神と酒
言い訳するカイザーをラズと2人で無視してお風呂を出るとエレナがいた。
私達の険悪な空気を察して聞いてくる。
「さいってい!カイザー!見損なったわ!護衛対象を溺れさせるだなんて!」
「いや、違うんだ。溺れさせようとした訳じゃなくてな?」
「どういうつもりよ!そんな事ばかり言って!もう、謝ったの!?」
「いや、まだ……」
「もう!さいってい!まずは謝りなさいよ!サチ様に!助けたラズには感謝でしょ!?」
「あの、その、な、サチ様、申し訳ありませんでした。ラズ、サチ様を助けてくれてありがとうございます」
カイザーが頭を下げてきた。そんな事で許しません!
「いまかりゃあしたのよりゅまで、かいじゃーとははにゃしましぇん!はんしぇーしてくだしゃい!」
「サチ様の言う通りです。明日の夜まではカイザーと話しませんから」
「そんなあ」
「「つーん」」
「カイザーってバカねぇ」
「りゃず、れいはいどうにいきましゅ」
「はい、わかりました」
「あの、俺も」
「「つーん」」
「カイザーは部屋に帰りなさい!おやすみ!」
カイザーはしょぼんとして部屋の方向に行った。
ラズとエレナと礼拝堂に行く。
酒屋で買って来たキラー酒の酒樽を横にして置くから、転がらないように土台を作る。その上に酒樽を置いて蛇口を創造する。出来た。
次に朱色の大きい盃を用意する。おっとっとっ。私には大きすぎたのでラズに持ってもらう。
ラズが持っている盃の中に蛇口を捻って酒をいっぱい入れる。
8分目くらい入ったら、祭壇にお供えしてもらう。
私とラズとエレナの3人で祈る。
神様、何が起こるんですか?
立っている8柱の神像のうち、1柱の神像が金色に輝いた。眩しい!何とか目を開けると神像から金色に輝く男の子が出て来た。
『やった〜い!!ぼっくの番だ!いっただき〜!』
出て来たと思ったら酒に一直線だった。大きな盃を持ってごくごくと酒を飲む。
私とラズとエレナは呆然とそれを見ていた。
男の子は最後の一滴まで飲むと残念そうに盃を置いた。一転パッと顔を上げたと思ったら私の近くに来て『同胞よ!』と叫んだ。
「え?わたち?」
『そうだよ!同じ創造神様に造られた兄妹みたいなものさ!君には創造神様から貰った能力があるから、酒を供えてくれた、そこの男の人に僕の加護を与えようかな!ん〜、神聖魔法が使えるみたいだから人体の構造を教えて、もっと上手く能力を使えるようにしてあげる!ほいっとな』
金色の光を投げられて当たったラズが苦しみはじめた。
「りゃず!」
『もっと、永く居たいけど時間切れだね。まったね〜!兄妹よ!』
「あにゃたはだりぇ!」
『生命神だょ〜』
尻すぼみに声が、姿が消えていった。倒れていたラズがゆっくりと起き上がる。
ラズを鑑定!
名前 ラズ
年齢 21
種族 人族
職業 司祭
能力 神聖魔法 神力
加護 生命神の加護
「りゃず!しぇい、せ!い!め!い!し!ん!かりゃのかごがありましゅ」
「生命神様からの加護ですか。知識を頭に植え付けられました。神聖魔法がより効率よく使えるようになった気がします」
「りゃず、すごい!」
ラズと喜んでいると呆然としていたエレナが目に入った。
「えりぇにゃも、おしょにゃえしゅりゅんでしゅ!」
盃を綺麗にして、エレナの手に持たせる。何をしたいか悟ったラズと協力してエレナを酒樽の前に連れて来る。蛇口を捻って酒を盃に入れる。ラズと同じ8分目になったら酒を入れるのをやめて、エレナに盃を持たせる。
「えっ!おも!」
エレナが頑張って祭壇まで持って行く。そしてまた祈る。
次はどんな神様が来ますか?
