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僕とジルの世間知らずについて…。


 朝、ジルにモートンの森に着いた、と起こされ、ギルとシロガネと一緒に外に出てみた。

この森も薄暗い。

「カーから3m以上離れてはいけないよ。

多分瘴気がすごい濃い思う。」

遠くで魔獣が闘っているのか動き回る音や、咆哮が聞こえる。ギルの表情は硬く、シロガネも尻尾が丸くなっている。

あまり長居したい所でもないし、皆で別邸へ帰ることにした。

やはり、どんなに遠くても問題なく転移出来るようだ。


 ギルは名残惜しげにまた来る約束をして、本邸へ帰ってしまった。

シロガネもハクエンの所へ。

一晩皆といたから、1人になると少し寂しい…。


 さて、僕もバトじいのお手伝いにいこうかなあ…。




 

 今日はギルドに、溜まった魔獣を買い取ってもらいに行こうと思う。

今まで僕とジルは、カーの結界の中から、外を通りかかった魔獣で、討伐の練習をしてきた。

絶対に反撃されない安全な所からの攻撃は、ちょっと卑怯かなぁって思うんだけど、怖いんだもん。

その時、収納袋に入れた魔獣が結構溜まってるんだ。

ギルドの解体のおじさんに聞いたら、いいぞって言われたから、今日持って行こう。



 冒険者“アル”になる為、着替える。

ブーツも中の服も全部黒。マントだけは深緑にした。ジルが選んでくれた。似合うって…。えへ…。

腰に収納袋と剣を差して完成。

 ギルド近くの路地裏に転移陣を仕込んであるから

そこへ転移。これは、僕とジル、バトじいのみ、3人限定にした。


 ギルドの中へ入る。昼前だから比較的人は少ない。朝や夕方は混むんだって。でも、休息日なのか、ギルド内の食堂でお酒を飲んで騒いでる冒険者がいる。

いいなぁ。僕もお酒飲んでみたい。いつも楽しそうにしてるよね。

そんな冒険者を横目に見ながら、解体の素材置き場へ。

「おじちゃん、前言ってた魔獣持ってきたから買い取りお願い。」

おじちゃん達は今日も筋肉もりもりで解体してた。

「おぉ!アル坊!持ってきたか!どれ、見せてみろ!!」

僕は収納袋から取りあえず5体の魔獣を取り出して、テーブルの上にどどん、と置く。

「……アル坊…これどこで獲ってきた…?」

「ん?僕のカーの周りにうじゃうじゃいるんだ。」

まだまだあるんだよね…。

「……アル坊…。取りあえずこれ、一旦しまえ。そして少し待ってろ。」

「??」

言われた通り、一旦収納袋にしまう。

おじちゃんが何処かに消えた。戻って来たと思ったらギルドの上に連れて来られた。

んん??

連れて行かれた先はギルドマスターの所だった。

「ようこそ。わざわざ来てもらって悪かったな。俺はギルドマスターのゲオだ。よろしく。

君は冒険者のアルだったね。早速聞きたいことがあるんだが、まず、君の腰にあるのは収納袋か?」

「はい…。」

何かまずかったかなぁ…。ジルは珍しいけど、世間にはあるって言ってたんだけどなぁ…。

「収納袋の数は少ない。持っているほとんどの者は貴族だ。君は貴族か?」

あぁぁ〜…。まずい…。思ったより珍しい物だった…。

そして僕はいずれ平民になるのだから貴族って言わなくてもいいよね…?

「黙秘します。」

「では次、君の持ってきた魔獣は魔の森の深部にしか居ない、とても珍しい魔獣だ。君の家はどこにあるんだ?」

「黙秘します。」

あぁ…、やばい…。思ったより僕とジルは世間知らずだったようだ。

ギルドマスターが僕にじりじりと圧をかけてくる。

何だよっっ!だって僕知らなかったんだもんっ!

僕の目に涙が溜まってきた。

「持ってきちゃ駄目だって、僕知らなかったんだもん!もう持ってこない!もう帰る!」

ギルマスの圧に押され、僕はパニック状態になる。

ひょいと体が浮き上がり、誰かに抱っこされる。

解体のおじちゃんだ。僕の目から、ポロリと涙が落ちる。

「おい…、約束が違うじゃないか!脅かすなと言っておいたよな?あぁ?」

頭上から地の底を這うような声がした。

いきなり圧がスッと消える。

「いや…、すまなかった…。」

ギルマスが苦い顔で謝る。

「アル坊、すまんかったな。お前さんが珍し物を持ってきたから気になったんだ。お前さんが悪い訳じゃない。

お前さんが出した魔獣、あれはかなり高位のやつなんだ。なかなか討伐出来るやつがいないから素材も滅多に出回らない。で、お前さんに色々聞きたくて来てもらったんだがギルマスに脅されて恐かったな…。すまんかった。俺が聞けば良かったな…。」

おじちゃんのしょんぼりした顔を見たら少し落ち着いてきた。

この年になっても泣いてしまったのが恥ずかしくて、僕は顔を上げられない。

「おら!!お前も謝れ!」

「いや…。アル君。すまなかった…。気が急いてしまってな…。いや…、すまなかった。」

ギルマスが気まずそうに謝る。


 一旦ソファに3人で座り、お茶を飲む。

ふぅ…、少し落ち着いた…。

「泣いてしまってすみません。でも僕の事は話せないんです。僕だけの問題じゃないから。

家は魔の森にあります。そこで僕が狩りました。」

「君はまだ薬草採取か、低位の魔獣しか狩れないEランクだろう?どうやって討伐したんだ?なぜ薬草採取しかしてこなかったんだ?」



 まだまだ帰れそうにない…。

うぅぅ…、お家、帰りたい〜。







 


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