商業ギルドで商品鑑定 1
商業ギルドに着いて中に入る。空いている受付に行って商業ギルド証を出す。受付嬢が話しかけてきた。
「今日のご要件は何でしょうか?」
「品物の価値が知りたい。それか販売ですね」
「受付いたします。2階にある10番のお部屋でお待ちください」
商業ギルドの階段を登って2階に行くと番号が振られた部屋があった。10番の部屋を探して入る。
部屋の中は誰もいない。
魔道具の照明を付けて部屋に入りラズと私がソファに腰掛ける。エレナとカイザーはソファの後ろだ。
見せる商品を作る。まずはあの酒屋さんに渡した鞄に似たようなマジックバッグを作る。時間停止に不壊、容量はお店くらい。酒屋さんだから結構広かった。樽がそこら中に置いてあるんだもん。鞄はワイバーンの皮で。何が良いかわからないからね。
それと『特殊な温泉の湯』の容器を複製して温泉の湯を入れる。蓋をしめてこれもよし!
あとはフェイスタオル。安物とブランド物。安物は1年使うとヨレるけど、ブランド品は何年も使える。実際使ったことあるから違いが分かる。バー◯リーなんて10年はかるく使えると思ったね。それくらい丈夫。
他には鏡かな?化粧で使えるほどの鏡の大きさ。後は可愛い持ち運び鏡も。上下がマグネットでピッタリ張り付くの。
あっ!あとは村長にあげた綿100%の反物。色はバリエーションを揃えよう。
あとは櫛!豚の体毛を使った艶が良くなる櫛。いくらで売れるかな〜。
あ!あと、樽酒の松◯梅!これ升で塩を乗せて飲むとお酒が甘くなるの!飲んだ時20歳そこそこだったけど、こんなに美味しいんだと感心したことがある。唇にちょっと塩をつけて日本酒を飲むとキリッとしたお酒が口の中で甘くなる。樽と升の香りも良いんだー。
さて、担当者はまだ来ない。おやつでも食べよう。
無添加アイスクリームをワッフルコーンに乗せて夢の3段重ね!トリプルだ!バニラとチョコとイチゴになっておりまーす。私が持ってると重いから、ラズとエレナとカイザーに素早く渡す。
私はバニラのシングルコーンで。ちょびちょび食べますよ。おいしー!こっちに氷菓子って無いんだよね。今、真夏だからピッタリ!部屋の空気をひんやりしておこう。
部屋がノックされた。
ヤベ。アイス食べ始めたところなのに。
「はーい」
とりあえず返事をすると中に入ってくる担当者2人。
何か食べてる私達を見て固まっちゃった。
仕方ない。デザートの押し売りをしよう。コーン立てを創造して私の食べかけをさす。
トリプルコーンを創造して担当者に突き出す。
「はい!おじちゃん!」
「あ、え?あ、ありがとう」
「たべにゃいとおちりゅよ」
担当のおじさんに注意してから、もう1人のお兄ちゃんにも渡す。
「はい!おにいちゃんも!」
「はい、ありがとうございます」
「はやくたべてにぇ」
どうやら、早く食べないといけないのは理解したようで、私が飛んでいることには突っ込まれずにアイスに集中している。
「これは、なんて冷たい。おいしい。もぐ」
「ば、バランスが、大切、もぐ」
私も残りのアイスを食べる。コーンが好きなんだ。コーンが。
だんだん、ごりかりと音が聞こえてきた。みんなコーンにたどりついたな。
部屋が涼しいのと、冷たいアイスを食べて汗がひいてきた面々。
最後まで食べ終わると、全員、何事も無かったように動き出した。
「担当者になりましたヒノ・グリーと申します」
「わたくし、補佐のケイトと申します。よろしくお願いします」
「ご用向きは品質の価値を調べる事と、販売ですね。机の上のこちらで全てですか?」
「はい!」
私が返事すると不思議なものを見る顔をされる。
「サチ・スメラギ様はどちらで?」
「はい!さち・しゅめりゃぎでしゅ!」
「は?」
「こそっ、グリー鑑定官!正気に戻ってください!商業ギルド証に年齢制限はありませんよ!」
「はっ!失礼しました、スメラギ様。今から鑑定させてもらいます」
「よりょしくおにぇがいしましゅ」
「はい!」
グリー鑑定官は真面目な顔で品物を見ている。プロだ。補佐も言われた内容を書き留めている。
サチはストローマグで麦茶を飲んだ。トイレに行きたくなってきた。
