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始まり

今までブログに書いていたのをこちらで登録しなおしました。

これは、とりあえず完結しているので数日で投稿することに。


私、「アカネ」は今あの日の事を思い出している。


母がある日いなくなって3年たった頃だった。

私は32歳だった。

病気で亡くなったのだが「私」にとっては急にいなくなったように感じたのだ。

母は私にとって唯一の家族でそして友達であり知人であった。

亡くなる前に病床で母は言った。

「あなたがちゃんと困らないようにお金も残してあるし、私の亡くなった後の事はちゃんと手配してあるから」と。

確かに母が病院で息を引き取ったあとは、母に指示されたとおりに電話をかけ葬儀屋に来てもらい予め母が頼んでおいたのであろう家族だけ・・・ほぼ私だけでの葬儀が行われた。

唯一、ずっと交流がなかった母の叔父だと言う人だけは、かけつけてきてくれてその後の事を全部やってくれた。

これも母がどうやら頼んでおいたらしい。

そのオジサンが言った。

「さて、君は働いていなくもなくこれからどうするつもりだい?もう32歳だよね」と。


そう、私は働いた事がない。

私は

「ママがお金を残してくれているから大丈夫です」とオジサンに答えた。

オジサンは呆れた顔をして、立ち去って行った。

どうやらあまり姪である母とは仲が良くなかったようだ。


母は「あなたが困らないように」と言っていたが、3年たった今貯金はあと20万になった。

母は確かにお金をたくさん残しておいてくれた。

でも、3年という年月、母と暮らしていた頃のよう自分の好きな物を買い続け、食事は全部買ってきたもの・・・そして、一番金額が行ったのは「家」だった。

家は、祖父からの持ち家だった。

相続税などの事も母が仕訳けてくれていたのだが、きっと母は「その後」の事は考えなかったのだろう。

昨年、大きな台風が来て修理が必要となった。

どうしたらいいのかわからなかった時に、飛び込みで業者がやってきた。

築年数が古い家なので、あちこち修理する必要があると言っていた。

びっくりするほどの金額を請求された。

後で知ったが、その業者は良くなかったらしい、結局直ってなかったところがあり、別の業者に来てもらうことになった。

それで、かなりのお金がなくなってしまった。

でも、まだまだあると思っていた。


だから、好きな物を買い続けた。

働くというのは私の頭にはなかった。

だって、母が働かなくていいと言ったから。


私は極端に人付き合いが苦手で、友達がいない。

人が言うには「空気が読めない」らしい。

勉強は得意ではなく、運動も出来ない。

唯一の趣味は、キルト・パッチワークをする事。

これは、祖母が教えてくれた。

高校を卒業するとき、母が言った。

「アカネちゃんは働かなくていいわ。ママが働くから」


母は、私が3歳の時に父と離婚して実家に帰っていた。

私と違い勉強が出来た母は大学の非常勤講師をしていた。

収入はあまりなかったが、祖父の家で暮らし家賃もいらなくて、また祖父母がそこそこお金を持っていたらしく、裕福な暮らしだった。

祖父が亡くなるまでは一流企業の重役だった祖父の年金や貯金が結構あり、母自身もそこまで働かなくて良かった。

母もまた苦労知らずの人だった。

だから、人がずっと生きていくためにどのぐらいのお金がいるのかわからなかったのだろう。


自分の欲しい物はすべて買い、また私にも与えてくれた。

私の好きな少女漫画などは母がすべて発売日に買ってきてくれた。

私はそれが普通だと思っていた。

だから、学校での会話がかみ合ってなかった。

高校入学した頃の事だった。

教室で1人の同級生の女の子が

「今日発売のバッグ付きの雑誌欲しいんだけど、今月お小遣いピンチなのよね。」と言った。

私は不思議に思っていった。

「ママに買ってきてもらえばいいのに」


シーンとなった。

その子は、顔を奇妙に歪まして言った。

「あんたおかしいわ」と。

周りでクスクス言う笑い声も聞こえた。

「ママが買ってきてくれるからだって」

「ママー、ママー」


私たちは親子というより姉妹と言った方がいい関係だった。

全部学校であった事を話した。

母は憤って言ったものだ。

「そんな、いじめる子たちと無理して付き合わなくていいのよ。」と。

小学校の頃からそうだった。

母は、学校に苦情・・・今考えるとクレームを言いに行った。

私はその時までもクラスでかなり浮いていたけど、いない存在になり3年間を過ごすことになった。

高校生にもなるとみんな成長をして、いじめるより無視をする方が効率がいいようだ。

友達はとうとう出来なかった。

でも、帰ると「ママ」がいたので、別に気にならなかった。


