疲れたぁ〜…。
人数は揃っている。ミナちゃんも後方に預けた。
いける!!…はず……。
「作戦を立てます!僕とダンさん、カイさん、サイさんは前衛で、直接攻撃を!ギル達は後方から魔法で攻撃して!他の魔法を使える方は僕達に護りを施して下さい。もしくは穢れを祓える方がいればその方向性で!精霊さん達、殺さない方向で弱らせて!!」
ギル、ウィル君、アレク君が風魔法で刃を飛ばすが身を震わせて弾き飛ばし、身に当たらない。
「手足を狙って!」
僕は指示を出す。
ダンさん、サイさんが長剣を構える。カイさんはヘイトを稼ぐ為盾を構える。僕も双剣を構え腰を落とす。
いざ!!
双剣に青い炎を纏わせ斬りかかる。足を使い左右に揺さぶり手数を増やす。穢れを切り裂き肉を断つ。血が噴き出し、周辺を腐らせる。それを避けながら攻撃を続ける。その間にダンさんサイさんが反対側に回り込み斬りかかる。カイさんが正面から盾で牙を止める。
が、カイさんの盾が腐り落ちていく。
「チッ!!どんだけだよ!俺の自慢の盾が腐っちまった!!」
シンさんの飛び道具も身に刺さる前に腐り落ちる。
う〜ん…、直接攻撃が一番かなぁ…?
ギル達が直接攻撃に参加する前に終わらせたい。
左右の剣に魔力を乗せて飛ばす。
「あっ!しまった!首を狙っちゃった!!」
いつものスパッの癖で…。危ない危ない…。
精霊さん達がこの森に住む精霊さん達を連れてきてくれた。地面が盛り上がり穢れた聖獣の手足を絡め取り地面に縫い付け動けなくさせる。ありがたい!
「クウちゃん!水の精霊さん達!雨を降らせて!」
穢れた聖獣に雨が降り注ぐ。
僕は浄化の歌を歌う。ギル達も共に歌う。
聖獣から黒い煙が立ち上がり、苦しそうな咆哮があがる。穢れが浄化されてるんだ!
歌いながら攻撃を続ける。
ダンさん、サイさんへ血が降りかかり装備が崩れていく。
前衛の2人に結界を施す。
「結界を施しましたので気にせず攻撃を続けて下さい。」
浄化の歌で穢れを祓いながら前衛が攻撃を続け、後衛が魔法を飛ばし少しずつ弱らせる。
「グォォォォ!」
ハクエンの口から炎が吹き出され穢れを焼き払うと
聖獣は地に伏し荒い息をする。
前衛の3人には下がってもらい、精霊さん達とギル達に前に来てもらう。
再び雨を降らせて浄化の歌を歌う。
もっと…、もっと強い力を…。早く穢れを祓い本来の聖獣さんに戻してあげたい。
神に祈るように歌を歌う。
キラキラと聖獣さんに降り注ぐ雨が輝く。
黒い煙が白くなり、聖獣さんの息が整ってくる。
「…迷惑をかけたな。もう大丈夫だ…。」
力なく聖獣さんから声がかかる。
う〜ん…、大丈夫じゃなさそうだ…。
取りあえず上級ポーションを聖獣さんに飲んでもらおう。
「いや、大丈夫だ。これ以上迷惑はかけられない」
「いや、早く飲め。そしてさっさと回復しろ。」
ハクエンから圧がかかる。
遠慮していた聖獣さんだが、やはり辛いのだろう。
大人しくポーションを飲み始めた。
僕はギル達と共に聖獣さんの体に負った傷にポーションを振りかけていく。
やっと一息ついた。疲れた…。
僕はいつもの様にテーブルとイスを出し、皆で休憩する事にした。するとハクエンが、
「ちょっと待て。」
と言い飛び立つ。
皆ヘトヘトだったので言葉少なくマカロンを口に運び、紅茶で喉を潤す。
一時恐慌状態だったミナちゃんも落ち着いたのか美味しそうに食べている。
「はぁ〜…、疲れたけどこんな美味しいお菓子が食べれるなら役得だわ。」
女性陣からは上々の評判だ。
「お貴族様…、いや、アル君は強いのだな…。正直驚いている。戦いながら結界を他人にまで張り続けられるとは…。さすがソロでやっている事だけはあるな。しかし、あの歌は一体何なんだ?
それに聖獣やら、精霊やら…、ああいった物は物語の話だとばかり思っていたから…、あぁ…、まだ頭が混乱している…。」
そうだよね。最初は誰でも驚くよね。
でも、僕強いって!褒められたよ〜!
えへ。ギル達と目を合わせてもう一度、えへ。
その後も、男性陣は渋い顔してマカロンを食べている。甘いの好きじゃなかったのかな?
サンドウィッチもあるよ?
少しするとハクエンが何かを咥えて戻って来た。
シロガネだ。
「もうっ!もう!なんで僕を置いていくんだよ!
ひどいよ!僕だって一緒に戦いたかったのに!」
仲間ハズレにされたシロガネが毛を逆立てて地面をタシタシと叩き怒っている。
きっとハクエンはまだ子供のシロガネに穢れを近づけたくなかったのだ。
僕もシロガネを、危険な目に合わせたくなかったから、ハクエンの元に行かせたのだ。
ハクエンの気持ちはよく分かる…。
「シロガネ、ハクエンはシロガネが大切なんだよ。今回は強い穢れを纏ってたんだ。永く生きた聖獣ですら穢れ堕ち正気を失ったんだ。シロガネはまだ子供で穢れに弱いだろう?まだ穢れに近づけたくなかったんだよ。
僕も穢れ堕ちたシロガネを攻撃なんかしたくないよ。ハクエンの判断は正しかったんだよ。」
ガウガウ怒っているシロガネを慰める。
近い内に魔獣討伐に連れて行ってあげよう…。
漆黒の風達は慣れたがクラシコの絆達は初めてアルのお茶会を経験したので戦いとの落差に戸惑って、挙動不審になってます。




