村長一家との別れ
食事が終わったら夫人が布を持って、サチを抱っこしてくれた。村長達みんなに挨拶する。
「おやしゅみにゃしゃい」
「おやすみサチ」
「いい夢を」
村長と息子が挨拶してくれた。サチは嬉しくなりながら夫人につれられていった。
ベッドに寝かせられると夫人はサチの足元に陣取って、サチの足を見て探ってくる。サチは何をされるのかわからず、じっとしてると夫人がサチの足元を止めてあるボタンをぱちんぱちんと外し始めた。
「あら、この服、珍しいわ。こんなボタンがあるなんて。サチちゃんはやっぱりいいところの子なんですね〜?」
服を脱がしたかったらしい。寝る時は服を脱ぐのだろうか?
ボタンを外し終わった夫人はサチの胸の方に服をまくった後に、その下のパンツに手をかける。
え!排便してると思われてる?寝ている間にしちゃったのかな?小さくなったの今日だからわからないや。
「あら?綺麗ねー?出るものが無かったのかしら?パンツも分厚そうだしおねしょしても大丈夫ね」
夫人は服を直していく。サチも便意は無かったからそのまま眠ることにした。
「おやしゅみにゃしゃい」
「おやすみサチちゃん」
幼児って眠くなるの早いや。疲れてたのかな。
そのまま夢の世界に旅立った。
◇◇◇
朝、目が覚めると村長と夫人の間で寝ていた。
びっくりしながら起き上がる。喉が渇いた。首元を探ってもストローマグが無い。見回して探すとサイドチェストの上に置いてあった。
サチが飛ぶと意識すると翼が出た。
飛んでストローマグを手に持ったら床に降りる。翼も消えた。
ストローマグから、んくんくと水分を補給する。全て飲んだらぷはーと息を吐く。また飲めるように能力で麦茶をストローマグに入れておく。
靴も脱がせてくれたみたいで、床に座って1人で履く。赤ちゃんの身体は柔らかいけど手先は不器用だ。時間をかけて履くと次は便意が来た。
どうしようと思いながらも、おまるを作る事に決めた。
普通のおまるじゃ排泄物が溜まりそのままで汚い。排泄物は出したそばから地中に吐き出されるようにして、おまるはいつも綺麗な状態を保つようにする。よしっ!
〈いでよ!おまる!〉
アヒルがついたおまるが出て来た。イメージこんなだっけな?あ、急がないと漏れる!足のボタンを外してパンツも脱ぐ。おまるの蓋を取って、座る。
サチの出したものは地中深くに埋まった。
そして、次は股間を拭くものに困った。
いでよ!土に帰るトイレットペーパー!
と、サチは創造して作った。
サチは拭き拭きするとおまるに汚れたペーパーを放り込んだ。土に帰るようにしたから大丈夫だろう。
手も洗いたい。
〈きれいになーれ!〉
キラキラと光って綺麗になった。よかった。
おまるを収納にしまい、パンツを履いてると夫人が起きてきた。
「あら、サチちゃんおはよう。あらあら、1人でトイレに行ったのかしら?」
「しーした」
「そう、偉かったわね。1人で出来るのね」
夫人は服を整えるのを手伝ってくれた。いい人だ。
夫人も着替えて一緒にダイニングに行く。
水を外に出てくみに行くそうだ。
息子の嫁も来て「かわいい」と言いながらサチの頭を撫でてくれた。
村長一家はいい人だ。何かお返しできないかな?そうだ!沢山の甘いみかんを出そう!
サチが食べた中で1番甘かったみかんを想像して能力を使う。
〈いでよ!甘いみかん!たくさんね〉
机に山盛りのみかんができてしまった。
まぁ、そうそう腐らないからいいだろう。みかんなら子供も苦もなく食べれる。
「きゃっ!これは何!?どうしたの?」
お嫁さんと夫人が帰ってきたようだ。
「たくちゃんありゅ。たべりゅ」
「サチちゃんが用意してくれたの?食べ物?ありがとうね。どうやって食べるか教えてくれる?」
私は小さい手で皮を剥いて一口食べて、夫人にはいっと渡す。
夫人もそのまま食べて、顔をぱっと明るくした。
「まあ、まあ、おいしいわ。あなたも食べてごらんなさい」
夫人に勧められてお嫁さんも食べる。「甘い、美味しい」ともぐもぐ食べるお嫁さんは小動物のようでかわいかった。
夫人とお嫁さんでコンテナみたいなものを持ってきてみかんを丁寧に入れていく。大切に扱ってくれて嬉しい。
机の上を片付けたら2人で料理を作りだした。リズミカルな音が耳に心地良い。亡くなった母を思い出す。幼児の身体は涙腺が弱い。こっそりと涙をぬぐう。ここの家族とも今日でお別れだ。良くしてくれた。
誰の子かもわからない子供に良くしてくれて、1番初めに来た村がここで良かったと思った。
料理が机に並ぶ頃にはみんなダイニングに集まった。息子さんの子供達が私に構う。嬉しいのだが、ちょっとだけ手加減してくれないだろうか。くりんくりんの髪が珍しいようだが、少し力を弱めてほしい。
村長に注意されて子供達は席につく。
私の前にはミルクで作ったパンがゆが置いてある。気遣いが嬉しい。
みんなで食べ始める。夫人がスプーンですくってパンがゆを冷ましてから私の口に持ってきてくれる。ぱかりと口を開けていただく。ミルクの甘さとパンのほんのりとした小麦の味にほんわりとした気分になる。
夫人が続けて食べさせてくれる。感謝をしながらいただく。
食事の最後には、私が出したみかんが各自に配られて、みんな「おいしい」と言いながら食べてくれた。夫人は私の為に皮を剥いてくれて一つずつゆっくりと味わって食べた。
その後、村長が外に出掛ける服に着替えて、私を抱っこした。
みんなが私との別れを惜しんで撫でてくれて、少し涙腺が刺激されたが、うるむ程度ですんだ。
「みにゃしゃん、ありがとうごじゃいましゅた。しゃようにゃら」
村長に抱っこされて外に出た。
「サチはこの乗り物に乗って着いてきなさい」
三輪車の上に乗せてくれた。いたずらされた形跡もない。
サチはそう思ったが、結界で村人は触れないだけだった。十分に興味をそそられていたのだ。
サチは右手のグリップをゆっくりとひねり足でペダルをこぎながら村長の後を着いていった。