黄泉の小皿
掲載日:2025/10/04
花束は至り 雫は溶け 朱く燃ゆ
焦げた香り 白き時計 百合の香油
アカシアの木 降り頻る雨 耳に残る
烟る大地 歩みを止め 土を喰む
風の音ひとつ 鉢の底で ひび割れた器が笑う
かすれた声が 「まだだ」と言った
手を止める 雲が伸びる 蠅は西から来て帰る
土埃に噎せ 器か私
未だ満ちることなく 乾坤を注ぐ
冷えた指先 縁をなぞれば ひとひらの嘘が剥がれる
ざらり ひと口 黄泉の小皿に 月の光が降り積もる
腐った肉湧く蛆の白い
白い黄泉の小皿に桃
桃を投げつけ山
山を登りて滝
打たれて打たれて流れ清められ
水底の声 千年を眠る
藍の欠片 舌に触れれば
甘さひとつ 祈りひとつ
わたしはまだ 喉仏を隠せずにいる
羽音 響き 歌声 祝福
土から誰が恵むのか
乾き汚れ枯れ募り 杖が呪いを齎す
草 木 実 日
与えよ讃えん
影が根を噛む 骨に芽吹いて
咲けよ咲け 名を持たぬ花
黒曜の皿に落ちた雫は
ひと匙の夢か 赦しの果てか




