒にいてくれる?母様がいないのがこんなに不安だなんて思わなかった…。」
「勿論だよ。寂しくないようにずっと一緒に居よう。さぁ今日は何をしようか?」
「…魔獣討伐…。」
小さい声で下を向きながら言う。
僕はシロガネをわしゃわしゃと撫でながらシロガネの寂しさが和らぎますように…、ハクエンが無事にシロガネの元に帰ってきますように…、と祈った。
アミンの森に置いていたカーへ転移する。1週間後にはカーはアミンの森から聖なる山へと移動させるつもりだ。それまではアミンの森で少しでも魔獣討伐して被害を減らしておきたい。カーを自動運転に設定して瘴気の濃さそうな所へ移動させる。
「さぁ、ここが今日の狩場だよ、シロガネ。
思う存分やろうじゃないか!ただし、怪我は絶対しない事。ハクエンが帰ってきた時シロガネが怪我してたらビックリしちゃうからね!」
僕とシロガネと精霊さん達は今日も魔獣を狩って狩って狩りまくっている。狩り尽くすとモル君達にお願いして穢れを払ってもらいフィラムの花を植えてから移動する。
そこでも狩って狩って狩りまくる。
いやぁ…、凄いよ…。ギルドに持っていったら嫌な顔されるだろうと予想出来るくらいには回収袋に入っている。
これ…、どうしようかなぁ…。いきなり大量に持っていくと値崩れをおこすって前に注意されてたからなぁ…。
黒い板を見ているとおや?面白いのがあった。カーが買い取りしてくれる機能みたい。回収ボックスをポチッと。カーの後ろにボックスを設置。その中に討伐した魔獣を入れてみる。
おぉ…!カーの内包魔力と金額が上がった。やったぁ!これでやりたい放題だぞ!!
僕は嬉しさのあまりシロガネと精霊さん達と輪になって踊った。
テンション高いまま、僕はもう1つ試してみる事にした。黒い板にある食べ物を試してみるのだ。今まで得体の知れない物に手が伸びなかったけど今日はやってみることにした。
黒い板を見てシロガネと相談。シロガネの希望で“ラーメン”とやらをポチッと。
テーブルの上に深いお皿なみなみに汁の入った温かそうな食べ物が出現した。
……食べてみよう…。良い匂いがするし、食べれない物ではないないだろう…。
いざ、実食…。
……うんまぁぁぁ〜!!何これ!!おいしい!!
シロガネが僕の顔を見て察したのだろう。キラキラした目を僕に向ける。
待って待って!!今分けるからね!!
小皿にシロガネの分を取り分ける。
「熱いから気をつけてね!」
精霊さん達にもお裾分け。
…精霊さん達には刺さらなかったようだ…。残念。
でもシロガネにはドンピシャ、刺さったようでおかわりを要求された。
よし来た!待ってて!今ポチるからね!!
僕は禁断の扉を開けてしまった…。




