面倒そうな人に会った。
モートンの森の瘴気の事や別荘については、何かあったら連絡してもらう事になり、時間をおいて様子を見るしかない。適宜対応ってやつだね。
モートンの森の魔獣は収納袋に入っており、ロバート様に渡そうとしたら受け取ってもらえなかった。
今回の件、僕は金銭での支払いをお断りした。金額の検討もつかなかったし、僕が苦労して稼いだお金じゃないからね。
むしろモートンの森の瘴気が換金されてるからね。
その代わり、ギルの事を頼んだ。
実は僕、自分に認識阻害をかけて本邸へ忍び込んだ事があるんだ。
ギルに意地悪する人がいたら痛い目に遭って貰おうと思って…。
でも本邸の人達の大半はギルに好意的だった。
人当たりが良く、下の者に傲慢な態度を取らず、勤勉だって。
ギルが次期当主なら次代も安泰だって!
僕の鼻は高かった!
でしょう?僕の弟、凄いでしょう?!
ギルを褒めてくれた人達にお礼のつもりで、僕が作った飴を1粒ずつポケットに、そ〜と忍ばせた。
喜んでくれるといいなぁ。それ、回復薬の材料で作ったから元気になると思うよ!
だから、これからもギルをよろしくね!
でも…、あの人達、現当主と婦人の評判は良くなかった。
ストロイエ家は武に秀でた家だったんだって。
その為、ホーエンの森の管理を任され、侯爵の地位を与えられたらしい。
前侯爵までは、それに相応しい活躍をしており、定期的に森へ討伐に入ってたけど、現当主になってから、全く討伐隊を組まず、森の管理も疎かにしているそうだ。
古い使用人程、今の在り方に眉を顰めている。苦言を呈すると閑職に追いやられ、今じゃ、イエスマンばかりが周りを固めているらしい。
そんな人達にギルが学ぶのは難しいと思う。
ロバート様の様な、ギルの模範となる方が必要だと思う。
だから恩を感じて下さったならば、全てギルに返して欲しいと、ロバート様にお願いした。
モートンの森の討伐時の事や、領地経営等、当主に必要な事を教えて下さる事になった。
良かった。ギルは頭も良く性格も良いから、真っ当な教えを請う方さえいれば、良い当主になると思うんだよね。
と言うことで、今日はモートンの森で討伐した魔獣をギルドに持って行こうと思います。
いつもの様に、解体のおじちゃんに魔獣、魔魚をドン!と出す。
「あ〜……、相変わらずすげえなぁ…!これなんかSランクの冒険者でないと倒せない奴だぞ!」
それはロバート様が倒した奴です。
「はぁ〜、この魔魚もすげえな…。こんな大きさ初めて見たぞ!」
それは団長さんが釣った奴です。
色々出していたら、
「何それ!!何であんたみたいな子供がこんなの持ってるの?!盗みか何かしたんじゃないの?!ギルド員として見過ごせません!」
いきなり後ろから若い女性に怒鳴られた。
ビックリ……。
あ〜…、こっそりやってるつもりが見られちゃったか…。
「おい、お前さんはだまっていろ。
この坊主が正当に持ってきた獲物だ。」
おじちゃんが庇ってくれるも話を聞かない。
「そんな訳ないじゃない!こんな子供が!」
僕が着けていた冒険者のプレートを見て、
「しかもDランク!ありえない嘘を付くのは辞めなさいよ!」
と、僕を怒り出した。
人の話を聞かない人だなぁ…。
「これを僕がどうしたと思うんですか?盗んだと?このランクの魔獣を狩れる人が僕のような子供に盗まれるようなマヌケだと思うんですか?」
話を聞かない人に苛立ち、つい攻撃的になってしまう。
「そもそも、ランクによる適正魔獣ランクという規則があります。あなたのしている事が本当だとしたら、規則違反です!規則は守られるべきです!守れないなら、ギルド追放もあり得ます!」
言ってる事は正しいけど、僕はギルマスに了承得ているよね…。そもそも話も聞かないじゃないか…。
キンキン頭に響く声で責められる。
頭痛くなってきた。もうムリ…。
貴族的微笑み、発動。ニコ。
「僕についてはギルマスの了承を取ってます。
不満があるならギルマスへ直接聞いて下さい。それでも不満ならギルドは退会します。」
後ろでおじちゃんが引き止める声がしたが、踵を返してギルドを出た。




