表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/64

僕、権力をかさにきます。


 ギルドを出てからも気分が落ち着かない。

いきなり、一方的に怒鳴られたのだ。

こちらの言い分を聞かず、盗んだのか、と…。

全てのギルド員がああではないと分かっているが、気分が悪い。

このまま帰ると、ジルが心配するかもしれない。

町を少しプラプラして気分転換してから帰ろう。


 いい匂いがする方へ行くと屋台があった。

そこで魔獣肉の串焼きを1本と果実水を買った。

近くのベンチに座り、ボー…としていると、隣に誰か座った気配がした。

「こんにちは。こんな所でどうなさったんですか?」

サンガリア家の騎士団長さんだった。

ビックリ…。

「あ…、こんにちは。」

「今日は非番でして。ブラブラしてた所でした。

何かあったんですか?お顔が暗いようですが…。」

僕は先程の事をかいつまんで話す。


「はぁ〜、そうですかぁ~…。」

団長さんが黒い笑みを浮かべる。

魔獣を前にしたかのようだ。

「団長さん?何か考えてる?ダメだよ、これは僕が対処すべき事だから。」

これから先、僕はこうゆう理不尽な事をたくさん経験するだろう。

僕は対処を学ばなければいけない。

「あぁ…」

団長さんは残念そうに頭をガシガシ掻いた。



 団長さんから、そういう奴はたくさんいる。人を貶めて優越感に浸る奴や自分の利益を貪る奴等、悪いやつだけじゃなく、善良を装う性根の腐った奴も居るから気をつけろ…。舐められるとこの先、ずっと舐めた態度を取られるから、上下関係をしっかり教え込め!って教えられた。



 翌日、ギルドの扉をくぐる。

ギルマスへの取り次ぎを受付のお姉さんに頼む。

その間に昨日の女性ギルド員が、

「あっ!あんた、昨日の!!

自分が盗んだって謝りに来たの?」

大きな声で言うので、ギルド内が一瞬静まり僕に周囲の目が集まる。


僕は貴族的微笑み。ニコ。

スッと周囲の目が外される。

「貴方は何も反省していないようだ。今日は昨日の件でギルマスに話に来た。ちょうどいい。貴方もギルマスの所へ来なさい。

私に盗人の汚名を着せたのだから、覚悟してもらおう。

一方的に自分の考えで人を貶める、人の話を聞かない。君のような者に嫌悪感を覚えるよ。

顔も見たくない程にね。」

僕はあえて尊大に言い放つ。

「っ!なっ!!」

「大きな声を出さないでくれ。君の声を聞くたくないんだ。

まともに話も出来ないのなら、せめてその口を閉じていてくれ。」

「あんた、何様なの?!私にそんな口を聞いて!」

「うるさい。黙れと言っているのが聞こえないのか?」

怒っているジルを真似てみる。

…ジル、僕には見せないけどたまに、本邸の人に冷たく怒ってる時があるんだ。

女性ギルド員は青い顔をして口を開閉するも、声にならないようだ。


はぁ〜…、困った時はジルの真似だね。

効果てきめんだ。


 ギルマスが2階から降りてきた。

「アル君、すまなかった。取りあえず上へ来てくれるか?

そこのギルド員も上で話を聞こう。

昨日の件は既に聞いている。」


ギルド内はしん…、と静まり、女性ギルド員か青い顔をしてギルマスへ話しかける。

「こ…、この子供が…、」

言いかけるも、

「それ以上口を開くな。

君にギルド員の誇りがあるならば。」

ギルマスはそう言い、背を向ける。

上に来いって事だね。

僕はギルマスの後に続く。

その後を青い顔をした女性ギルド員が追い掛ける。



「アル君、すまなかった。解体場の奴等から昨日の話を聞いたが、完全にこちらに非がある。」

と、頭を下げた。

女性ギルド員が、

「何故ですか?ランクに見合わない魔獣を持ってきたんですよ!盗んだに決まってます!こんな子供に出来るわけないじゃないですか!!」

と、昨日と同じく、まくし立てる。

さて、ギルマスはどう対処するのかな?

ギルマスの方を向いて、ニコ。


ギルマスは若干引きつった顔で、

「黙りなさい。盗んだに証拠は?誰か訴えた者がいるのか?」

「それは…、証拠は無いですが、高ランク魔獣です!こんな子供には無理です!!」

ギルマスは呆れた様に、

「証拠もなしに君の独断で1人の有望な冒険者を盗人呼ばわりか?皆の前で?大声で?人の話も聞かず?」

「何を聞いても嘘をつくに決まってます!」

ギルマスは深くため息を吐いた。

「この子は私が認めた子だ。他にも高ランク魔獣を卸してくれている。

君のように騒ぐ奴が居るから内密にしていたが、かえって良くなかったようだ。

まさか、当ギルドに人の話を一切聞かず、一方的に盗人扱いするような常識の無い者がいるとは思わなかった。」

ギルマスに睨まれた女性ギルド員は

「でも…、」

と、まだ認めない。


「失礼。今回の事ですがどうなさるつもりですか?

僕はまだ謝罪もされていませんが…。」

ギルマスはハッとし立ち上がり、僕に頭を下げる。

「アル君、申し訳なかった。」

「ギルマス、貴方は良いのです。

私はそちらの方の謝罪が聞きたいのですが…?」

ニコ。

女性ギルド員は悔しそうな顔をして、

「私はシナル男爵家の者です。この事は家に伝えます。このギルドもあんたも無事で居られると思わないで!!」


全く分かっていなくて僕は笑ってしまう。

「ははは!君は凄いね。

では、君のシナル男爵家ごと、潰してしまおうか。

そうすれば、君はもう大きな顔を出来ない。

そしたら、僕に謝る気になるのかな?

君が馬鹿だったせいで、君の家はなくなるね。

かわいそうに…。

もちろん、君がじゃないよ。

君の家族で、君に巻き込まれる者達が、だよ。」

ニコ。


僕にそんな権力ないけど、昨日団長さんにも会ったことだ。

ロバート様に泣きつこう。


権力を、傘に着るなら、こちらも権力(完全に他人のだけど)で対抗させてもらおう。


 さて、どう出るかな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