「りゃず、といりぇにいきましゅ」
「私も行きましょう。エレナとカイザーは私達が帰って来てからお願いしますね」
「分かりました。いってらっしゃいませ」
空いている場所におうちを出した。中にラズと入る。
鑑定官と補佐はぼけーとそれを見ていた。
そして心の中で思った「この人達マイペースすぎだ」と。
おうちの中では、サチのパンツまで脱がせたラズが自分もトイレに行った。サチはおまるで踏ん張った。
サチが拭き拭きした頃出てきたラズは手を洗ってからサチのパンツを履かせ身だしなみを整えた。サチがおまるをしまったら、抱っこして歩き出す。
商業ギルドの10番の部屋に戻ったらエレナが休憩に行った。
鑑定官はまだ、鑑定していた。熱心に見ている。どうやら『特殊な温泉の湯』が気になるらしい。
今日、私が出した品全部、鑑定で値段が出ない。誰もこの世界で値付けして無いからだ。だからこの鑑定で値段が決まる。
マジックバッグも壊れないバッグが無いようで、同じく値段が出ない。
今、ラズ、エレナ、カイザー達が使っているバッグも値段が付いていない。多分値付けされたら、収納量がほぼ無限に作ってあるから凄い値段が付くと思う。
「すみません、スメラギ様この『特殊な温泉の湯』に書いてあることは本当ですか?」
「ほんとうでしゅ」
「お金を入れて試したいのですが、まだありますか?」
容器を収納の中で複製して出す。ついでに大銀貨1枚も。
「こりぇで、ためしてくだしゃい」
容器と大銀貨1枚を渡す。
「それでは失礼して、ケイトよく見ておいてください。2人で証人になるのです」
「はい!」
瞬きもせずに容器の中が空なのを確認して蓋をしめてから、底の蓋を外し中に大銀貨1枚を入れる。そして下蓋をしめる。容器が重くなった。上蓋を開けると中には乳白色の液体が入っていた。
2人は信じられない思いだが、確かに見たのだ。何も中に入って無いことを。上の蓋をしめて、底の蓋を取ると大銀貨1枚は無くなっていた。
2人で書類にサインをする。嘘は無いという報告書だ。
だが、まだ証明するには人がいる。
傷・病気・慢性疲労を持っている人物を治療するのだ。
「すみません、こちらの『特殊な温泉の湯』が貴重なお品なのは分かっていますが、正式な鑑定となると実際の効能を調べねばなりません。使ってもよろしいですか?」
「いいでしゅ。つかってくだしゃい」
「ありがとうございます。しばらく部屋を留守にします。お待ちくださいませ」
鑑定官と補佐は部屋を出た。心当たりのある怪我人と病人、慢性疲労の人を見つけなければいけない。2人で探す。これが一番大変な作業になりそうだ。慢性疲労の人の心当たりはあるが。あと、怪我人も。受けてくれるかはわからないが。複数人必要だ。肌に塗って使うのと、飲んで使う為に。
◇◇◇
カイザーも休憩が終わり暇になったサチ達。
担当者達は、しばらく帰って来ないと行っていた。
サチは人生ゲーム・貴族版を出した。
机の上の品を床に置いてゲームの準備をする。
ラズも分かったのか、一緒に準備をする。
「さあ、エレナ、カイザー、今からゲームしますよ」
「ゲームって貴族がやるやつか?」
「違います。これはサチ様のゲーム、名付けて『人生ゲーム』です!やってみればわかります。さあ、席に着いてください」
訝しげにしながらも席に着いたエレナとカイザー。紙幣と車を用意される。あと棒人間も。
ラズの説明でゲームが進んでいく。2人もなんとなく遊び方が分かってきたみたいだ。4人で熱中する。サチは飛びながら参加だ。
ゲームが終盤に差し掛かった頃、ノックが鳴った。みんな無視した。
再度ノックが鳴り、しばらくして扉が開いた。護衛2人は素早く視線を走らせる。入って来た人達を無害認定してゲームの続きをする。
そこには声をかけるのも躊躇う空間が出来ていた。
入って来た者達が興味深げに机を覗く。
4人は無視してゲームを遊ぶ。真剣だ。
そして勝者と敗者が出る。嬉しい声と悔しい声が響いた。入って来た者達はなんだか楽しそうだと思った。
飛んでいるサチはスルーだ。
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