やっとお披露目。
魔法を教えたり、湖で釣りをしたりと皆で遊んでいるとシロガネが湖から伸びてきた蔓みたいなのに絡まれてる。
「やだ!臭い〜!!アル〜!助けて〜!」
皆でシロガネの所に駆け寄ると湖に住む魔獣の足みたいだ。こうして湖の近くに来た獲物を絡め取って湖に引き込んで食べるそうだ。
確かに臭い…。生臭い?腐敗?触りたくないがこのままだとシロガネが湖に引き釣り込まれてしまう。
風魔法でスパッと切断する。途端に臭いが強くなる。
「アル〜!鼻が!鼻がぁぁ!!」
シロガネが鼻を押さえて地面に伏せる。シロガネの鼻は僕より敏感だから余計に辛いだろう…。
「待ってて、シロガネ!」
焼けば良い臭いになるかも…と思って火魔法で炙ってみる。
「うわぁぁぁん!アル!酷いよ!更に臭くなった!鼻がぁぁ!」
…凄く臭くなった…。ごめん…、シロガネ…。
皆が遠巻きに見ている。
そうだよね…、近づきたくないよね…。
ギルが意を決して近づいて来てくれる。
足を切断されて怒った魔獣?魔魚?が他の足を使って僕達を引きずり込もうとするのをスパッスパッと切り落とし、本体にもトドメを刺してくれる。
気が付くと僕達は生臭さと湖のヘドロを被り、かなり香ばしい薫りを纏っていた。
皆呆然としちゃう。だよね…。生きていてこんな臭くなったことなんてなかったもんね…。
僕達、貴族なもんで…。
ジルが、
「さぁ、皆様方。入浴の準備が出来ております。
こちらへ。」
と、カーの浴室に案内してくれた。そうだった!
僕はカーにおフロを作っていたじゃないか!!
早速皆でおフロ場へ行く。アレク君は初めてだよね。
カーのおフロは僕のこだわりを詰め込んだ逸品になっている…はず…。たぶん…。僕的には…。
大きな湯船に洗い場は広くいい香りのする石鹸やしっとりする入浴剤等、その時の気分で選べるように何種類か置いてある。
外が見えるように大きな窓もつけた。
今は魔獣がのっしのっし歩いていて気が休まらない感じになっちゃってるけど…。
でも今はそれすら楽しい。皆で今のは何の魔獣だとか、弱点は何処かとか、わいわい言いながらのおフロは楽しかった。
おフロから上がってフワフワのタオルで体を拭く。このタオルも僕のこだわりだ。
あぁ〜、嬉しい!皆をビックリさせようと思って用意してたのになかなか披露する機会が無かったから、やっと僕のこだわりをお披露目出来た。
おフロから上がるとジルがレモーネを浮かべたお水を用意してくれていた。
はぁ〜…、美味しい!生き返るぅ!
クレイス様が苦笑いしながら僕達を見ていた。
「クレイス様。お先にお湯を使わせて頂きまして、申し訳ございません。
宜しければクレイス様もいかがですか?」
しまった!!忘れてた!クレイス様より先に入っちゃった…!
クレイス様はちょっと迷う仕草を見せながらも、
「とても魅力的なお誘いだけど今回は辞退しようかな。ありがとう。」
残念。クレイス様には味わって貰えなかった。
でも良いのです。今回、アレク君に入ってもらえたからね。
僕は上機嫌で水分補給後、ジルが用意してくれたお昼を食べたのでした。
子供組は疲れたのでちょっとひと休み。広いベッドで皆で寝る。
あぁ…楽しい。オヤスミ〜。
目が覚めるとスピール公爵家の家令さんによる別荘作りは終わっていた。
満足気にお礼を言われたよ。
「この度は自由に作らせて頂きまして誠にありがとうございます。お陰様で我が主が寛ぐに相応しい別荘が出来上がりました。」
「いえいえ。お疲れ様でした。私こそ家令さんに全てお任せしてしまい申し訳ありません。
今後何か不備がありましたらお知らせ下さい。」
アフターサービスもばっちりのアル商会にお任せ下さい!!
じき、アレク君も使う事になるのだからしっかりやらせてもらいますよ〜!




