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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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妖精の里 11 果物を売る

 サチは次の日の朝、ラズとシャーロに起こされた。


「サチ様、おはようございます。朝ですよ。起きてください」


「サチ!サチ!今日は何するの!」


 シャーロはサチ達が来てから毎日刺激的で楽しくて仕方がないらしい。寝起きぐらい静かにしてほしいものだ。


 サチがむずがるようにゴロゴロしたら、またもシャーロにガシッと身体を掴まれてしまった。


「サチ!朝よ!起きるのよ!」


「むー、むー、ねみゅいでちゅ」


「サチ!また赤ちゃん言葉がひどいわ!起きて!」


 サチの頭は起きているんだ。半分くらいは。


「うりゅちゃいでちゅ。しじゅかにちてくだちゃい」


 朝からこうもうるさくては文句もいいたくなる。寝起きで舌が回らないサチにシャーロが言う。


「サチ!何がいいたいか分からないくらい言葉が酷いわ!」


 酷いのは朝からうるさいシャーロである。

 そこにラズがまあまあ、と来てサチを抱っこして部屋を歩きまわる。サチは温かさと振動で眠くなるが、起きようとする意識が覚醒を促す。


「りゃず、りゃず」


「はい、ラズですよ。起きましょうサチ様」


 一度ベッドに降ろしてから靴を履かせて、また抱っこで部屋を出る。廊下に出ると空気が変わって、また覚醒を促される。


「ラズ!サチはいつも寝起きが悪いわね!」


「理由があるのですよ。デリケートな理由がね」


「サチは繊細なのね!寝起きが良くなるように手伝うわ!」


 サチの近くでされる会話にまた覚醒を促される。もうちょっとでサチは目を開けれそうだった。


 洗面所に着いた。サチはまだ1人で飛べそうにない。


 ラズはサチの背中をぽんぽんと叩いて起きるように言う。


「サチ様、洗面所に着きましたよ。顔を洗いましょう?」


「むー、むー、おきてりゅんでちゅ。めがあかにゃいでちゅ」


「困ったなぁ。シャーロ、サチ様が起きるようなことをしてください」


 ラズ無茶振りである。シャーロはそれに応えるが。


「サーチー!!あーさーよー!!起きなさーい!!」


 耳元でした大声にサチは目覚めた。びっくり起きである。


「おきまちた。かおをありゃいまちゅ」


 ラズがサチを抱っこから降ろすとサチは飛んで顔を洗って歯を磨いた。スッキリである。


「りゃず、しゃーりょ、おはよう」


「おはようございます、サチ様」


「おはよう!サチ!」


 みんなでダイニングに行く。エレナとカイザーは朝の鍛錬を済ませていた。


「えりぇにゃ、かいじゃー、おはようごじゃいましゅ」


「おはよう!サチ様!」


「おはよう、サチ様」


 食事を出して、みんなで食べる。シャーロの今日のおやつはゼリーである。ぷるぷるした物体にシャーロはちょっと引いていた。


「何これ?スライムみたいだわ!」


「りゃーりょ、こわいんでしゅか?」


「怖くなんてないわ!食べるわよ!」


 シャーロはちょびっとスプーンですくって口の中にいれる。


「面白い食感だわ!これは美味しいのよ!」


「シャーロ、スライム食べるなよ」


「食べないわ!ゼリーだけ食べるのよ!」


 カイザーに揶揄われるが、ゼリーの美味しさに目覚めたシャーロは動じない。スプーンの上でゼリーのぷるぷるを楽しんで食べる。


「それで、サチ様。今日は何をするの?」


「もぐもぐもぐー」


「食べてる時に話しかけて悪かったわ。食べ終わってからね」


 そういうことになった。さちのお口は小さいので。



「きょうは、くだもにょをうりましゅ!」


 ドヤ顔でサチは言った。エレナとカイザーは、うへーっとした顔をした。


「サチ様よお、食べ物はやめようぜ」


「そうよ。疲れるわ」


「あら!シャーロ賛成よ!美味しそうだわ!」


 サチは果物の食品サンプルを出し、値段を教えて言った。


 ラズが実際の果物を剥いてくれる。全員で試食会をした。う〜んと唸る。おいしいんだが、おいしすぎるのが問題だ。


