楽しい町歩き?
皆でポプリを選んだ後はカフェでひと休み。
ケーキが美味しいと噂のお店だ。貴族の雰囲気を察したのか個室に通され、皆席に着く。楽しいけどちょっと疲れたねぇ…。ひと休みひと休み。
作ったポプリを皆で贈り合う。その際、皆の気持を魔法陣でポプリに刻む事を提案する。付与したい陣を考えてもらったら僕が陣を描くからそれを各自紙に書き写して魔力を込めて焼き付ける。
皆ワクワクしながら真剣に考えている。可愛いなぁ。
僕はギルに幸運を願う陣を、ギルはウィル君に健康を願う陣を、ウィル君はアレク君に幸運と武運を願う陣を、アレク君は僕に幸運をクレイス様には幸運と健康を願う陣を付与した。
皆初めて陣を描くのでヨレヨレだったり途切れて陣が付与出来なくて描き直したりして大変だったけど、それも良い思い出になるだろう。
このお店はケーキの他、クッキーやマカロンも美味しいらしい。
精霊さん達も喜んで食べてくれたよ。疲れた後は甘いものが美味しい。うまうまと皆で食べて、そろそろ帰ろうかと店を出る。
帰り道、転移陣へ向かう為大通りに出ると遠くから叫び声が聞こえる。向こうで馬が暴れているらしく、こちらに向かって民衆が走ってくる。それぞれに付いている護衛騎士がこちらに向かうも人に阻まれこちらに近づけないようだ。
僕は咄嗟にアレク君と手をつなぐ。ギルとウィル君は…、と顔を向けるも姿が見えない。
人混みに押されながらアレク君と共に普段は入らないような路地に流される。決して手を離さないように強く手を握る。
どうしよう…、ギル達と逸れてしまった…。
迷子になってないか、変な奴らに絡まれてないか、心配で気が焦る。
アレク君と繋いでいた手が引っ張られる。
「ん?どうしたの?」
アレク君が見ている方を見るとガラの悪そうな男達がこちらを見ている。その後ろには小さい子供達が捕まっている。
誘拐犯だ!!
暴れ馬がコイツらの仕業なのか、たまたま誘拐している所に出くわしたのかは分からないが今、僕達をターゲットとしたようでこちらに向かってくる。
「おう、坊っちゃん方。良い所に出会ったなぁ。お前達もコイツらの仲間になろうか。抵抗しない方が良いぜ。」
小さい女の子の首にナイフを近づけて、
「お前達が逃げたらコイツを殺す。お前らのせいでコイツが死ぬかもしれない。人殺しになりたくなければ大人しくこっちに来い。」
あぁ…、今日はよく絡まれる日だなぁ…。
チラリとアレク君を見ると平然としている。むしろ少しワクワクしているように目が輝いている…。
「ア…アレク君…?」
アレク君は楽しそうに僕を見上げる。
「大変な事になりましたね。」
…ワクワクしてる…。怖がっていないようだ。
「アレク君、君はきっとは大物になるよ…。」
僕達は大人しく捕まって黒幕となる奴の所へと連行される事にした。
大元を潰さないとまた誰かが犠牲になるからねぇ。
取りあえず、ラス君にはギル達との連絡係になってもらうことにした。
ラス君はすぐにギル達を見つけてくれて僕達の状況を伝えてもらった。ギル達とシロガネは既に護衛騎士と合流出来たようだ。
良かったぁ〜…。ホッとしたよぉ〜…。
そのままラス君には連絡係兼、護衛をしてもらって、僕達にはメルちゃん達に護衛として残ってもらう事にした。
黒幕の所に連れて行かれたら町の警邏か、騎士団を連れて僕らの所へ向かってもらう手筈を取ってもらう。
狭くて汚い馬車に子供達が入られ、ガタガタと振動する。移動を始めたようだ。
皆大丈夫かな?皆を見ると声を出さず泣いている。
殴られた痕がある子もいるので僕達が来る前に暴力を振るわれ抵抗する気力を奪われてしまったのだろう。
「皆、大丈夫かい?痛い所がある子や具合が悪い子はいるかい?」
声を抑えて皆に聞くと、1人の子を指さす。
どうやら皆を庇って奴らに殴られたようで、頬が赤く腫れ口の脇が切れて血が出ている。上手く動けないので体もケガしているのだろう。
こっそりその子に近づき手を握ると熱い。熱が出てきているようだ。
収納袋からポーションを取り出し、その子に飲ませる。朦朧としていた目が次第に力を取り戻すのを見てから水を飲ませる。
皆の話を聞くと、僕とアレク君以外はスラムの子だった。いきなりスラムに男達が来て奴隷として売る為に子供達を捕まえ始めたと。
スラムの子の奴隷狩りは今までにも何回もあったようで、町の警邏に訴えてもスラムの子供だからと放置されていたそうだ。
なんてこと…。子供達がそんな目に遭っているのに警邏が動かないなんて…!
犯人は裏で警邏と繋がっているのかも知れない…。
今回の件は警邏ではなく、もっと上の方々に動いて貰ったほうが良いのかも知れないなぁ…。
取りあえず皆にお水と体力回復の飴を舐めてもらって機会を待とう。
どいつが僕達の楽しいお出かけを邪魔した奴だ。
絶対に痛い目を見せてやるからな!!




