表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/64

生きていくって…。


 女性ギルド員の顔は、青を通り越して白い。

ギルマスも厳しい顔で、

「随分とギルドを舐めてくれたな。

ギルドは王家にも神殿にも、権力には屈しない第3の立場を取っている。王家とて口出しは出来ない。

そこに権力を出してくるとは…。

君は、君の男爵家を当ギルドだけでなく、全世界のギルドを敵に回すつもりか?

愚かな事だ。」

と、渋い顔。

女性ギルド員は何も言わない。


僕は、

「では、私はこれで。」

と、席を立つ。

「待って!!本気なの?男爵家を潰すって…!」


何を今更…、

「もちろん。

君は、男爵家を使って私達に、何だったかな…?

無事でいられると思うな、だったかな?私の身に危険が迫るんだろう?

なら、早く潰してしまわないと。」

ニコ。

「止めて!私が悪かったわ!家には手出ししないで!!」

と、涙を流す。

「随分と都合が良くない?

自分の立場が上だと思えば、強気に出て、自分の立場が相手より下だと思うと途端に弱気だ。

みっともないよ。」


 あれ?何か僕が悪者っぽくない?

こっちは巻き込まれただけだぞ!そっちが先に権力使ったんじゃないか!悪者はそっちだぞ!!


 内心ヒヤヒヤしながら、貴族的微笑みを崩さずに、相手を見る。

「あれ?それが君の謝罪?

私の名誉を棄損し、盗人呼ばわりしておいて?

しかも、そんなに睨んで。反省…、してないね。

ここを出たら私は誰かに命を狙われる事になるんじゃないかな?

怖いなぁ。そんな危険は排除しないとね。」

ニコ。

「やめてってば!謝ってるじゃない!」

「どこが?君の反省が見えないよ。

ねぇ、反省ってどうするか知ってる?」

笑顔を消して問いかける。

「申し訳ありませんでした。」

泣きながら頭を下げる。

「それで?」

ニコ。

女性ギルド員は訳の分からない顔をする。

「反省したらそれで終わりじゃないでしょう?

その後どうするの?」

僕は何もいわずに、ニコ。

「今後、私の思い込みで人を判断せず、人前で相手の名誉を穢す事は致しません!」


当たり前の事だよ。

僕はギルマスを見る。

「このギルド員は私の前にはもう出さないように。

出てきて私が不快な思いをする時は…。

分かって下さいますよね?」

ニコ。


ギルマスも青い顔して、

「勿論だ。しばらくはこのギルド員には厳しい職員を付け、徹底的に教育をし直す。

そして、表には出さない。」

女性ギルド員は愕然とする。


 あなたはそれだけの事をやったんだよ。

もし、本当にお忍びの貴族相手なら、とっくに消されているだろう。

もし、相手が権力の無い者なら、その人が消されていただろう。


自分の立ち回りで自分が、相手が困る事になると理解しなきゃダメだ。


ずっと裏方ならば、ギルド員としての道を閉ざされたも同然だろう。

学び、ギルマスが表に出しても良いと判断すれば、いつの日か、表に出れるだろう。

ギルマスが判断するならそれで良い。


 僕は女性ギルド員を目にする事なく、ギルマスに頷いた。



 はぁ〜…。後味悪いなぁ…。



ギルマスに収納袋を預けて、おじちゃんに手を振り、ギルドを出る。


外に出ると、サンガリア家の団長さんがいた。

「あれ?どうしたの?」

「昨日の事が気になって…。

今日来てるかもしれないと思って、寄ってみたんです。」

ささくれ立った心が少し癒される。

「ありがとう。多分大丈夫。解決したよ。」

笑うが団長さんは変な顔をしている。

「解決って…。そんな変な顔をして…。」

どうやら僕も変な顔してたようだ。


「なんか、スッキリしないんだ。

弱い者いじめみたいに、罪悪感。

僕、悪者だったかも…。」


 僕達は昨日の所へ行き、ベンチに座る。

団長さんが、

「いいんです。今回の事でその子が何か感じれば、それで良いんです。

人は、いつ気付くか、何で気付くかって、大切なんです。

小さな違和感で動けるやつは大事にはならない。

でも、気付けないやつは、今回みたいになる。

それでも気付かないやつは…、たぶん…、生きていけないんじゃないですかね…。

アル様は、最悪になる前で気付かせた。

今は色々思う事があっても、そいつは、後々思い知るんじゃないですか?

あの時気付いて良かったって。

アル様は間違ってないですよ。」


 そうかなぁ…。感情のまま、色々ネチネチとやった気がするけど…。


 でも、団長さんの言う事はよく分かる。

僕は気付けなかった。小さな違和感を見ないふりして…、そして…、殺された。


何に気付くか、いつ気付くか、今の僕は甘えすぎてない?

僕もあのギルド員と一緒。間違える時もある。

気付かない時もあるだろう。



 それでも、僕は生きていかないといけない…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