今、振り返ると確かにおかしい。

でも、母と祖父母だけの「家族」というくくりの中で私の感覚は一般とずれていた。

それでも、祖母だけは私に世間の常識を教えようとしてれてたし、料理なども教えてくれようとした。

この頃の家事全般は祖母がしてくれていた。

ただ、料理は私が包丁を持つ事を母が激しく拒んだため(けがをしたらという事らしい)出来ない。

掃除と洗濯は祖母が教えてくれたので今なんとかなっている。

キルトは母が針やミシンが危ないと言ったが、祖母がなんとか説得してくれて私の「趣味」として母が「許してくれた」

その祖母も祖父が数年前に亡くなり、後を追うように亡くなった。

そして、祖母が亡くなった3年後に母が・・・。


あと通帳の金額が20万となった時にさすがの私もこのままでは駄目かもしれないと思った。

でも、今更どうすればいいのかわからない。

働くにしても私に一体何が出来るのだろう。

相談する相手もいない。

ぼんやりと考え、でもそういえばこの前見た布で欲しいのがあったなと思い出し、買いに行くことにした。

欲しい物は欲しい。


母は良く言っていた。

「アカネちゃんが私のすべてなの。いつもアカネちゃんの事を一番に思っているわ」と。

それならば、私がこうなるのがわからなかったのだろうか。


立ち上がった時にインターホンが鳴った。

出てみると若い男性が立っていた。


「どなたですか?」と。

するとインターホンから返って来たのは

「あなたの弟です」


目が飛び出そうなぐらいびっくりした。

開けようかどうか迷ったが、カメラ越しにとても線の細い男性の姿が見え恐る恐るドアを開けた。


「どういった事ですか?」と問うと

「あなたのお祖母さんから手紙を預かっています」と1通の封筒を差し出した。

「アカネちゃんへ」と書いてある筆跡は確かに祖母の手に似ている。


とりあえず男性を玄関に招き入れその場で手紙を開けた。


『アカネちゃんへ。

この手紙は、あなたのお母さんがもし万が一亡くなった時にあなたが一人になってしまうのを心配してあなたのお父さんに託しました。

実は、あなたの事をずっと心配されていてたまに連絡を取り合っていました。

あなたは、ずっとひどい父親だと聞かされていたでしょう。

確かに若かった時は未熟な事もあったかもしれませんが、それはあなたのお母さんにも言えることで、原因はお母さんにもかなりありました。

こちらに帰ってきてからのあの子は、あなたに固執し私から見ても歪んだ育て方をしていました。

でも、その事を言うとあの子がパニックになり手が付けられなくなり、そのままにしてしまった事をあなたに謝らないといけない。

私はいずれあなたが一人になってしまう事をずっと心配しています。

見ていると友達もなく、学校から帰ってくると母親とべったり。

このままではいけないと思いあなたのお父さんにアカネが一人になった時に手助けをしてやってほしいと頼むことにしました。

私も親族がいなくまたお祖父さんの親族とは疎遠です。

あなたが唯一頼れるのは実の父親だと思います。

あなたを守ってやれなかったお祖母さんを許してください。

そうそう、あなたには「タクミ」君という弟がいます。お母さんと分かれてお父さんが再婚して出来た子供さんです。祖母より』


読んであっけにとられている私に若い男性は言った。


「俺はタクミっていう。親父があんたのお母さんと離婚して、その後に再婚して出来た子だ。今、大学生だ。親父からこの手紙を預かった。この手紙の後の数年後からあんたのお祖母さんに連絡が取れなくなったと言っていた。その後にあんたのお袋さんが亡くなったと聞いたらしいが、親父はその頃から病気になって連絡が出来なくなった。親父も病の末にとうとうこの春になくなったんだ。あんたに残したお金と一緒に持ってきた」


私は「タクミ」から私名義の通帳と印鑑を受け取った。

そこには、そこそこの額の金額が入っていた。

「あんたの母親が養育費を受け取らなかったからずっと貯めていたらしい。」


私は正直少しほっとした。

何故ならお金がなくなりそうだと思っていたところだったから、父親が亡くなったと聞いたのに何故か笑みが浮かんだ。

私にとって父親とはいない存在だったから。

するとその途端にタクミの顔色がかわり、手が伸びて私が持っていた通帳を取り上げた。


「おっと!親父の心配していた通りだな。あんたこれ持っていても多分すぐに使ってしまう。俺は親父に頼まれたんだ。あんたを助けてやってほしいって」


そういって「タクミ」はにやりと笑った。

ブログの方は挿絵をいれているけど、まだ登録したてのなのでどうすればいいかわからず。

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