妖精の幻の宝石
商業ギルドを出た後はカイザーの物言いたげな視線を感じた。
「かいじゃーにゃんでしゅか」
「あー、その、な?商業ギルドで出した酒が飲みたいな、なんて」
「いいでしゅよ。おうちにかえったりゃわたしましゅ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「サチ様、甘ーい。カイザーは安酒でいいのよ?」
「エレナ!おまえ、サチ様の気が変わったらどうする!?」
「どうもしないわよー。安酒になるだけじゃない」
「けんかしにゃいで」
サチが2人に注意する。
「はい、サチ様」
「すみません、サチ様」
喧嘩するほど仲が良いって言うけど距離感が近くなったかなー?
「サチ様、このあとはどうしますか?」
「ほうしぇきやにいきたいでしゅ」
「それではこのまま進みましょうか」
前回は満足するまで宝石が見れなかった。今回はよく見るのだ。
宝石屋は商業ギルドに近い場所にあった。多分一等地という場所だろう。
警備員が入り口に2人も立っている。これは期待が高まる。
教会の服を着ているので扉をさっと開けてくれた。中に入ると、御用聞きの女性がいた。
「いらっしゃいませ。宝石の購入でしょうか?」
「ほうしぇきを、みしぇてくだしゃい」
「は、はい分かりました。商談スペースにお座りください」
女性は幼いサチが答えて動揺した。
店内は机とソファが何席かあり、半個室になっている。落ち着いて宝石を見れそうだ。他の客は1組いるらしい。
ラズとソファに座って、エレナとカイザーは後ろに立った。
御用聞きのお姉さんがお茶を持ってきてくれた。
「ごゆっくりお過ごしください」
「ありがとうごじゃいましゅ」
「いえいえ、それでは失礼いたします」
綺麗な姿勢で去って行った。
ラズにお茶を飲ませてもらう。スッキリするお茶だ。初めて飲むお茶。ごくごく飲める。
「もう、いいでしゅ」
ラズも用意されたお茶に口をつけた。味わって飲んでいる。高いお茶なのかな?
宝石ケースを抱えた女性が来た。綺麗な女性だ。
「ようこそ当店にいらっしゃいました。担当のカレンと申します。よろしくお願いします」
ソファに腰掛け、ケースを開けると、宝石がこれでもかと入っていた。サチの目が輝く。
「どうぞ、ご覧になってください」
初めて見る宝石を探す。複製して収納にしまう。目には鑑定を発動してある。
やっぱりカットが残念だな。私なら違うカットにするのに。
無茶振りである。この時代には精一杯のカットなのだ。職人の手作業である。まあ、職人の技術もまだまだ未熟なのだが。
サチは心ゆくまで宝石を見た。
「べつにょほうしぇきをみしぇてくだしゃい」
女性は驚いた!何故か赤子が宝石を机に身を乗り上げて見ていたと思ったら話したのだ!
「は、は、は、は、い、た、ただ今お待ちいたします!」
女性は早足でケースを持って去って行った。凄い動揺していた。何かあったんだろうか?
サチは自分が異常だと言う事実はすっかりと忘れていた。
のんきである。
女性が別のケースを抱えて持ってきた。
「こちら、珍しいと評判の宝石を集めてあります」
ケースが開く。サチの顔が輝いた。大粒の物ばかりだ!
手の中で創造しては収納にしまう。あっ!珍しい宝石発見!鑑定!
ー妖精の宝石アシュタリスクー
妖精の住む里に出来る宝石。幻の宝石とも呼ばれている。妖精族の力の塊。値段ミスリル貨25枚。
おお!素晴らしい宝石だ!薄いピンクオレンジが神秘的だ。
「こりぇくだしゃい!」
「ええ!本気ですか!ミスリル貨25枚と大金貨2枚ですよ!」
サチはお金を用意して出す。待てないので机の上だ。
女性はお金を数えた。足りてる。呆然としたが、そこはプロ、すぐに我を取り戻した。
「お待ち下さいませ。すぐに鑑定書を用意します!」
ケースを抱えて去った。サチはオリジナルを買えて満足だ。
本当は複製出来るが、サチのこだわりでオリジナルを購入した。妖精の里かぁ、どんなところだろうな。
「こんな値段納得できるか!この野郎!」
「ぎゃっ!」
エレナとカイザーがサッと前に出た。
別の商談スペースにいた男が宝石ケースを抱えて店を出ようとしている!強盗だ!
