アレク君と歌を歌おう。
あれから僕はアレク君とクレイス様が心配でちょくちょくクレイス様の所へ顔を出している。
その後魔獣が邸宅近くには出ていないらしいがまだまだ瘴気が濃く森には靄がかかっている。
僕は今、スピール公爵家の薬草園のお手洗いをしている。Withアレク君。
カーをまだ移動出来ないので、せめてこれ位はと申し出た。
だって美味しいお菓子くれるんだもの…。
こんなに大変な時にいっぱいおもてなししてくれるの…。
申し訳ない…。
僕畑仕事は得意だからね!アレク君も一緒にやってくれるんだって!
可愛いなぁ〜。
「アル君、何やってるの?」
「怪我した騎士さん達によく効く薬を作ってあげたいから薬草園を充実させたいとおもいます!」
今ここの薬草園には精霊さん達が少なく、元気がない子が多い。
皆瘴気にやられて消えてしまったり、逃げる力もなくしてしまったらしい。
その為かスピール公爵家の薬草園には状態の良い薬草が少ない。
今日は僕の家から土の精霊さんが助っ人で来てくれた。
名前はモルくん。テルくん。ルルちゃん。
ラス君から話を聞いて3人が仲間の精霊さん達を心配して来てくれた。
「「「殺ってやんよ!!よくも仲間を!!」」」
相変わらず、可愛い見た目なのに殺意高めです。
まずは綺麗な雨を降らせ、その雨に僕の魔力をたんまり込めろだって…。
可愛い見た目なのに横暴ぉ…。
へとへとにながら雨を降らす。
「「「さぁ!歌を歌え!!癒しの歌を!!」」」
待ってぇ…、ちょっと休ませてぇ…。
畑とこんにちはするようにへばっていたらアレク君が泣きそうな顔でそばに来てくれた。
「アルごめんね。僕のお家の事なのに…。僕何も出来ない…。」
ありゃ…、気を使わせてしまった…。
ダメだなぁ…、僕は…。
ムクリと起き上がり、アレク君と向きあう。
「なら、アレク君に手伝ってもらおうかな?」
「僕に出来る事なら!」
「精霊さん達に癒しの歌を一緒に歌おう!この前みたいに歌に魔力を込めて!」
モル君、テル君、ルルちゃんに歌を教えてもらう。
「不思議な歌だねぇ。」
精霊さん達に教えてもらう歌は人間の言葉でも僕達がよく耳にするような曲でもない。不思議な音階の不思議な歌だ。
2人で手を繋いで薬草園を歌を歌いながら歩き回る。
弱って座り込んでいた精霊さん達がゆっくり立ち上がり僕達と一緒に歩いてくれる。
早く元気になって欲しいなぁ…。キャラキャラと屈託のない顔で笑う僕の家の精霊さん達を思い浮かべる。
明日も来よう…。
連日薬草園に通っている。アレク君はその都度付き合ってくれる。
そのおかげで精霊さん達は少しづつ元気になり、笑顔が増えてきた。
そして、アレク君にも精霊さん達が見えるようになった。
アレク君はすごい喜んで毎日へとへとになる位歌を歌ってくれている。
今も疲れて仰向けに寝転んでいるアレク君のお腹の上に寝転んで遊んでいる。和むぅ…。
僕にはモル君、テル君、ルルちゃんは厳しい。「「「アルはまだ!!もっとやれるでしょう?」」」
容赦ないぃぃ〜。
畑を耕し、畝を作る。そこに精霊さん達が選んだ薬草を植えていく。
「「「さあ!歌え!今度は歓びの歌を!!」」」
僕は歌う。精霊さん達と共に大地を、生命を称え、収穫の歓びを讃える歌を。
薬草園全体に光が満ちる。
温かい光に柔らかい大気、大地は生命力に溢れる。
心地よい空間で僕とアレク君は一緒に微睡む。
「まるで聖域だ…。」
遠くで見ていたクレイス様が呟く。
その後しばらくして、スピール公爵家の薬草園は復活した。今では様々な薬効の高い薬草がたわわに生っている。
良かった。これで怪我をしても何とかなるだろう…。
さて、次は森だ。




