ギガンデスの被害 カルザ街へ行く
ーラズ視点ー
サチ様が窓から外に出て行った後、目の前から魔物の目玉が遠ざかったが、私達は車ごと宙に浮いていた。
魔物の首が落ちた事からサチ様が魔物を倒したと思ったその時だ!もう1匹の魔物が吼えたら横から凄い勢いで圧を感じた。身体が潰れそうだ!!車が飛ばされている!?
車が急停車した。カイザーもエレナも私もガガンと頭をぶつけた。カイザーとエレナに関しては白い大きく膨れた袋が眼前を塞いでいる。不思議だ。頭が痛い。
サチ様がもう1匹を倒されたのだろう、私達は道に降ろされた。脅威は去ったと見ていいだろう。
だが、サチ様が戻って来ない。何故だ?怪我でもされたか!?
私は慌ててベルトを取って、車から降りて外に出る。
サチ様がどこにもいない。サチ様がいない!
「カイザー!エレナ!サチ様がいらっしゃらない!!」
「ちょっと待て!これどうなってるんだ?」
「いやだ!息がしづらいわ!」
眼前の白い袋に手こずっていた。エレナを助ける。何とか出てこれたようだ。カイザーは自力で外に出た。
「サチ様がいないって、どういう事だ!?」
「見たままです!魔物は居なくなったので倒したのでしょうけど、サチ様だけいません!」
「どっかに飛ばされて気絶してるといけないから、この辺りの捜索でもするか!ラズはサチ様が戻ってくるかもしれないから車にいろよ!エレナ!行くぞ!」
「分かったわ!」
2人は森に入って行った。私は車に座る。ああ、サチ様、どうかご無事で!
待っている時間がとても長く感じる。サチ様、サチ様、考えるのはサチ様のことだけだ。
どれだけ時間が経ったか、カイザー達が戻ってきた!サチ様はいない。力が抜ける。
「ダメだ!この辺りにサチ様はいない。帰って来るのを待つぞ!本人の意思でここからいなくなったとしか思えねぇ。前科があるしな!」
「サチ様の意思で……」
ああ、あの時の事が思い出される。あれから、サチ様の寝起きが悪くなった。現実を拒否するようで、見ていて辛い。
サチ様、今回はちがいますよね?
私達は無言で待った。サチ様が帰って来ると信じて。時間が長い。早く流れろ。
カイザーの指示で昼食を食べる。今は砂を噛むような味しかしない。サチ様がいたら可愛く食べてくださっただろうに。
また、しばらく時間が経つと、いきなりサチ様が目の前に現れた!!
「サチ様!!」
私は堪らずサチ様を抱きしめた!ああ!帰って来てくださった!
「サチ様!サチ様!どれだけラズを心配させるのですか!行き先を言ってから出かけてください。その時はラズも行きますから」
「ごめんにゃしゃい。まもにょにおしょわれた、むりゃにいっていたにょ」
「魔物に襲われた村ですって!?ああ、サチ様、お辛かったでしょうに」
凄惨な現場を見たのでしょう。こんなに小さいのにいつも無理をなさって!次は寝つきが悪くなったらどうしましょう。
「だいじょうぶじゃないんでしゅ。むりゃはかいめつしてましたが、いきにょこりがいました。むかえにいきましゅ」
「サチ様、無事に帰って来たのは良かったんだけどよぉ。車に異常があって走れねぇのよ。どうにかなるか?」
サチ様が見ると能力を使ったのでしょう。たちまち直りました。あんな場所に袋が収納されていたとは驚きです。
車の中でお話ししたら、サチ様がお風呂を設置された街、カルザ街へ村人を運んでいくようです。村が壊滅しているなら大変ですからね。兵士を派遣しなくてはいけないし。
サチ様に戦闘中の車の中を心配されました。ちょっと頭を打っただけですよ。慌ててサチ様は私達の身体が健康になるように能力を使ってくださいました。なんて優しいのでしょう。
村に着きました。はて?壊滅したと教えてくださったのに、その影もありません。村人がいない以外には普通の村に思えます。
サチ様の誘導で生き残りの村人の元まで行きました。皆、力が抜けているようです。そしてサチ様の事を不思議がっています。
「サチ様はこれでも、創造神様の使徒様だ!無礼があってはならんぞ!」
カイザーが一喝します。そうです。サチ様は素晴らしいのです!
一様に村人の大人がサチ様を拝み出しました。サチ様の偉大さが分かりましたか。
サチ様が服をどこからともなく出して、村人に着替えを進めます。気がついていましたが、魔物に襲われたと言うことで失念しておりました。さすがサチ様です。優しい。
皆、着替え終わったら、車、確か、けいとらとサチ様が言っておられた車です。2台に乗っていくようです。
赤ちゃんを普段サチ様がお使いの席に乗せるようで、私がサチ様を抱っこする事になりました。子供と女性だけ車の中に乗せて男性2人はけいとらの後ろに乗るそうです。普段の車はカイザーが運転して、エレナはけいとらを運転するようです。適材適所ですね。
車を速く走らせて閉門前にはカルザ街に着きました。何と速いのでしょうか?おや?エレナ達がまだ到着していません。警備兵に言って門の隣の門番だけが使う、ドアをいつでも使えるようにはからってもらいました。サチ様の身分証様々です。
エレナ達も来ました。遅かったですね。カイザーが言うとエレナが怒ります。速度が出ない車だったようです。
ですが、結果的にカイザーが閉門までに着いたから街に入れたので、いいでしょう。
サチ様は赤ちゃんが気になるようです。警備兵に渡してあるので悪い扱いにはならないでしょう。
最後にサチ様は赤ちゃんにカウの乳を飲ませていました。なんと微笑ましい光景でしょうか。和みます。
被害者の証言は狩人の男がするそうです。サチ様も立ち会いを望みました。夜も遅いですのに。私達はサチ様の思うように付き合います。
初めの証言は凄惨なものです。あの村に起こったとは考えられません。ですが証言が進むにつれてサチ様が口をはさみます。壊滅していた村は、サチ様が直したのですか!?それは凄い!警備兵も驚いたように聞いています。試しに薪をぐしゃぐしゃに潰して警備兵が持ってきました。それをサチ様は驚く事に綺麗な薪に直しました。それで警備兵も納得したのでしょう。
後は明日になりますが、またここに、警備兵の詰所に来る事になりました。村人達は兵舎の空いている部屋に泊めてもらうそうです。
私達も宿をとりましょう。
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