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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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あった!オムライス!じゃなくてプッカ

 ーーさま、さちさま


「サチ様!身分証、出してくれや!」


「サチ様、身分証ですよ。分かりますか?」


「ふゆ」


 寝ぼけた頭で収納から身分証を出すと床に落ちる前に誰かが取っていった。


 サチは涎を垂らして、すぴすぴと現実と夢を行き来する。


「サチ様、お昼のごはんがありますから起きましょうね」


 優しい手が胸とお腹を撫でてくる。頭も撫でられる。サチの意識は覚醒に近づいた。でも心地いいから寝そうだ。矛盾した2つの感覚がサチの中を巡る。


「ふゆ、ふゆ」


「サチ様、今は夏も真っ盛りですよ。起きてください」


 今度はちょっと強めに身体を触られる。サチはうっすらと目を開けた。とろんとした目だ。


 ラズは思い切ってサチの瞼を無理矢理開ける。ラズにしては乱暴だ。


 サチは一気に入ってきた光に目を閉じようとするが、ラズが瞼を引っ張っているので、ぐるんと白目になる。

 ラズもヤバいと思ったのか手を離す。だが、さっきの一瞬でサチは目が覚めた。


「まぶちぃ」


「すみません。サチ様、大丈夫でしたか?」


「まぶちぃ」


 ラズに大切にされているのか、おもちゃにされたのか分からないところだ。


「サチ様、飯屋に着くぞ!大丈夫か〜!」


「多分、サチ様は起きてます。私が抱っこするので大丈夫です」


「サチ様、睡眠だけはしっかりとるのよねー」


「じゅるり」


 サチはよだれをすすった。垂れ流しは駄目なので。


 ぼーっと窓から外を見る。なんか白い格好の人が多い。太陽の照り返しが眩しい。


「ついたぞー!」


「サチ様、ベルトを外しますね」


「あい」


 ラズに抱っこされて車から降りる。結構注目されている。


「サチ様、車を収納にしまってください」


「あい」


 サチは車を収納にしまった。カイザーが先頭に立って飯屋に入る。


「らっしゃーい!何人だい!?」


「4人だ!」


「そこの椅子に座ってくれよ!」


「はいよー」


 サチは薄く開いた目で店の中を見回した。目つきの悪い幼児だ。そして、見た。黄色の塊を!サチの目がぱちっと開く。


「りゃず、ありぇ、ありぇ」


「え?何ですか?」


「ありぇ!たびぇみょにょ!」


 奇跡的にラズには通じた!


「食べものですか?あれはプッカですね。食べたいですか?」


「あい」


「じゃあ、プッカを頼みましょう」


 4人とも席に着く。


「サチ様はプッカで。私は店主のおすすめにします」


「ほお〜お。サチ様、目が高いな。俺もプッカにしようかな。特大プッカ。エレナは?」


「う〜ん。注文が分かれるとどっちも気になるわね」


「特大プッカ頼むから少し分けてやるよ」


「それなら店主のおすすめにしようかな」


「おーい!店員!」


「はい!注文ですか?」


「そうだ。プッカ1つと特大プッカ、店主のおすすめ2つだ」


「了解しました!お待ちください!」


 店員は足早に注文を告げに行った。サチは目をぱちぱちしている。


「サチ様、長いまつげがばさばさしてるわ。かわいい」


「サチ様がテイムしたスライムはどうしたよ?」


「サチ様が空間を作って入れてましたよ」


「ほ〜う、サチ様、便利だな」


 3人が雑談をしていると、店主のおすすめ料理が先に届いた。サチはお金を出す。


「は〜いぃ?赤ちゃん、ありがとうね」


 よしよしされた。いい人だ。

 

 店主のおすすめ料理は煮込み料理だ。真ん中に玉ねぎぐらいのキャベツみたいな野菜が、どーんと置いてある。


 サチはストローマグで麦茶を飲んで喉を潤した。とたんに、身体が水分を欲しがる。ごくごくと飲んでいると、プッカと特大プッカが席に届いた!サチはまたお金を払う。


「ありがとうね。かわい子ちゃん」


 また、撫でられた。それよりもオムライスだ!いや、プッカか。


 サチ専用のカトラリーを出して食べる。ふわふわ卵が贅沢だ。おいしい。


「サチ様、美味しいですか?」


「お、おいちい」


 口の中にまだごはんが入っていて上手くしゃべれなかった。


「サチ様がおいちいっていってるぜ。ほらエレナも食えよ」


「サチ様をからかわないの!一口もらうわね。もぐ。う〜ん!おいしいわぁ」


 みんなで美味しいって食べるのはいいよね。カイザーめ、今日は許さん!カイザーのオムライスはデカすぎるんじゃ!誰が食費を出してるとおもっとるんじゃ!いかん、からかわれた怒りが別の方向に行った。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだ。てか、本当に食べれるの?私の3倍くらいの大きさがあるよ?


