妖精の里 12 守りのネックレスを売ろう
翌朝、サチはまたシャーロに起こされた心臓に悪い。心臓あるか分からないけど。寝起きの悪い私も悪いけど。
みんなで朝食を食べ終わって、まったりしている時に昨日の売り上げ金をみんなに渡した。今回は客単価が高かったから、結構な金額だよ。
「みんにゃもりゃってくだしゃい」
「ありがとう!サチ様!昨日の私が報われるわ!」
「ありがとう、サチ様」
「ありがとうございます、サチ様」
「また、貰えたわ!嬉しい!ありがとう!そういえばシャーロ、ママに聞いてみたんだけど森警備隊として働いていたわ!無職じゃなかったのよ!」
「今は俺達と一緒にいるけどいいのか?」
「商人の接待扱いらしいわ!ちゃんと監視しておけってことね!」
「俺等に言ったら意味ねぇだろ?」
「いいのよ!みんな悪い人じゃないって知ってるから!」
みんな照れた。シャーロ、ストレートすぎる。
「それとね!サチがくれた宝石のネックレス!警備隊のみんなが欲しいって言ってたってパパが言ってたの!どうにかなる?」
「しょうでしゅか。にゃりゃ、きょうはにぇっくりぇしゅにょ、はんばいでもしましょうか?」
「今の言葉は分かったわ!私みんなに言ってくる!」
飛び去ろうとしたシャーロをまたもガシッと掴むカイザー。またシャーロが「きゃっ!」と悲鳴をあげた。
「カイザーって破廉恥だわ!何するのよ!」
「今回も妖精の里全体に広めるんじゃないかと思ってな。警備隊だけか?」
「うちの家族もみんな欲しいって言ってたわ!他の妖精は知らないけど」
「ならあんまり話を広めるなよ。高価な品だからな。それとサチ様がまだ話があるらしいぜ」
「しゃーりょ、ちゃんとはにゃしをきいてくだしゃい」
「あら、私また早っちゃったのね!ごめんなさい、サチ」
「きをつけてくだしゃい」と返事して、詳細を詰める。
宝石は高い事、わざわざ私から買わなくても石の持ち込みでいい事、守りの結界の付与とネックレス作成の値段は金貨1枚であることを伝えるようにしてもらう。
「分かったわ!それで納得するように話してみる!じゃあ行ってくるわ!」
シャーロは部屋に飛び去って行った。シャーロは動きが素早い。行動力はあるが思慮がないので、人族に換算すれば20歳くらいと言うところかな。
さて、みんなで店に行って準備をしよう。礼拝堂でお参りしてから出かける。まぁ、もうお店の中だけど。おうちがお店の建物の中にあるからね。
私達がお店に出て来ると、外にいた妖精達がお店に並ぶ。いや、今日は品物が高いから買えるか分からないけど。並んでる妖精諸君。
なるべく急いで展示台を作り、今までに宝石店に行って値段がついた宝石を大小並べる。値札もね。トップにつける宝石を選んで貰う為だ。こんな事ならもっと宝石を宝石商に売っていればよかった。ステラさん元気かな?
立札に「悪意・害悪・突発な事故を防ぎます」と書く。作業値段も。
よし!準備が出来た。
「きにょうとおにゃじばしょについてくだしゃい」
私との付き合いが長くなってきた、みんなには通じたようだ。お店を開ける。エレナが人数制限をしてくれる。
「あら?今日は食べ物じゃないわ」
「そうね。宝石ね。とても綺麗」
「なになに、守りのネックレス?」
「あら!お金が足りないわ!」
「家族に伝えなくちゃ!」
大体の妖精は出て行った。残って宝石を見ている妖精もいるけど。
「このエメラルドって宝石で守りのネックレスを作れるかい?」
「大きさはどうします?」
「う〜ん、この大きさで」
「値段はミスリル貨1枚と大金貨5枚と金貨1枚になります」
ラズが貰ったお金を確認してくれる。大丈夫だ。
「おにゃまえをおしえてくだしゃい」
「お名前を教えてくれますか?」
「トミーズだ」
私はエメラルドの宝石で守りのネックレスを作る。勿論チェーンはミスリルだ。
出来た。裏には私の翼にトミーズさんの名前。ネックレスケースを作り、中に丁寧に入れる。ラズに出来上がりを渡す。
「こちらでよろしいですか?」
「おお!素晴らしい!ありがとうよ」
うきうきしながら最初のお客さんは帰って行った。大金持ってるなー。
大体のお客さんは値段を見てから、帰って行く。買わないか、お金を取りに戻ったんだろう。
石を持ち込みのお客さんが来た。あれは!アシュタリスクだ!
「石の持ち込みですね。加熱処理とカットはどうされますか?」
「加熱処理とカット?」
「こちらの宝石を見ていただければ分かると思いますが、加熱処理をすることにより、より宝石に透明度と輝きがでます。宝石の表面をカットすることにより煌めきが違います。石本来の輝きを求めるならそのままネックレスにしますが、加熱処理とカットをするともっと綺麗になりますよ」
「じゃあ、加熱処理とカットを頼む」
「石が多少小さくなりますが、ご了承ください」
「分かった」
持ち込みでカット希望のお客さんだ。アシュタリスクのこの石の大きさのカットか。ペアシェイプカットにするか。
想像、イメージ。加熱処理!ペアシェイプカット!
