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公爵家のお菓子は美味しい。


 ギルとウィル君が来た。

ウィル君が、公爵様から手紙を預かって来たんだって。

御礼状だった。その後、目に見えて魔獣の被害が減ったんだって。良かった。

まだ森の深部にはいるけど、今の内に騎士団を立て直す事が出来るって。

ウィル君も今日は明るい顔をしている。

良かった。良かった。僕はうんうんと頷いた。

でも、手紙の最後、是非お礼をしたいので公爵家へお越し下さい…だって…。えぇ…、困った…。

断っちゃダメかなぁ…。ジルをチラッ見る。

ソワソワしてる…。ダメみたい…。そっかぁ…。


僕はウンウンと唸った。


 1週間後、お伺いする事にした。ギルと一緒に。

1人じゃちょっとムリ…。情けないお兄ちゃんで悪いけど、ギルを頼っちゃおう。


ウィル君には僕達が転移する座標になってもらう為の陣を付与したペンダントを持ってもらい、1週間後の決められた時間に転移する事にした。


 テーブルの上にでも置いててね。


 その後、この前2人が討伐した魔獣を買い取ってもらったお金を渡した。2人がやったやつだから、2人で分けてね。

2人とも呆然としてた。

分かる分かる。凄い額だよね。

僕も最初びっくりしたもん。


 今日も魔法の練習がしたいと、2人に言われて、またモートンの森へ。


「あれ?ウィル君、腕上げた?この前より威力が強いね。」

「はい!この前苦労したので、特訓してきたんです。」

ウィル君が誇らしげに答える。

「あ、兄上!僕も練習したんですよ!見てて下さい!!」

バシュッッ!!風の刃が飛ぶ。

ギルも一撃は無理だけど、三撃位で魔獣を倒してた。

「スゴイよ!ギル!」

この子達はまだ小さいのに、こんなに魔法を使えるなんて!!僕の弟も、弟の親友も天才じゃなかろうか!!


 ウィル君もシロガネも、生暖かい目で僕を見ていることに気付かなかった僕は、今日も回収係。

どんどんやっちゃって!!



 公爵邸へのお呼ばれ迄の1週間、僕はマナーの復習、衣装合わせ。

ジルはもっと忙しい。手土産の手配とかもあるんだって。貴族の慣習は面倒臭いねぇ。



 僕達が遊ぶのだと思っているシロガネが、のけ者にされたって不貞腐れるので、一緒に行く事になった。ギルがウィル君に聞いてくれたら「ご一緒にどうぞ」だって。良かった。


 

 当日、おめかしした僕、おめかしした可愛いギル、認識阻害を外した新しいリボンでおめかししたシロガネ、いつも以上にパリッと格好いいジルの4人で公爵邸へ転移した。


 そこは客間の様だ。目の前にはウィル君、その隣にウィル君によく似た大きな威厳のある男性、サンガリア公爵様かな?と、その後ろに護衛の騎士、家令と思われし男性が揃っていた。

「ようこそお越し下さいました。私がサンガリア公爵家当主ロバート・サンガリアと申します。此度は我が公爵家へのお招きに応じて下さり、ありがとうございます。」

一歩前に出て、大柄なサンガリア公爵様が渋い声で挨拶下さる。


渋〜い!威厳がある!格好いい!

感動していたが、ジルから圧が…。えぇ…。やっぱり僕が応対するの?こんなザ!貴族!みたいな人に??僕1人で?!

内心震えながら微笑み、ジルに習った挨拶を返す。

「いえ、こちらこそお招き頂きありがとうございます。私、アルフォンスと申します。こちらは私の弟、ギルバートで御座います。こちらが聖獣、シロガネ。私の後ろにおりますのが当家執事のジルと申します。大人数となり申し訳ございません。お招き下さり感謝致します。」


 ふぅ…、どうだ。ジルをチラッと見る。

よし!合格のようだ!

ギルからキラキラした目を向けられる。よし!

お兄ちゃんとしての威厳は保たれた。ボロが出る前に帰りたい!!

まだダメ?…そう……。胃が痛くなりそうです…。


 僕は今まで公の場に出た事はない。大人の貴族の方とお会いするのも初めてだ。僕の緊張を感じたのか、公爵様はサンテラスへと案内してくれた。

あぁ…、ありがたい…。こちらの方が少しは落ち着ける。何しろ客間はお高そうなあれこれがあって、シロガネが何か壊さないかとヒヤヒヤしてたし、圧迫感が半端なかったんだよね…。ふぅ…。



 サンテラスは陽の光が射し込んで明るく開放的。知らず詰めていた息を吐き出す。

ソワソワとシロガネが、

「ねぇ、アル!外で遊んでもいい?」

キラキラした目で聞いてくる。

ロバート様を見ると頷いてくださったので、

「うん、いいよ。気をつけてね。お庭を荒らしちゃダメだし、遠くへは行かないでね。」

「分かった!!」

シロガネは大喜びで外へ駆け出した。

「すみません。シロガネはまだ子供なので。」

「いえいえ、お可愛いですなぁ。失礼。聖獣様に対して不敬でしたな。」 


いえいえ、シロガネが可愛いのは本当ですから…。


 

 ロバート様はとても体格のよい方で、魔法剣技共に優れている方らしい。公爵家に限らず、森の管理を任されている家は有事の際は騎士団を率いて戦場に立つそうで、全てにおいて秀でていなければならないらしい。

ウィル君も魔法凄かったもんね。


 ロバート様からは今回の件のお礼を言われ、今後何かあった際には僕とギルの後ろ盾になってくれる事になった。

先程の僕の挨拶で家名を名乗らなかった事や、ウィル君から僕の立場をある程度聞いて察して下さったようだ。


今後、ギルにも頼りになる方が出来て、良かった。

ねぇ~、とギルを見ると、何か悪い顔してる?見間違え?

…、だよね!そうだよね!ギルがあんな顔する理由ないもんね…。


 ロバート様には今のカーの位置の情報と、今後数カ月毎にカーを深部へ移動させて行く事を話した。


ロバート様から、今後の僕の立場について相談された。王家からの問い合わせは必ず来るだろう、と。


う〜ん…。僕は世界を見て歩きたい。でも僕の事を知られれば国から出してもらえないかもしれない。最悪、僕の大事な人達を人質に取られるかも知れない…。そんな事をされたら僕はこの国を絶対許さない。


 今後の事を考えて行かなければいけないな…。 


 ロバート様からは僕と両親を取り持とうかと提案もあったけど、ぜっっったい嫌!!

ギルも僕と一緒に居たいけど、あの人達が変わるわけないって。僕が嫌な思いするだけだって怒ってくれた。

優しいなぁ、ギルは。

僕は逃げるのに、ギルは逃げられずあの人達と向かい合わなきゃいけないんだもん。

ごめんね、ギル。

ず〜ん…と落ち込んだ僕を見て、ギルは大丈夫って笑ってくれた。

あと数年我慢したら、後は後悔の人生を送らせるからって…。

あれ…?ギ…ギル?やっぱり怖い顔してる?いやいや…、顔に影が落ちたのかな?


 ロバート様とウィル君が意味深な顔で笑っていた。




 なにはともあれ、公爵家のお菓子は大変美味しゅうございました。










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