楽しい街歩き。
ガラッと扉をあける。
「おじちゃ〜ん!こんにちは!友達連れてきたよ!ちょっと見せてね!!」
ここはダンさんに教えてもらった防具屋だ。お高め設定だけど質の良い防具や剣などが置かれている。
やっぱり男の子。皆の目が輝いている。
「おぅ!アルか!ちょうど良い時に来たな。面白いのが入ってきたぞ!
アルの友達もよく来てくれた。見ていってくれ。
うちは中々の品揃えだぞ。」
店の奥から厳ついおじさんがガハハと笑いながら出て来る。この店の店主のゼルさんだ。
若い頃冒険者をやっていたらしく、引退後はゼルさんのお眼鏡にかなった品を置いている。それがまた面白い物が多いのだ。もちろん剣や盾、槍や弓等は勿論、外套や靴や鞄のような物まで揃っている。
「最近出回っている話題のマジックポーチだ。
どこぞの没落お貴族様のコレクションだって噂や、天才魔導具師が現れたとか色々話題になるが真相はさっぱりだ…。でも、こちらとしてはありがたい。中々お目にかかれない一品だ。見るだけ見とけ。」
ゼルさんが見せてくれたのは黒いカバンだった。
…あれ?僕が作ったやつかもしれない…。
僕が漆黒の風としか行動を共にしないのは僕に秘密が多いからだ。回収袋を持ってる事も、魔法陣魔法の事も精霊の事も聖獣の事も…。
ならばせめて回収袋を秘密にしなくて済むようにと、ジルと相談して出回らせる事にしたんだ。
いやぁ、大変だった。
商人ギルドへ商談する時には子供1人で行くと正当な契約が提示されないかも知れないので、ジルに付いてきてもらってお忍び貴族風味で交渉し、売り出したのだ。
……いやいや…、商人ギルドのギルマスさんの目がギラッギラで怖かったよ…。僕は影に隠れてたけどジルもギラッギラにした目で商談してた。
売買の契約って駆け引きが凄かったよ…。
ありがとう、ジル。ちょっとびひってごめんね。
そんな感じで最近ちょこちょこと収納袋改め、マジックポーチが売り出されているのだ。勿論まだまだお高いので一部の貴族や商人、高ランク冒険者等の裕福層が中心だ。
お陰で堂々とマジックポーチを持ってても大丈夫だし、何より僕の懐は温かいを通り越して熱々だ。もう今後何もしなくても生活出来る位には良い収益を上げている。
しかし僕は弟達にはいつでも頼れるお兄ちゃんでいたいのでまだまだ稼ぐ予定だ。
売って売って売りまくって皆も僕もホクホクだ。
win-winってやつだね。
マジックポーチを見て皆何かを感じたのか僕を見る。
えへ。
その後皆で色々見て回るとギルとウィル君が剣をずっと見ている。
「何か気になるのがあった?」
お兄ちゃんが何でも買ってあげるよ!
2人はおずおずと、
「あれが…。」
と、それぞれ指を指す。
「気になるなら試し斬りしてみようか?」
ゼルさんに裏庭に連れてきてもらう。ここで剣の試し斬りが出来るのだ。
一見良さそうに見えても、柄の太さや重心等細かい所でしっくりこないのが多いのだ。
特に2人はまだ成長途中で変な癖がついたりすると今後が大変だからね。しっかり見極めなければね!
それぞれ剣を振ってみるも体がブレる。剣が重いのかな?2人もそれを感じるのか悔しそうに何度も試している。
「う〜ん…、坊っちゃん達にはまだこいつは早そうだな。今回は止めときな。今のまだ体が出来上がっていない状態で無理に使ってるとバランスの悪い筋肉がついちまうぞ。将来的に変な癖がついて体を痛めるかもしれん。体が出来上がったらまた来い。その後は俺がお前達に合う武器を見繕ってやるよ!」
2人は残念そうに頷く。
「また来よう。2人にとっては残念だけど僕は次の約束が出来て嬉しいよ。」
その後は店内をわちゃわちゃしながら見て回って楽しかった。色んな便利グッズがあるんだねぇ。
いつか、皆が遠征したりする時には僕が作った便利グッズをプレゼントしたいなぁ。
僕がこだわり抜いたやつをね。
ゼルさんのお店を後にして次はアレク君の為に雑貨屋さんに向かう。
「ここはこの町でも人気の雑貨屋さんだよ。さあ、アレク君中を見て回ろう。」
アレク君はクレイス様に何かあげたいそうだ。
「父はいつも忙しそうにしていらっしゃるし、僕はまだお手伝いを出来ないので何か少しでも体と心が休めるような物を贈りたいんです。」
なにそれ!なんて可愛いの!!偉いよ、アレク君!
僕は震える…。
僕なんてさっきまで僕の生物学的な父と呼ばれるあいつにざまあ、とか思ってたのに…。
でもクレイス様は尊敬出来る方だから当然だね。
あいつとは違うからね…!
見て回っているとアレク君がポプリを見つけた。好きな花を入れてオリジナルのポプリが作れるようだ。
「これにしようと思います。少しでも心安らかにいてもらいたいので…。」
や…優しき子だ…。僕の心が洗われるようだ。
結局皆で今日の記念にポプリを作り送り合う事になった。僕がギルに、ギルはウィル君に、ウィル君はアレク君に、アレク君はクレイス様と僕に。
アレク君は2個作らなきゃだから大変だけど頑張ってくれるそうだ。やったね。
ギルの雰囲気に合う香りを吟味する。また、ギルへの想いも込めてポプリを作る。この先、ギルの行く先が幸多い物でありますように…。




