妖精の里 10 サチ達、寿司を食べる
お昼になった。妖精の列は途切れない。サチは1人ずつ食事休憩をすることにした。
まずはラズだ。呼びよせて、おにぎりを具材入りで5つ出す。ついでにお茶も。ラズはありがたく奥に引っ込んだ。
次はエレナとラズが交代だ。エレナにもおにぎり5個とお茶を渡す。よろよろとおうちの中に入っていった。
スッキリしたエレナはカイザーと交代する。エレナは賢かった。サチから持ち運び出来るドリンクを貰っていたのだ。
カイザーが水分の抜けた顔で帰って来た。おにぎりにサンドイッチをつけてあげる。もちろんお茶も。
カイザーもよろよろとおうちに入っていった。
最後はシャーロだ!カイザーと交代する。シャーロのいつもの元気が無い。サンドイッチにカットフルーツの盛り合わせを出して渡すと、目が輝いておうちに入っていった。
サチは猛烈にトイレに行きたかった。聡いラズがサチの異常に気がつく。
「お客様、少々在庫を持って参りますので、そのままお待ちください」
そう言われれば客も待つ。
ラズはサチをキャッチして店の奥に行く。
こそっ「サチ様、どうされました!?」
こそっ「といれしたいでしゅ」
こそっ「服を緩めますので足元におまるを出してしてください」
こそっ「わかりましゅた」
2人で連携してサチのトイレを済ませる。手を綺麗にしてから店に戻った。
「お客様、お待たせいたしました。販売を再開します」
待たされた妖精は不機嫌になることなく注文してくれた。サチは心なしか大きめにパフェを作った。
列は暗くなる頃に並んでいたお客様達が夕飯の為に散っていき、営業の終了を迎えた。
サチ達は戸締りをすると、全員ゾンビのようになり、礼拝堂に倒れ込んだ。シャーロもだ。みんな動けない。
その内ヨロヨロとみんな起き上がった。
「サチ様、今度、店やる時は食べ物系はやめようぜ」
「ちょっとかんがえてみましゅ」
「今日は美味しい物が食べたいわ!サチ様、お願い!」
サチはうんと頷いてみんなにお茶を振舞ってから特上寿司の盛り合わせをバーンと大量に出した。回らないお寿司だ。小さい頃はこれが主流だった。いつの間にやら回るお寿司が猛威を振るったが。
なんだか豪華な見た目に、全員がお寿司に釘づけになる。サチが食べ方を披露すると、みんな戸惑いなく食べ出した。サチが出す物にハズレはないのだ!!みんな手づかみだ!
「うほっ!うまい!何だこれは!?」
「魚よ!生よ!美味しいわ!」
「魚ぁ?冗談だろ?この内陸で……あ、サチ様だった」
「これが魚なのね!シャーロ初めて食べたわ!おいしい!」
「上品な味です。サチ様の世界には素晴らしい食べ物が多いですね」
「ひしゃしぶりでおいしいでしゅ。ぶりだけに」
サチ渾身のギャグは誰にも伝わらなかった。日本で言っていても寒気がしただろう。周りが。
礼拝堂での夕食は続く。神像達が心なしか羨ましそうに見える。
サチは目を擦った。いつもの神像だ。礼拝堂で食事をしたやましさがそう見せたのだろうか?賑やかでいいと思うのだが。
その時祭壇が目に入った。なんとなく鑑定してみた。
ー祭壇ー
神の住む天界にたまに繋がる。何かお供えするといいかも。
サチはそっと特上寿司8人前を祭壇に出してみた。すっと景色にとけ込むように消えていった。天界に繋がったのかな?やっぱり神様もお寿司が食べたかった?
みんなの元に戻った。みんないろんな味がするお寿司に夢中だ。サチも仲間に入る。大トロがいいんだ。大トロが。みんなも感動して食べている。
明石のタイが美味しいんだよ!ぶりっとした身で。昔に一度だけ食べたことがある。能力で出してみる。人数分だ。みんな私を見ている。醤油をちょんちょんとつけて食べる。おいひー!!これだよ!これ!一度しか食べれなかったけど覚えてたんだ!
私の顔を見てみんなも食べると噛み締めるような顔をした。感動するよね!
はまちも好き。生タコも好き。美味しくいただく。タコは言わぬが花かな?
みんなお腹いっぱいになったら、気力が湧いてきたみたい。お風呂に入ろう。ラズに抱っこで連れて行ってもらう。
「サチは女湯に入らないの?」
シャーロが不思議そうに言う。私はうんと頷いた。
「そうね!サチは赤ちゃんだものね!」
「あかちゃんじゃにゃいよ!ようじだよ!」
「そんなに違いがないわ!じゃあね!サチ!」
言い逃げしたー!赤ちゃんじゃないもん!幼児です!
カイザーもラズも疲れていたのか、ささっと身体を洗うと湯船に浸かり「あーーっ」と声を出した。今日はカイザーにもサチエキスの入った風呂を提供しよう。いつもは逃げるからね。
ラズと隣り合って湯船に浸かる。今日はお昼寝しなかったから眠くなる。
ラズに抱っこされて露天風呂に入る。うーんここも気持ちがいい。カイザーも来た。まったりと浸かる。
ラズに抱っこされてお風呂から上がる。拭き拭きしてもらって服も着せてもらったら頭を乾かす。いーい気持ち。
男湯から出るとソファには誰もいなかった。3人で座ってカウの乳を冷たくして飲む。ぷはぁ!これ一杯!
飲んでるとエレナとシャーロが出て来た。カウの乳を注いでコップをあげると美味しそうに飲む。
私は今日の売り上げを出して5人で割る。それぞれの前に置いた。
みんな呆然とした顔をしている。少なかった?客単価が安かったからね。いっぱいお客さん来てくれたけど。
「みんにゃでもうけたおかにぇでしゅ。もりゃってくだしゃい」
「えっ!貰っていいのか?」
「いいでしゅ。もりゃってくだしゃい」
「やった!ありがとうサチ様!」
「シャーロ、自分でお金を儲けたのって初めて!」
「サチ様ありがとうございます」
「シャーロちゃん、初めてのお給料ってどうやって暮らしてたの?」
「家族が働いてくれてるから食べるのは困らないでしょ?服も買ってくれるし、毎日森を散歩して危険があったりしたら他の妖精達に知らせてたわ!それと、今取引きしてる人族を連れて来たのも私なのよ!」
「警備でしょ?ちゃんと働いてるじゃない。ママに聞いた方がいいかもよ?」
「え!シャーロ、仕事してた?」
「してると思うけど、聞いてる限りじゃ」
「ママとパパに聞いてくるわ!じゃあね!また明日!」
「おやしゅみ、しゃーりょ」
「おやすみ!みんな!」
シャーロが帰ったら賑やかさが消えた。
「サチ様、明日はどうするの?」
「きょうつかりぇたかりゃ、おやしゅみにしましゅ?」
「お休み!?やった!のんびりとしようかな?出かけようかな?」
「サチ様はどうするんだ?まあ、この里に護衛は必要ないだろうがよ」
みんな私の答えを待っている。んー、どうしようかな?村長の所でも行こうかな?
「そんちょにょとこりょにいきましゅ」
「村長ですか。サチ様の知り合いに村長がいたとは知りませんでした。では私も行きます」
「りゃずもやしゅんでくだしゃい」
「サチ様の行く所にラズ有りです」
「危険はないのか?」
「きけんはありましぇん」
「そうか。なら俺もゆっくりするかな」
そう言うことになった。
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