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なんてこった…。

注意!虫が出てきます。苦手な人はごめんなさい。


 早くカーを動かしたい。もっと浄化の範囲を広げてクレイス様やアレク君の生活圏を安心出来る状態にしたい。


そう思い、まだかまだかと気が急いてしまう。

実際森の手前に置かれたカーの周りの瘴気は薄くなったけど、まだ完全ではない。

動かすのはまだ早い。


もっと何かないか…。もっと広範囲で浄化出来る方法が…。僕を見て笑ってくれる3人目の弟(のように思っている)の為にも。




 試してみたい事が出来たのでカーを移動させる事にした。クレイス様に報告すると森に入ってみたいとの事でカーを移動させる時に同行を希望された。

サンガリア公爵家の移動の時も森の植生や魔獣の分布図を記録してたのでクレイス様、家令さん、騎士団長さん、アレク君で一緒に行く事になった。


 出発の朝、モル君、テル君、ルルちゃんにラス君、メルちゃんにある事を頼んだ。話を聞いた水の精霊さんのクウちゃんが急遽参加してくれる事になった。


さて…上手くいくかなぁ…。



 移動中、前方の窓からクレイス様、団長さんが離れない。

やっぱりね。そうなると思った…。

色々観察出来るように心持ちゆっくり移動させている。アレク君もさっきまで前にいたんだけど危ないから座ってもらった。

今はジルの淹れてくれたお茶とお菓子を僕と飲みながら横の窓から外を見ている。精霊さん達もうまうまと食べている。

たくさん食べて、僕に力を貸してね。


外を見ているアレク君の顔が青褪めている。えげつない魔獣がえげつない数、跋扈してるもんね…。

森から魔獣が溢れる寸前だったんだもんね…。


…何あれ…、物凄いでっかい蜘蛛が糸でぐるぐる巻にされた何かを運んでる…。ご…ご飯かなぁ…。

恐っ……!


 目的としていた所へ着いた。

カーを降りると暗い。薄暗いどころじゃない。

皆には危ないので念の為カーの中にいてもらう様にお願いした。



 さて…、僕は結界の中から目の前の地面を耕す。

普段なら耕す側に精霊さんがいて覗き込んだり、土を被って遊んだりするんだけど、ここには精霊さんの姿はない。耕した土の中から穢れを纏った異形の虫達がうじゃうじゃと掘り起こされる。

「……。」

泣くな…、僕…。この震えは武者震いだ!

決して怖いからじゃない!

たとえ僕の腕にトリハダが立っていようとも、多少気持ち悪くても……。


うそ……。多少じゃない。

すごい気持ち悪い…。

普段のミミーズなんかは大丈夫。だって土を良くしてくれる可愛いやつだ…。

でも…、これは…。ミミーズを大きくしてガッチガチの牙のついた口がある…。何より凶暴…。それがうじゃうじゃ……。絡み合っている…。


 もう、帰りたくなってきた。心折れちゃった…。

チラッと後ろを見る。

アレク君が心配そうな顔でこちらを見てる…。

ジルは期待した顔で見てる…。

クレイス様は興味深そうに見てる…。


今更帰るとは言えない雰囲気……。

あぁ…、期待が重い…。


仕方ない…、やるか……。



耕した大地に雨を降らす。クウちゃんよろしくね。

そこに清めの歌を歌い、その後収穫への祈りを込めた歌を歌う。

精霊さんの出した雨に神への祈りを込めて歌ったからか、異形の虫達の姿がサラサラと崩れていく。


恐っ!! 

クウちゃんの出してくれた雨の効果に震える…。


内心恐れ慄いている僕を悟られない様に当たり前の顔をする僕。ちょっと見栄をはってます…。

ほら…、アレク君の手前ね…。格好良くしたいじゃない…。


虫達がいなくなったら、とある種を植えていく。

そこへ豊穣の歌を歌う。

モル君、テル君、ルルちゃんの出番。

僕の魔力を存分に使って種を芽吹かせる。芽が出て茎が伸びて蕾になり、花が咲いた。


もう…、もう…ヤメテ…。僕の魔力もう無くなっちゃう…。もう無理ぃ……。


意識が遠くなり冷や汗が出てくる。

「アル様!!精霊様方!もうお止め下さい!お願いします!」

ジルが僕を抱きしめている。声が遠い。耳鳴りがする…。


僕の意識はストンと落ちた。



 目を覚ますとカーの天井…、の前に精霊さん達の申し訳なさそうな顔、クシャクシャに泣いたアレク君の顔、ジルのホッとした顔、クレイス様の心配そうな顔がある…。


なんだ、これ…。寝起きで頭が回らない…。


ジルが背に手を当てて起こしてくれた。体が重い。

そして、何があったのか説明してくれる。



僕、倒れちゃったんだって。歌を歌ってると思ったらいきなりフラッと。ジルが慌てて抱きとめてくれたらしい。


心配かけてごめんね、ジル。

格好良い所を見せようとして失敗しちゃった…。

うぅぅ…、情けない…。


外がどうなったのか気になってジルに支えられながら外に出てみる。


そこには一面、薄い水色の花畑が出来ていた。

瘴気により暗くなった森に花が淡く光っている。


良かった…。成功した。

ホゥと息を吐く。


これは精霊さん達がくれた瘴気を吸収し成長する花だ。瘴気を吸収して段々と濃い色になっていく。

深い青の花になると収穫の時。

この花で作ったポーションが最上級の魔力回復薬になるらしい。

昔は至る所に生えていたんだけどポーションの為にどんどん取られて姿を消したと。

その後瘴気は浄化される術をなくして増え続けているんだって。


なんてこった…。人間の自業自他じゃないか…。


精霊さん達が種を持っていたんだけど姿を見る人も声を聞く人もいなくて…。そうこうしてる内に精霊さん達にも忘れ去られた花だった…。


なんてこった…。こんなに大切な物を…。











 






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