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社畜戦士  作者: 伊田彩
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羊の皮を被った悪魔

時計は17時45分を指そうとしていた


まだ周りの人間はデスクに向き合っている

ここで普通の仕事が終わった人間は帰り仕度を始める。

それは三流である。


理由は簡単だ。

残業を任される可能性があるからだ。


一流は帰宅の準備をもう既にしている。


今日はせっかく定時上がりができるというのになぜ残業というものをしなければならないのか。


本来決まった時間に働いて、仕事が終わったら帰るというのが普通であるのにも関わらず、家畜共は仕事が終わっている人間を見かけると、


「すみません。あの…この仕事が手間取ってて、期限までに終わらないので手伝ってもらえませんか?」


と声をかけてくる。

仕事はできないくせになぜ忙しそうなふりをしている人間を見極める能力だけはなぜか発達している。


家畜のくせにちょっと小賢しく人にものを頼んでくるからこちらもバレないように念入りな対策をする必要がある。


わざわざ、そんなめんどくさいことをするのは、もちろん定時上がりという社会人なら誰でも羨む最高の褒美を得るためである。

こっちは定時という締め切りのために全神経を向けて頑張っているのに、なぜ鈍足な家畜の仕事に手を貸さなければならないのだ。

意味が分からない。


俺は定時上がりというご褒美を得るための策をもう既に17時の段階で張り巡らせており、万全である。


あとは新規のExcelを立ち上げ、この前終わらせたデータの打ち込みを意味もなく、入れて、消してを繰り返し、仕事をやっている感を演出する。


俺はそれを『ゴッドレルム』と呼んでいる。

無から作り出し、それを破壊する。

それはまさしく神の領域に足を踏み入れているからである。


俺がゴッドレル厶を発動して皆の目を誤魔化していると、


隣の隣の席の困ったような雰囲気を漂わせながら羊みたいな顔をした社員が近づいてくるのが視界の端から見えた。


「まずい!!あの困った顔は誰か暇そうな人間を探している」


俺のゴッドレルムも火を噴き、キーボードを叩く速度も加速する。


まずいことに俺の方に近づいてきている。


「まずいな…これはアレも使うしかないな。」


俺はゴッドレルムに加えて、

さらに『フェイクストック』を使った。


フェイクストックとは、デスクの隅に積んである仕事で使った紙を何枚か取り出し、パソコンの側に置き、暗に仕事が溜まってて、大変であると周りにアピールする技である。


コレは強力なモンスターである役職付きクラスのしか使わない技なのにこんな小者に使ってしまった。


技を頻繁に使ってしまうとモンスターは耐性がついてしまい、簡単に看破するようになってしまうため技はできるだけ使わないのがベストだ。


よし!なんとか通り過ぎたが、まだ羊顔をした社員は暇そう人間を探して、オフィスを周回している。


また俺の後ろを通り過ぎようとしてきた時だった、


俺の肘が羊顔の社員に接触してしまったのだ。


やばい。これは直接会話が発生するからその中でそれとなく、仕事を頼んでくるパターンのやつだ…

俺は警戒しながら謝罪をしてきた羊顔した社員に大丈夫ですよと声を返した。


そうすると羊顔をした社員はそれとなく、


「今仕事を手伝ってくれる人を探しているんですが、中々見つからなくて…」


と含みのある言葉をかけてきた。


俺はこのあとに出てくる言葉を予想し、とっさにデスクに向いたが遅かった。


「明日までの期限の仕事があるんですが、どうやっても期限に間に合わなので手が空いていたら手伝ってもらえませんか?」


俺はモンスターに呪文の詠唱を許してしまった。


この呪文をかけられた人間は断ることができない。もちろんそれは手が空いているからではなく、個人的な性格の問題のせいである。


「はい!大丈夫ですよー

いつまでにやっておけばいいですか?」


「一応締め切りが明日までなので今日中までには終わらせたいです。」


チッ。お願いの中でも最悪中の最悪の明日期限の仕事のお願い。俺の肘に当たったのもわざとであったのではないかと疑ってしまう程の最悪のお願いだ。

羊の皮を被った悪魔め。

なぜこれが最悪なのかというと大抵明日締め切りまでの仕事を残す人間は、締め切りを考えて、スケジュールを組んでいないから期限ギリギリなのに仕事が多く残っているのだ。

そうすると間違いなく終電コースだ。。

お願いを了承した手前内容を聞いてから断る事等できるはずがない。


マジでむかつくむかつくむかつくむかつく。


「了解です!そしたら終電までに終わらせちゃいましょうか!」


「すみません!本当にありがとうございます!!!」


この悪魔が!

これが中世なら絶対教会に密告して火炙りの刑にしてやるのに。


必死に仕事に取り組んでいると、

19時20時21時22時と過ぎついに仕事が終わった。


「お疲れ様でした!!」


「今日は仕事手伝ってもらってありがとうございました!」


「いやー別に大丈夫だよ!!」


よしゃあ!!

ついに刑務所から14時間ぶりに脱出したぞ!!!


あの無害そうな羊みたいな顔した悪魔の策謀のせいで貴重な定時上がりを失ったが、今度こそは手に入れる。


コレは俺は社会の化け者たちがあの手この手で俺を会社に縛り付けようとしてくる中から必死に逃げる頭脳戦だ。


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