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お家は必要?

 

 ジルは恐かった。いつも優しく見てくれている目に感情が見えない。僕はそんなジルを見たことがなかったから凄く恐かった…。

ただただ震えて、「ごめんなさい」を繰り返すしかなかった。泣きすぎて息が苦しくなってきたあたりで、ジルは僕の前に膝を付き、僕の両手をそっと握った。そして、ひどく心配した事、誰かに攫われて痛い思いをしてるんじゃないかと、生きた心地がしなかった事、無事に帰ってきて良かったと言ってくれた。怒ってすみません、と、ジルの目が苦しそうに歪んだ。

それを見て僕は後悔した。さっきまでは恐くて泣いてたのに、今は申し訳なくて、何度も何度も謝って、目が溶けるんじゃないかって位、涙が落ちてきた。

 

 ルイがまた、温かいミルクをいれてくれた。

懐かしいなぁ…。僕が魔獣の死に動揺して震えていた時も、ルイは温かいミルクを出してくれたんだよなぁ…。と思いながら、ミルクを飲んで、寝てしまった。


 起きると昼過ぎ。

ジルが詳しい話を聞きに部屋にやって来た。


 僕は転移の魔法陣が成功した事、どの位離れれば転移が出来なくなるか検証したくて森へカーで行った事を話し、そこで、聖獣に出会った事を話した。

ジルは呆気に取られた顔をしていたが、その聖獣に会いたいと言ってきた。

その聖獣が本当に敵意がないか、僕を害さないか、自分の目で確かめたいんだって。

本当にすみませんでした。


 ルイとバトじいに謝りに行き、ジルと僕の部屋へ。

魔法陣に人物の指定をしなかったから、ジルも転移出来ると思うけど大丈夫かなぁ。こんな子供が作った陣で、ジルに何かあったらどうしよう!急に怖くなってきた。

ジルは私が先を参ります、と陣に触れ、魔力を流す。僕が止める間もなく、飛んでしまった!

僕も慌てて後を追った。

カーにはジルがいた!!良かった!

ホッとしていると、ジルが呆然としていた。

「このような事が…まさか…」

僕はジルをソファに座らせて落ち着くのを待った。


 しばらくすると、「アル様。申し訳ありません。もう大丈夫です。」

と、気恥ずかしそうに笑った。


 ジルがカーの外に出るから、僕はまだ中にいるように言われた。ハクエンが僕を傷つけないか心配なようだ。でもハクエンも知らない人がいきなり来たらびっくりして、攻撃しちゃうかもしれないんじゃない?

最終的にはジルが僕を抱っこして、2人を結界で守ってから、カーの外へ出ることになった。


 カーの外に出ると、ハクエンは寝ていた。

明るい所で見ると改めて、その大きさが分かる。

僕のカーより、少し小さい位。


 ハクエンが僕に気づき、顔を上げる。

僕はジルに抱っこされたまま手を振る。

「ハクエン、大丈夫だった?この人はジル。僕の大切な家族だよ。」

あれ?前足の間に何かある?白いモフモフ…。何だろう…。

「あぁ、賢者か。

この結界はいいな。瘴気も無く、襲われる心配もない。

お陰で、この通り、仔を産めたぞ。感謝する。」

「……え?」

もう産んだの?

「えっ?えぇ…?な…何か必要な物とかない?子供は大丈夫?」

「ハクエン様。私、アル様の執事のジルと申します。突然の訪問お許しください。

さて、、お子様を出産されたとの事ですが、おめでとうございます。何か入り用なものはございますか?」

ジルは僕が気になっていた事を聞いてくれた。

ジル、冷静ぃ。

僕だけ動揺してた。


ハクエンは、昨日のポーションのお陰で問題ないって。ホッとした。お母さんは元気じゃないとね!


「ねぇ、ハクエン。子供見てもいい?」

「あぁ。いいぞ。今は眠っているが、可愛い仔だ。」

僕はジルに抱っこされたまま、そ〜っとハクエンの前足の毛玉に近づく。

「はぇ〜…。可愛いねぇ。モコモコ、フワフワしてる…。」

すると、その子は目を覚ましたのか、プルプル震えた後、顔を上げ、目が合う。

はぁ〜…。可愛い。

フワフワ真っ白な毛皮に大きなキラキラした目。

あどけない顔で僕を見てる。

「触ってもいいぞ。」

ハクエンが言ってくれた。

「ジル、降ろして。」

ジルは少し迷ったようだが、僕を降ろしてくれた。

そぅ…っと僕は手を伸ばし、子供を撫でる。

フワッフワ…。なにこれ…。気持ちいい…。

僕は夢中でフワフワ、モフモフする。

たまらなくなって抱きつくと、温かい。

ギュっと抱きしめる。子供は僕の匂いをフンフン嗅いでいた。

顔を離すと、ペロリ…と舐められた。


僕は人以外と触れ合うのが初めてだったから、こんなにフワフワで温かいのかと驚いた。


「我が仔もそなたが気に入ったようじゃ。

たまに会いに来てくれ。」

「うん。ありがとう。会いに来るよ。

ずっとここにいるの?」

「あぁ。まだこの仔は長く移動できないし、この瘴気に触れさせたくないからな。しばらくは、この結界の中にいても良いか?」

いいけど…。この結界は半径3m。

この子が育つには狭くないかなぁ…。

僕の家の周辺は浄化されたから、人目さえ気にしなければ安全だ。

僕はジルの顔を見上げた。

ジルは僕が何を考えていたか分かったようで、しばらく考えた後で頷いた。

よし!

「ねぇ。ここじゃあ狭くない?

僕の屋敷は浄化済だから人の目さえ気を付ければ、安全だよ。

この子も走り回れるし、美味しいお野菜もあるよ。

この子が、長く移動出来るようになるまで、僕の所に来ない?

来てみて、駄目だったり嫌だったら、その時はまた森にカーを出してあげるから。」

ハクエンは少し考えてから、

「良いのか?確かに今後この仔が動き回るには狭いと思う。」

「うん!いいよ!!

美味しいお野菜あげるね!この子とも遊んでいい?」

「あぁ。頼む。」

やったぁ!!


 ハクエンがもう少し体力を回復して、移動出来るようになったら、僕の屋敷に行く事になった。

ルイとバトじいに、説明して、この親子が快適に暮らせるようしなければ!!


 この子達のお家も必要だよね…?





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