「ちょっと、果物の種類が多すぎるわ!もう少し少なくしましょう。あと値段はもう少し高くてもいいわ!美味しいから!」


 審議の結果、桃、葡萄、梨、メロンを売ることにした。数量限定はしたかったが、サチが能力で出すだけなのでしないことにした。

 果物の食品サンプルは店外に値札と置いて、お客さんにあらかじめ選んでもらうことにした。


「シャーロ宣伝してくるわ!どれも美味しいもの!」


 カイザーが素早くシャーロの飛んでいる足を掴んだ。シャーロは「きゃ!」と言いながら恥じらった。


「レディの足を掴むなんて酷いわ!破廉恥よ!」


「それは悪かったなあ。だが、宣伝は里中にするんじゃないぞ。ほどほどに宣伝するんだ」


「それじゃあ買えない妖精が可哀想じゃない!こんなに美味しいのに!」


 なんか凄いまともな理由を言っている気がするが、グッと我慢して念を押す。


「2日前の盛況ぶりを忘れたか?またあれはごめんだぞ?」


「ほ、ほどほどにするわ!うちと仲が良い人にだけ教えてくるわ!」


「よーし、それでいい。行ってこい」


 シャーロは部屋に飛んで行った。家から宣伝するんだろう。


「じゃあぼちぼちと用意をしようか」


「賛成!」


「いきましょう。サチ様」


「はい!」


 みんな店に出る。車に群がっている妖精と今日は何かしないか偵察にきていた妖精が飛び上がった。サチ達の動きを見て、今日はお店が開店すると!


 わくわくともう並んでいる。早すぎである。


「サチ様、ちゃっちゃと品物置こうぜ。あと店内に入る人数制限もした方がいいな」


「はいはーい!私それするわ!」


「任せた。俺は列の整理するわ。サチ様持ち運び出来る飲み物くれ」


「はい、かいじゃー」


 サチはペットボトルを渡した。暑い夏に負けないドリンクである。


 サチは店外に飛んでいき、机をだして果物の食品サンプルを並べて値札をつけた。いろめきたつ妖精達。「今日も美味しそうだわ!」と。


 サチは箱単位で果物を作って大量に並べていった。ラズがお会計で開店である!


「いりゃっしゃいましぇー!」


 妖精達は漂う甘い匂いに息を吸い込む。これは当たりだ!


「今日は何を買っていいの!?」


「きょうはくだもにょをうっていましゅ。しぇいげんはありましぇん」


「まあ、可愛い。人族の赤ちゃんね!偉いわねー」


「私、全種類欲しいわ!甘いのよね!箱で買ってもいい?」


 妖精達の声を聞いてラズはカウンターから出て来た。お会計は商品の近くでした方がいいだろうと。


 「皮を剥いて食べてください」とか「足が早いから早く食べてください」とか注意をする。それでも妖精の奥様達はマジックバッグに買った果物を大量に入れる。

 妖精の生活の知恵で時間停止のマジックバッグは何処の家庭にも1つは持っている。それを知らないのが教会組の今日の敗因だ。もう負けは決まっている。


 ラズとサチは大忙しだ。店内に入店制限をかけていても!

 エレナは外だが涼しい顔だ。お客さんが出て来たら1人ずつ店内に入れるのと商品説明だけなので、あまり動いてない。

 伸びていく列にぞっとしているが。


 相変わらずカイザーは暑い男だ。こちらも伸びていく列にぞっとしている。カイザーに飛び掛かる子供もいるし。


 おいおい、シャーロ。最低限の宣伝なんだよな?と思いながら。


 妖精の里は広いが長寿ゆえにみんな顔見知りだ。教会組は妖精の情報網を甘くみていた。スイーツ店の再来である。


「私、箱で2つ欲しいわ、全種類ね!」


「私は全種類箱で1つずつ頂戴!」


「はいはい、お一人ずつ計算しますので」


 ラズ、大忙しである。みんな時間停止のマジックバッグを持っているから、ちょっと値段が高くても大量買いだ。

 サチは1箱で個数が変わらないように出している。全部一度は食べて美味しいと思った品種を出しているので、店内は甘い匂いだ。確かに美味しいはず!と期待を抱かせるには十分の。


 シャーロが帰ってきて、サチに聞く。


「サチ!私は何したらいい!?」


「えりぇにゃとかわってくだしゃい!えりぇにゃをかいけいに!」


「分かったわ!」


 哀れエレナ。前回のお会計の早さを見込まれてしまった。忙しいのは確実だ!


