色が見えたよ!(昔はね)
今から〇十年前の話。
小さい頃から人や無機物の周りに色が見えていて、それが普通だと思ってすごしていた。
親にそれを伝えたかどうかは思い出せない。
ただ、小学校下校途中に電信柱にぶつかり、色で見えなかったのだと話したが理解されなかった時に初めて、皆見えている訳ではないというのに気が付いた。
今は大人だから分かるが、その時私が感じていた物は、間違いなくカルチャーショックというものだろう。
年齢がバレそうそうだが、当時はまだテレビ番組等で『オーラが見える』という人達は出ていなかった時代。子どもがそんなことを言っていたら、親も困惑したに違いない。
さて、当時私が通っていた習い事がある。その習い事の先生は、まさに見える人だった。
いったい何からその話しになったか記憶は定かではないが、私は先生が見えることを知り、先生も私が見えることを知った。
そしてなんと、そこに通っている人の中には、他にも見える人がいるというのだ。
大人になってからこんな話しを聞いたら、
「いやいや、詐欺だって」
となるだろう。実際そういう詐欺紛いは横行していると聞く。
だが見えるという他の子の中に、私の同級生もいた。そして、その子と答え合わせをすると、確かに見えているのだろうと確信した。
私とその子は色が見えていたが、他の子は明確に、
「先生の後ろにいる女の人、いつもニコニコしてるね」
というような発言をしていたと聞く。先生…怖かったろうな、と今だったら思うが、案外先生自身は怖くなかったかもしれない。というのも、
「そういう人がいると、なんだか周りにそういう人が集まって来ちゃうんだよね」
というような内容を子どもに言っていた人だ。先ほどから『というような』という言葉を多用しているが、何せ随分昔のこと。ニュアンスは覚えているが、一字一句は覚えていないので勘弁願いたい。
他にも、人の悪い所が黒く見え、それを巻き取るようにすると具合が悪い所が治るのだというような子もいた。
書きながら私自身が思っていることだが、なんともあやしい習い事である。
誤解を招かないように伝えると、習い事事態は全くそれらに関係ない、ごくごく普通の習い事だ。
その後、先生は辞められ、他の方へと引き継ぎをされた。
家庭の事情なのか何なのかは、当時子どもだった私にはさっぱり分からない。
当時、先生自身はとても楽しい人だったためとても残念に思っていたのは覚えている。
それから何年かしていくと、私は色が見えなくなり、別段不自由さも何も感じることなく生活していた。
『そういう人がいると周りに集まる』
という言葉を、まさか大人になってから思い出すことになるとは、当時の私はまだ思っていなかった。