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その頃、他の方々は…。③


〈ある公爵家当主の憤慨〉


 息子のウィルの紹介で賢者とお会いした。

まだ若く、そして不幸な生い立ちの子だ。

しかし育てた者が優秀だったのだろう。真面目で擦れた所のない可愛い子だった。

両親からの愛情は無かったのだろうが、他の者達から愛され大らかな子に育ったようだ。その大らかさに感化されるのか、賢者であるあの子と一緒にいる息子と賢者の弟は普段からは考えられない程屈託なくよく笑う。

息子も賢者の弟のギルバートもあの年では考えられない程優秀だ。高位貴族として卒なく、そして冷徹に振る舞うことも出来る。


だからこそ、私はあの侯爵家夫妻に苛立ちが募る。


大事に育てていたならば、今頃賢者を中心に次世代がこの世界で大きな力を手に入れる事が出来ただろう。

長年この国を悩ませていた瘴気を浄化し、その知識でこの国を更に発展させる事が出来ただろう。


しかし、もうあの子の視線は世界に向いてしまった。

我が国だけの宝とはならないのだ。


 それにしても、あの子のスキルは凄まじい。魔獣が跋扈する森でのんびり湯に浸かるなど正気の沙汰ではない。

別荘も建てて貰い返しても返しきれない恩も出来た。なのに欲がないのか全てをギルバートにと。

優秀なあの子は放っておいても現当主を早々に追いやり、家の実権を握るだろうが、私も存分に力を貸そう。



 宰相がモートンの森の魔獣被害減少について調べているようだ。隠せる物ではない。賢者の意思に反しないようこちら主導で交渉を始めるとするか。


賢者とその弟、ギルバートの利が最大に上がるように我が公爵家が陛下に進言しようではないか。


 賢者よ、安心なされ。ギルバートは必ずや立派な次世代の筆頭となるであろう。



〈ある兄好きな弟の企み〉


 僕の兄上は凄い。そして僕の事をとても大事に思ってくれている。

ロバート様が感じた恩は全て僕に返してって…。


兄上の僕を思う気持ちに涙が出そうな程嬉しかったが、同時に悲しかった。

兄上は自分に無頓着だ。自分の幸せを誰かに与えてもらえると思ってないのかもしれない。

僕にばかり与える。だから、僕は兄上を1番に考えよう。


最近父が別邸への嫌がらせをちょくちょくやっているようだ。

使用人を引き揚げて自分の好きに出来る使用人を送りこもうとしてジルに返り打ちにあったり、魔獣除けの薬草を枯らした事もあったようだ。その時はジルに森へ引き摺られて行き、帰ってくると寝込んでいた。

本当に情けない父だ。


 婚約者とされた家の不正も調べている。

情けない話だが、父と向こうの家とで何やら薄ら暗い取引があるようだ。


 ジルが居る限り兄上の守りは万全だ。今は早く本邸の使用人達を掌握しなければならない。父をさっさと退位させて僕が兄上を守らなければ。



 それにしてもジルって何者何だろう…。



〈瘴気の森の管理家の焦燥〉


 森には魔獣の討伐をやってもやっても魔獣が跋扈している。


我が公爵家の騎士団は崩壊寸前だ。

怪我し引退した騎士の代わりが育つ前に、また誰かが怪我をし引退する。

もうずっとその繰り返しだ。我が公爵家の代々の当主は領地を返上する事も叶わず何とか持ち堪えるのか精一杯だ。

妻はこの苦難に耐えきれず離縁して家を去った。


息子にまでこの苦しみを味あわせたくない。どうにか私の代で改善策を見出だせないものか…。


神よ、どうか…、どうかお助け下さい。

もう、私も私の家族も家臣達も限界なのです。


 


 学生時代、同期だった奴から手紙が来た。そいつも瘴気の森の管理家として多大な心労を抱えている同士だ。


…何だと?!サンガリア家の騎士団が持ち直しただと?どういう事だ?!


来週内密で話があると書かれている。

この状況を打破する策があるのなら今すぐにでも飛んで行き、奥歯をガタガタ言わせる位揺さぶり白状させてやりたい!!


息子と共に来るように書かれている。



 一体何があると言うのだろう…。






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