 シャーロと変わったエレナはどんよりしている。だが、仕事だ。気合いを入れなくては。


 この選択、実はヤバかったのである。シャーロが入り口でこれはどれだけ美味しかったか熱弁を始めたからだ。奥様方の期待は高まる。


 種を取れた果物は植物魔法の使い手によって成長させられ、妖精の里で普通に食べられるようになるのであった。


 そんな事今は知らない。オリジナルの果物を、初めて食べる果物を買うのに妖精達は一生懸命なのだ。売り切れがないのが救いだが、妖精達は知らない。人族の持って来る物は売り切れるのが普通だからだ。買える時に買う!これ鉄則である。


 並んでいる妖精もやきもきしちゃう。買った妖精達が嬉しそうに帰っていくからだ。暴動は起きないが、ちょっと焦りはある。


 サチは能力で出していくだけだが、出したそばから売れちゃう。ちょっと休みをください。ラズもエレナも同じ思いだ。願いは叶えられない。


 今日もお昼は交代で食べた。10時の頃に妖精達も食事をするから列から妖精が減ったが、妖精がいなくなることはなかった。昼食から帰って来た妖精がまた列を作ったからだ。うへぇーである。


 シャーロの口数も大分減った。奥様方からの質問に答えるだけだ。シャーロの元気も減るのである。ちょっとは売り上げに反映された。


 今日は16時頃にお客様を捌き切った。教会組勝利である。妖精の里の家庭では今日買った果物が食卓に上がるだろう。


 店を閉めて、飲み物を飲んで、おうちでお風呂に入ってから、みんなぐでぇとした。お風呂場前のソファでカウの乳を飲んでいる。


 男性陣はサチ風呂に入って回復しているが、女性のエレナとシャーロが回復していない。


「サチ様、今日のごはんは力が出る物を食べさせて頂戴」


「う〜〜ん。やきにくはどうでしゅか?おいしいでしゅよ?」


「焼肉。焼肉ね。確かに精がつきそうだわ。それにしましょう」


「じゃあ、にわでじゅんびしてきましゅ」


 サチはバーベキューコンロと炭を用意して火をつける。大きい机を出して数回しか食べたことのない、家族で1晩5万円ほどした焼肉の肉を並べていく。それと1回だけ食べた、某県のぞうの国近くの焼肉屋の肉も出す。完全予約制の店だ。とてもおいしかった。


 サチサイトで美味しそうな肉も買い、贅沢に神◯牛も用意した。これはレアで食べれるくらいのA5ランクの肉だ。これの焼きだけは繊細なラズに任せないと美味しく焼けない。とサチは思っている。

 野菜も準備して、みんなを呼びに行った。


 庭に来たみんなは机に並ぶ肉にテンションが上がる!なんて美味しそうな肉か!


 先にラズにA5ランクの肉を焼いてもらう。手先の器用な男だ。焼き終わった肉からカットしてお皿に盛り付けて、みんなに渡していく。全員分焼けるのを待ってくれている。みんな優しい。


 お祈りしてから食べる。口の中でとろける肉にサチ以外の全員が驚いた!凄く味わって食べている。


 みんな食べ終わって残念そうな顔をしているが、脂たっぷりの肉は胸焼けするので足りないくらいが丁度いい。机の上の肉を各人焼き出す。勿論、焼き肉のタレは準備している。


 お風呂に入ったみんなは焼肉臭くなりながらも美味しく食べた。焼肉をすると元気になる。これ心理なり。


 サチは肉を一口サイズに切って楽しんだ。特別にカイザーに生ビールのジョッキをあげたら「ひょー!」と喜ばれた。初めて飲むお酒だったらしい。すぐ飲んでしまったが。日本酒もねだられたので、ちょっと有名なお酒を瓶で出してあげた。ちょびちょび飲んでいた。お酒は酔うからね。


 楽しい夜だった。みんなぶっ倒れるように寝たけど。



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