カイザーが素早く飛び出し、男が片手で持っている剣を弾き飛ばした!そして、素早く取り押さえる。
一瞬の出来事だった。
他の店員が悲鳴をあげる!ラズとサチは人が集まってきた商談スペースを見る。
床に赤い血溜まりが出来ている。
司祭の服を着ているラズが近くに行く。
「そこをどいてください!私は司祭です!」
さっと人がどいた。胸元を切られた女性がいる。意識がない!サチも飛んで見に行く。もうすぐで女性の命の時間が無くなる。
〈怪我よ治れ!健康になれ!〉
すーっと怪我が治った。女性の青かった顔色が血色の良い顔になった。
「おお、腕の良い司祭様!何と言う巡り合わせか!店の従業員を助けてくれて感謝いたします。お礼はいかほどお包みすればよろしいでしょうか?」
ラズは治療してないから内心動揺していたが、サチの力だろうと毅然と振舞った。
「貴方のお心のままに。それでは私は席に戻ります」
飛んでいるサチをキャッチして、何気なく席に向かう。背中が誤魔化している。子供は飛んでいませんよと。
周りの人達は感動した。瀕死の同僚を助けて偉ぶらない司祭に。店主がお礼を用意する。
「失礼します。こちらは当店を象徴する宝石でキレイラと申します。こちらを治療の対価とさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがたくいただきます。神のご加護がありますように」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます。それでは失礼いたします」
ラズは貰った宝石をサチにあげた。サチはきらきらと黄色に輝く宝石に夢中だ。色の加減で金色にも見える。綺麗だ。小粒だが。サチはそれでも良いのだ。宝石にはいろんな魅力がある。それを楽しめればいい。
エレナはカイザーが犯人を取り押さえているので、1人で護衛だ。気を張っている。ラズとサチは呑気なものだが。
ようやく警備隊が来て店主が従業員から聞いた話をしている。捕らえられた男は連行された。カイザーが帰ってきた。
「疲れたぜ。サチ様、お茶をくれ」
「サチ様、私も」
「いいでしゅよ」
サチはフルーティーなお茶を出した。カイザーとエレナに渡す。
「おお、味は普通だが、香りがいいな」
「そうね。おしゃれだわ」
2人共満足してくれたようだ。独身の時に一時期紅茶にハマった。ブレンド茶も好んで飲んでいたのだ。種類がたくさんあって、その度に店員のおススメを買った。懐かしい。スノーなんちゃらってお茶があって甘くて美味しかったなぁ。
サチはスッキリしたお茶をラズに飲ませてもらう。宝石にもいろんな魅力があるように、お茶にもいろんな魅力がある。それが良い。
慌ただしい店内でやっと女性の店員が来た。手には化粧箱を持っている。
「大変長らくお待たせいたしました。こちらが購入された、アシュタリスクとなっております。お確かめください」
サチは鑑定で見る。本物だ。
「箱の中に鑑定書が入っていますので、無くさないようにお待ちください。本日はありがとうございました」
深々とお辞儀をしてくれる。これは犯人を捕まえ、同僚の傷を治したお礼でもあるのだろう。
「ありがとうごじゃいましゅた」
「いえ、また、お越しくださいませ」
店員が出口まで誘導してくれる。扉を開けて待っていてくれた。宝石店を出る。サチは心ゆくまで買った宝石を堪能したかった。
「やどをとりましゅ」
「お任せください」
カイザーが通りすがりのこの街の住人だと思われる人に声を掛けている。
良い宿の情報が聞けたようで笑顔で帰って来た。
「ちょっとボロいが食事が美味しい宿があるらしい。そこでいいか?」
「いいでしゅ。いきましゅ」
サチはラズに抱っこされているのに、あたかも自分が率先して行くんだと言わんばかりだ。
カイザーは笑いながら先導した。
仲間の為に。
いいね、ありがとうございます!
ブランド茶っていろいろあって楽しいですよね!




