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ジルは怖かった。


 カーの外へ出てみると、あちらこちらの木が倒れ、血の匂いもする。

2つの影があり、1つはもう動いていないが、もう一つの影は上下に少し動いている。多分、ケガをして動けずに倒れているんだと思う。

呼吸音とともに動いていて、苦しそう。

でもこの森にいるってことは、強い魔獣なんだよね…?

灯りを大きく灯し、結界ギリギリまで近づいてみる。

そこには大きな白い狼の様な獣がいた。

白い毛皮が赤く染まっている。

(赤?魔獣の血は黒いんじゃなかった?

赤いって事は魔獣じゃない?)

結界内から灯りの魔法を、ポンッと、その獣の近くに投げてみた。

もう力がないのか、ゆっくり顔をこちらに向ける。

「誰かいるのか?」

低い声で問われる。

「君はケガをしてるの?」

「これは驚いた…。人間か?このような場所に入って来れるとは…。」

…話が出来る…。

こちらを警戒しているが、敵意を持っている訳ではなさそう…。

僕はもう少し話してみることにした。

「ねぇ… 君大丈夫?死んじゃう?

ここには人間はいないの?」

「ここに入って来れる人間は居ないだろう…。

人間は弱く、また、ここの瘴気は濃いからな…。

そして…私はもうすぐ死ぬだろうな…。」

「僕に何か出来ることはある?

お水飲む?寒くない?」

僕は今、僕が死んた時の寒かった事をことを思い出し、聞いてみる。

「ははは…。何とも優しい人間だ…。

ここで会ったのも、何かの縁か…。悪いやつでもなさそうだ…。

この仔を頼んでもいいか?

我のお腹の中には、我が仔がおる。

このまま、ここでこの仔が産まれても長くは生きられないだろう。

すぐ魔獣の餌となってしまう。

もうすぐ産まれる我が仔を頼んみたい…。」

「えぇ!!お母さんなの?!

なら死んじゃダメだよ!!

待ってて!ケガを治してあげる!

人間用のポーションは効く?」

「人間用のポーション等、我の体が大きく、何の足しにもならん。」

「なら、たくさん飲めば効く?」

「……。いや…。飲んだことないから分からん…。」

「じゃあ持ってくるから待ってて!

まだ、死んじゃダメだよ!」

僕は大急ぎでカーの中に常備しているポーションを持てるだけ持つ。

「いい?そっちに行くから、僕の事、襲わないでね!」

「その気力もないゆえ、安心せよ…。

ただ、無駄だと思うぞ…。」

ポーションを持って、結界を出る。

途端に、物凄い圧を感じる。

空気がドロドロに粘りついてる感じ…。

う〜… 気持ち悪い。

瘴気が濃いってこんな感じなんだ…。

一瞬怯むも、お母さん狼の元へ行く。

「飲める?」

狼は大きくて、確かにポーションが足りなそう…。

入れ物が必要か?

「ちょっと待ってて!」

急いでカーの中へ。

僕はたまに、カーの中で休憩してたから、おやつを入れるお皿があった。

お皿にポーションをあるだけ入れて、再びお母さん狼の元へ。

「はい。お皿に入れたから飲みやすくなったよ。」

お母さん狼は、皿に顔を近づけ飲み始めた。

少しすると、楽になったのか、呼吸が落ち着いてきた。

「大丈夫そう?」

「いや…。でもありがとう。楽になったが、我の傷は致命傷だ…。

長くは持たない。」

僕の目から、涙が溢れる。

「ダメだってば!

お母さんがいないと寂しいんだからね!

待ってて!!何か探してくるから!

まだ死んじゃダメだよ!!」


カーの中に入り、黒い板で薬を探した。

何かないか?何か!

特級ポーションを見つけた!

これを、10本購入してみる。

机の上にポーションが出てきた。

それを持って、再度お母さん狼の所へ!

「これなら、どう?特級ポーション!!」

お皿にポーションを出してみる。

ゆっくり飲み終わると、お母さん狼の体が、ポワ…と淡く光った。

「…あぁ… ありがとう…。

もう大丈夫だ。治ったようだ。

特級ポーション等、滅多にないはず。

そなた、何者だ?」

何者って言われても…。

僕はピンときて、

「僕は賢者だよ!」

言ってやった!

きっとこのお母さん狼は、こう言った方が納得すると思ったから…。

お母さん狼は、びっくりした顔をして、そして、優しく笑った。

「あぁ…。賢者とな…。

そなたが来るのを待ち侘びておった。

今回の賢者は小さくて、可愛いのぉ…。」

そこまで話してて、僕は瘴気の濃さが限界になってきた…。

……ごめん… 後は、限界内で話させて…


 カーへお母さん狼(ハクエンって言う名前なんだって。)を登録して、結界の中へ入ってもらう。

もちろん、僕はまだ怖かったから、カーの中に入り、窓越しに話す。

ハクエンは、結界内に入ると、

「あぁ…ここの空気は違うな…。

楽に息ができる…。」

と、ホッとした顔をして、横たわった。

あれ!まだ治ってないのかな?

「まだポーションあるよ?飲む?」

「いや…。後は体力が回復するのも待つしかない。

ポーションは要らぬ。ありがとう。」


 ハクエンから色々話を聞いた。元々、この森ではなく、遠くの森にいたんだけど、そこの森の瘴気が濃くなってきて、子供に良くないから、お産の為に瘴気の薄い所を探してたんたって。

でも、瘴気が薄く、人間もいない、安心してお産が出来そうな所がなかなか無くて、彷徨っていたら出産間近になって、この森に決めたんだって。

でも、この森の魔獣に襲われて、何とか倒したけど、深傷を負って、もう諦めていたらしい…。

そこで僕に会ったから、縁を感じて僕に子供を頼もうとしたんだって。

後、この狼、魔獣じゃなくて、聖獣って呼ばれているらしい。

ハクエンは大丈夫だけど、生まれてすぐの仔は瘴気に弱いからどうしようか困ってたんだって。

そこまで話ししてて、僕は、ハッと気が付いた!!

もう朝だ!!大変!!

僕がいないのが分かったら大騒ぎだ!

戻らなきゃ!!


 僕は、すぐ戻らなきゃいけない事、またすぐ来る事、そして、結界内にいれば魔獣は入ってこない事、カーの近くにいれば瘴気は浄化されて子供にも安心な事を話して、一旦、屋敷へ帰った。

 僕がいないことがばれて、屋敷は大騒ぎだった。



 本気て怒ったジルは恐かった……。




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