表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/68

もうっ!もうっ!

 

 今、僕は非常に困っている。


 僕の目の前にはニコニコと笑う優しそうなおじさん、その後ろにはツンデレ風味のメガネを掛けたイケオジがいる。

僕達のいるオルガナイト王国の国王陛下とその宰相さんだ。

何故こうなったのか…。それは2週間前に遡る。



 僕とギル、ジルは、ロバートからのお誘いでサンガリア公爵邸へ来ていた。

美味しいお菓子をうまうまと頂いていると、ロバート様が、

「根回しが終わったよ。そろそろ陛下に会いに行こうか。」

とか、言い出した。


……、何言ってるの?このおじさん…。

とか思った僕、悪くないと思う。


最近のロバート様は美味しいお菓子をくれる近所のおじさんと化していたので忘れてたけど、そうだった!この人公爵家の偉い人だった。

でも、こちとら現当主に疎まれて廃嫡予定の将来平民なんだぞ!もっと配慮してもらわないと心臓が止まっちゃうんだぞ!!


とか思いつつ、僕の今後はロバート様にお任せしてたんだったと思い出す。きっとロバート様は僕の為にあれこれと動いてくれたんだと思う。


反省反省。


 

 今日、登城するまでには色々な苦労があった。

主にジルが…。


 お城に登城する際は正式な衣装が必要らしい。

今回僕とギルは非公式に陛下と面会するんだって。

衣装はロバート様が用意して下さった。

サンガリア家が後ろ盾となっているのを示す為もあるので有り難く着せて頂く事にした。

ロバート様の子供の時の服を直したんだって。

さすが公爵家。生地が良い。すべすべ〜。

ギルとキャッキャ言いながら衣装合わせした。

楽しかった。


 ギルは今回、次期当主として瘴気の森の今後の対応策の話し合いに参加する事になっている。

もちろんウィル君も。


 後はマナー。貴族に対するのと王族に対するのだとマナーが違うんだって。大慌てでジルが教えてくれた。

さすが!ジルはなんでも知っているからね。


 その他、献上品として収納袋に僕作のポーションと、お疲れの時に使える疲労回復の飴を入れて持っていく事にした。

ロバート様は手ぶらで良いよって言って下さったけど…、まぁ…、賄賂だと思っている。

僕の存在の有用性を理解させて、今後都合の良い駒にされないように先制パンチのようなものらしい。

…ジルが黒い笑みを浮かべていた。はわっ!



 

 そんなこんなであっという間に登城する前日になった。


 シロガネに行きたくないなぁ〜とか、グチグチ言ってたらハクエンが、

「なんだ、行きたくないのか?我も行ってやるからさっさと済ませてしまえ」

「母様が行くなら僕も行く!!」

と、ハクエン親子も参加。

「僕達も一緒に行って守ってやるよ。任せろ!アルに嫌な事をする奴がいたら殺ってやるから!!」

と、精霊さん達も参加する事になった。


 ハクエンは同胞の扱いについて陛下と話をしたいんだって。でもさすがにハクエンの大きさではお城に入れないので後でお庭で紹介する事になった。


…まぁ、折角だからたくさん媚びを売っておこう。





 当日、登城すると謁見の間ではなく、王家のプライベートスペースにある客間へ案内された。

しばらくすると、陛下が宰相さんを伴ってやって来た。内心冷や汗をかきながら挨拶を済まし、顔をあげる。


……、えっ…、怖いんですけど…。

目の前にはお顔と目が怖いおじさんが…。

これが陛下?

その後ろにはメガネをかけた冷たい雰囲気のおじさんが…。

…、え…、これ絶対僕歓迎されてないよね…。

帰ってもいいかなぁ…。

チラと視界の端にジルとギルが見える。

ジルは硬い表情をしている。あんなジル初めて見た…。

ギルは青い顔をして強張った表情をしている。

それを見た瞬間僕が感じたのは怒りだった。


怯えをかくし、貴族的微笑み。ニコ。

僕がギルもジルも守るんだ。

最悪、謁見が失敗したら僕の大切な人全員連れてこの国から出ていってやる!!

呼び出しておいてそっちがその態度ならもうこの賄賂だってあげないんだから!!


僕の雰囲気が変わったのが分かったのか、目の前の2人の顔が変わる。

ついでに僕に付いてくれている精霊さん達の殺る気も徐々に増している。

空気の緊張感が強まっていく。


「わはははっ!悪い悪い!今代の賢者がどのような方か試させて貰った。済まなかった。サンガリア公爵より話は聞いていたが我の目で見たかったのだ。失礼した。」

と、ニカッと笑い頭を下げる。

先程まであった緊張感が消えて、僕達は戸惑う。


 ロバート様からは僕の事“良い子だよ〜”とは聞かされていたが、陛下にはこの国を守る義務があるから自分の目で見て判断するまではウェルカム出来なかったんだって。


うん…、分かるけど…、分かるけど…、僕、涙目。

ギルがいるから泣かないけどね!格好いいお兄ちゃんでいたいからね!もうっ!もうっ!



その後はニコニコする陛下と冷たそうなのに色々気遣ってくれる宰相様と緊張の取れた僕とギル、ウィル君に、見守っていたロバート様、僕の側で“つまんな〜い”と言ってる精霊さん達で美味しいお茶とお菓子を頂いている。

さすが王家のお茶会。香り高いお茶に見たことないお菓子に僕達大喜び。特に精霊さん。

“食わせろ〜”と騒ぐので、陛下にお伺いをたてる。

「精霊達にもこのお菓子を頂いていもよろしいですか?」

「ほう!精霊と!さぁ!たんとお食べ下さい。」

と新たにお菓子を追加して下さる。

ついでにハチミツ入りのお茶も頂いた。


みるみる消えていくお菓子を見て陛下達は愕然としていた。消えて行く速度が半端ないもんね。

ラス君とメルちゃんだけじゃなく、近くにいた精霊さん達も寄ってきてうまうまと食べてるからね。

王城にはこんなに精霊さんが隠れていたんだね。


その内、王城でも精霊さんと仲良くなる人が出て来るんじゃないかなぁ…。






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