また、1柱の神像が金色に輝きだす。頑張って目を開けて、それを見る。
『やっと我の番になったか。これは綺麗な器よのう』
金色の光の中で全体的に黒い青年が話した。髪が長くて神秘的だ。盃を傾けて優雅に酒を飲んでいる。
『ふむ、美味い。これよ、これ』
この男も一滴も残さず飲んだ。
『これ、兄妹よ。良い酒であったぞ。其方に力はいらんのう。器を供えた、そこなおなごに力を授けようぞ』
そう言ってエレナに金色の光を放った。エレナが弾かれたように倒れる。
『兄妹よ、ちこうよれ。其方だ』
私は恐る恐る近寄る。すると頭を撫でられた。
『可愛いのう。持って帰りたいわ。出来んがのう』
そう言って消えていった。
頭を触る。撫でられた。優しく。持って帰りたいって言われた。可愛いって。
ボンッと顔が赤くなる。きゃ〜きゃ〜!超絶美形に言われたよー!!!
私が恥ずかしくて礼拝堂を飛びまわってると倒れているエレナが目に入った。そうだ!エレナ!
「えりぇにゃ〜!」
私はエレナの隣に下りるとエレナをゆすった。
「えりぇにゃ、えりぇにゃ、おきてくだしゃい!あ〜ん!えりぇにゃが〜〜!!」
感情に任せるまま涙が出てきた。ラズが私を抱きしめる。
「エレナはきっと大丈夫ですよ。私と同じで加護を貰っただけです。きっと」
ひっくひっくと泣いているとエレナが目を覚ました!
「えりぇにゃ、えりぇにゃ、ひっく、だいじょうぶでしゅか!?」
「え?えーっと、多分、大丈夫です。なんか力が溢れてきます」
エレナを鑑定!
名前 エレナ
年齢 23
種族 人族
職業 聖騎士
能力 神聖魔法 闇魔法
加護 暗黒神の加護
「ひっく、えりぇにゃ、やみまほうが、ひっく、つかえましゅ。ひっく、あんこくしんのかごでしゅ」
「え!闇魔法!?暗黒神様の加護!?」
エレナは混乱しているようだ。私も涙が止まった。お互い落ち着くのを待とう。
◇◇◇
エレナも私も落ち着いた。
「えりぇにゃ、あした、ほんやしゃんにいきましゅ」
「本屋に行くんですか?」
「やみまほうにょ、ほんをかいましゅ」
「だ、駄目です!そんな高い本!」
「わたちがかいましゅ。ぷりぇじぇんとでしゅ」
「サチ様……ありがとうございます」
こういうところエレナは素直だよね。
カイザーは今、話さないと決めてるから。
「だいしきょしゃま!」
てててーっと足で走ってこけた。痛くない。むくりと起き上がる。ラズに抱っこされた。
「りゃず!だいしきょしゃま、つりぇてくりゅにょでしゅ」
「それじゃあ、部屋に行きましょうね」
私の部屋に連れて行ってもらって、大司教様の部屋に繋がるドアの前で降ろされた。飛んでドアノブを捻る。
ドアを開けると大司教様が待っていたように目の前に居た。
「だいしきょしゃま」
「サチ様、お待ちしていましたよ」
「だいしきょしゃま、こっちにきてくだしゃい。わたちのへやに」
「行ってもよろしいのですか?」
「はい」
大司教様に抱っこされる。そのまま私の部屋に来ようとして。
「あっ、だいしきょしゃま、くつをにゅいでくだしゃい」
「え?脱ぐのですか?」
「そうでしゅ」
大司教様は靴を脱いでくれた。
そのまま私の部屋に入る。
「ベッドしかありませんね」
「そうでしゅ。へやのしょとにでましゅ」
「部屋の外ですね」
「私が先導いたします」
「ラズか。お願いするよ」
大司教様を連れて礼拝堂に行く。大司教様にはどんな神様が来るだろう?