出来た出来た。綺麗だ。これを守りのネックレスにして、出来上がり。
ラズがお客さんにお金をもらっている。ラズにケースに入ったネックレスを渡す。
「こちらでよろしいですか?」
「おお!すげぇ!綺麗だ!」
満足して帰って行った。男の人ばかりだから警備隊かな?たまに女の人もいるけど。
小さい切れ端の石は貰っておこう!うふっ。内緒だよ。役得、役得。小さい宝石ばかり集めて指輪を作ってもいいな!綺麗だろうなぁ。
今日は客単価が高いから儲かる儲かる。
警備隊の男の人が30人、女性が15人くらい終わったら、一般のお客さんが来てくれた。宝石を買ってくれたり、持ち込みだったりいろいろだ。マジで儲かる。妖精は豪気だな。
お客さん1人にかける時間が長いから、緩やかに接客が進んでいく。シャーロも帰って来たし休憩を取ろう。
みんなで交代して休憩を取る。私もトイレに行かないとね。水分補給はお気に入りのストローマグで出来る。
来てくれるお客さんの中でも、たまにとっておきの宝石を持って来てくれる人がいる。勿論、宝石の複製を能力で作って収納にしまう。コレクションが増えて嬉しい!妖精の長生きがここで生きてくるなんて思いもしなかった。
たまに石そのままでネックレスにしたいって人がいるから、名前も入れずにネックレスにするだけで何も加工しなかった。守りのネックレスにはしたけどね。思い出とかあるんだろうなぁ。
みんな昼休憩もゆっくり取れた。まったり営業もいいものだ。私?私がいなくちゃネックレスが作れないから休憩なしだよ。お腹も空かないし。やっぱり食べなくてもいいんじゃない?この身体。食べるの好きだから食べるけど。
お客さんを入場制限してるシャーロの元に妖精が来た。何か話をしている。
シャーロが私の所に来た。お客さんのキリがいい所で接客をやめて、シャーロの話を聞く。
「サチ!妖精族と取引している商隊が来たそうなの!今日の営業が終わったら、車でシャーロの家の横に来てくれる?ここには商隊が泊まるから」
「わかりましゅた。おうちをしまって、しゃーりょにょいえまでいきましゅ」
「良かった!じゃあ営業終了後にね!」
接客を再開する。商隊が来たんだったら店の横の広場を使うよね。馬車止めに。
しばらく接客してると、馬車が数台来た。妖精達が嬉しがっている。いい人達が来たんだろうな。妖精が喜ぶ品を持った。
人族の男性がシャーロに挨拶している。シャーロは事情を説明しているようだ。こっちを見た。人族の男性が私を見て驚いた顔をした。翼を生やした幼児がカウンターにいたらねぇ?ラズが接客してるけど。エレナがサチの近くに来た。人族が来たから護衛のようだ。教会の服を見て、また驚いている。まあ、教会の人が商売してたら驚くか。
しばらくしたらシャーロから離れて行った。
16時くらいに妖精のお客さんはいなくなった。最後のお客さんが問題だ。
人族のシャーロに話しかけていた男性。
「この守りのネックレスを作ってもらえるんですか?」
ラズが私を見てきた。
「あにゃたほんにんがつかうなりゃ、つくってもいいでしゅよ」
男性が驚いた顔をして私を見て来た。ラズが私の言葉を言い直す。
「貴方、本人が使うなら作ってもいいそうです」
「売り物にしてはダメかい?」
「だめでしゅつくりましぇん」
「そうかい、なら私の分と妻と息子の分を頼むよ」
「宝石はどうなさいますか?」
「アシュタリスクはあるかい?それでお願いしたいのだが」
この人、アシュタリスクの妖精の里での価値を分かってるな。人族の街では高いけど。
「カットはどうしますか?」
「カットもしてくれるのかい?」
「はい。展示してある宝石のようになります」
展示してある宝石をじっと見る。
「これだ。この宝石のカットがいい」
ラウンドブリリアントカットか。ネックレスにするなら宝石のカラット数は大きく出来ないな。
今までの経験でラズが答える。
「3つ全てカットありで、石が小さくなりますが、よろしいですか?」
「仕事をしていれば小さい方が好ましい。それでいいです」
「お値段、大金貨9枚と金貨3枚いただきます」
ラズがお金をもらった。確認してお釣りを渡している。
「ネックレスを着ける方のお名前を教えてください」
「サタエル、ミーシャ、タスクだ」
さて、作るかな。一つあたり5ctの守りのネックレスだ。アシュタリスクで作りチェーンはミスリルで作る。それと聞いた名前を入れる。私の翼も入れる。
いでよ!アシュタリスクの守りのネックレス!チェーンはミスリルでね。
3つ出来た。ネックレスケースに入れてラズに渡す。
「ご確認をお願いします。裏に使う方の名前が書いてあります」
「おお!これは綺麗だ!これが大金貨9枚なんて安い!」
宝石を手に取って裏返して名前を確認している。チラリと私を見た。私というか翼をだ。
「これが君達のマークなんだね。名前が小さい。どうやって書いているんだ?分からん」
目線が商人だ。さすがは妖精と取引きする商隊の1人というところかな。
「素晴らしい物をありがとう!これで失礼するよ」
馬車に帰って行った。
さて、私達も準備するかな?
店の展示台を収納にしまって、店の奥に置いてあるおうちも収納にしまう。
みんなで車に乗り(商隊に凄く見られた)シャーロの案内でシャーロの家に行く。さすがについてくる妖精はもう少ない。まだいるのが凄いけど。
人族の商隊も来たし、旅に戻るかな?
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