 サチはまず自分が周りからどう見られているか知る必要がある。

 大人1人前のプッカが1歳児の前に置かれているのだ。はたから見ればサチこそが「えっ!本当に食べれるの!?」である。


 店員さんが勝手に動くカトラリーに目を剥いて歩いていった。ぶつかるよ、店員さん。



 この街は卵の流通がいいのかな?こんなにたっぷり卵が使えるなんて。


 あ!ラズが切り開いた野菜の中に鶏肉が入ってたみたいだ!鳥の飼育がきっと盛んなんだ!


 オムライス、プッカの中にもお肉が入ってた。美味しい。



 お腹が満足した一行はこの街を観光する事にした。


 まずはカイザーのいつものお酒だ。人前で飲まないが部屋で飲んでいるのだろうか?


 通りかかる人が半分くらい白い服を着ている。サチはそっちに目を取られる。

 ラズが気がついた。


「サチ様、中央都市が近くなってきているので、参拝しに行く人が多いのですよ。我々と同じ観光客ですね」


「みんにゃ、しりょいふくでしゅか?」


「神官にならって白い服を着るのですよ。サチ様もマントがちょっと違いますがお揃いです」


 そう言われてみれば私のマントはキラキラした白だけど、私もラズもエレナもカイザーも白い服だ。生地と刺繍とデザインの違いはあるが。私はマントをめくれば水色の服だけど。


 今までは不自由してなかったけど、別の服をくださいって創造神様に貢ぎ物をしてお願いした方がいいかもしれない。不壊に防汚がついている服は自分でも作れそうだけど、サイズ自動調整と着心地の良さ、創造神様から貰いたいよね。我儘かな?悪い神様じゃなさそうだから頼んだらくれそうだけど。


 A5ランクの神◯牛を沢山お供えしたらもらえないかなぁ。今日帰ったら試してみよう。

 1度だけ食べた本場の神◯ビーフ。こっちのアラタカラに来てからも1回食べた。みんなも食べたいって言うだろうな。今夜の食事は決まったな。何度も美味しいのが食べれるなんて、創造神様様だよ。



 酒屋に着いた。店の中に入る。なんか前の酒屋と違っておしゃれな雰囲気だな。

 お、カイザーが酒をマジックバッグから取り出した。あれは妖精の里のハンガー酒だ!店員さんが奥に走って行った。驚いただろうなぁ。


 あ、奥から店員さんと一緒に貫禄のあるオヤジさんが出てきた。何か手に持ってる。鑑定!あれは鑑定の魔道具かぁ。そんな物もあるんだな。さて、いくらで売れるか。


 なんか凄い真面目にやり取りしてる。これは駆け引きだね!


 お!握手した!話が纏まったらしい。お金を貰っている。大銀貨1枚がどれだけ化けたか。


 今からカイザーの買い物か。試飲させてもらっている。酒好きには試飲は堪らんだろうなぁ。

 私も店の中のお酒を鑑定しよう。


 いいお酒あるかな〜?今日は酒樽が光らんな。そんな日もあるか。私はカクテルが好きだったからなぁ。ガッツリした酒はキツイかも。


 でも、こうやっていろんな場所を旅すると新しい酒との出会いもあるんだろうな。酒屋の匂いは好きだ。木の匂い。


 あ、お客さんが入ってきた。隅っこに行こう。エレナが警護しやすいように移動する。


 店主らしき人が、さっそくハンガー酒を勧めてる。お客さんも乗り気だ。常連さんかな?試飲してから小樽に入れてもらっている。カイザーだいぶぼったな。


 お、カイザーも買う酒を決めたようだ。店員さんが小樽に詰め替えてくれている。沢山買うなぁ。まあ、今日しか出会えない酒もあるんだろうしな。

 支払いが終わって酒をマジックバッグに入れてからこっちに来た。


「いや〜、待たせてごめんな!ハンガー酒が大銀貨6枚で売れたぜ!いや〜嬉しい!また、シャーロにでもお願いして買って来てもらおうかな?」


 錬金術だ!錬金術がおきた!妖精の里産、凄い!



いいね、ありがとうございます!


木の匂いはいいですよね!

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