事件の多い日
朝食を食べて、お祈りしてから街に行こうとしたら教会勢に止められた。
それでも行こうとしたら、誰かが呼んで来たのだろうダレーン司教に止められた。
「使徒様!街へ行くなどダメです!危ないですよ」
「にゃじぇだめにゃのでしゅか?わたちはじゆうでしゅ!しょうじょうしんしゃまも、いってくりぇましゅた」
届いた書状に神託の内容が書いてあったのだろう。ダレーン司教が悔しそうな顔をした。
「うっ、くっ、ぐぅ。危ない事はなさいませんように。早いお帰りをお待ちしております」
何かを我慢するように硬い言葉で言った。教会勢ものく。その中をサチ達は通る。
今日はカイザーの行きたい場所に行くのだ。先頭はもちろんカイザーだ。サチは飛んで行く。斜め後ろにラズとエレナが護衛だ。
実は3人のお給料はサチが出している。月、金貨1枚だ。ほぼ四六時中の護衛とお世話係なので。籍はモルートの教会にあるが。
カイザーはそこらの店の人に聞いて酒屋に行った。さりげなくお酒が好きなようだ。あまり飲んだ所を見たことは無いが。
サチは飛んでいる所を見られるとやっぱり驚かれるが、こればかりは仕方ない。諦めている。
護衛のエレナの目が光る。
沢山の酒が並んだ店に来た。
カイザーが荷物をくれと言うので、預かっているカイザーの荷物を収納から出して渡す。
サチを守る、カイザー、エレナ、ラズは手が塞がってはサチに何があった時、守れないのでサチにマジックバッグを預かってもらっている。
カイザーが店主と話をしてお酒を選んでいる。
サチは良いお酒って何だろな〜と考えながら、酒樽を見渡すと1つの酒樽が光って見えた。サチはその酒樽に飛んで近づき鑑定する。
ーキラー酒ー
神が好きな酒。祭壇に供えると何かいい事があるかも。10年もの。
「りゃず、こりぇ、かいましゅ」
「は?サチ様がですか?」
「そうでしゅ」
「分かりました。店主と交渉してきます。エレナ、頼みましたよ」
「はい!」
「えりぇにゃはかわにゃいの?」
「私は酒は嗜む程度ですので」
「そう」
ラズが店主とカイザーの間に割り込み酒樽の交渉を始めた。カイザーも援護しているようだ。ラズは慣れてなさそうだからなぁ。
あ、決まったみたい。
「サチ様、大銀貨5枚と銀貨3枚です。はい、お預かりしました。支払いに行って参ります」
ラズにお金を渡す。代金を払いに行ってくれた。店主も笑顔だ。カイザーが交渉して試飲をさせてもらっている。嬉しそうだ。酔っ払わなければいいけど。
買った酒樽を収納にしまう。ラズがお釣りを持って来てくれた。今日、おうちに帰ったらお供えしてもらおう。
カイザーも決めたようだ。酒を小樽に移して貰っている。何種類買ったんだろう?マジックバッグに入れて店主を驚かせている。あ、店主と手を振りあっている。仲良しだな。
「お待たせしました!サチ様様ですよ!あの酒を買ってくれたら店主の機嫌が良くなって、良い酒を安く買わせてもらいました!ありがとうございます!」
「いいよ。ほかにはどこにいく?」
「武器屋で剣の整備してもらってもいいですか?」
「いいよ。いこう」
カイザーの荷物を預かって、また、みんなで歩いていく。
きゃーと声がして、人の波がこちらに向かって早くなった。
カイザーとエレナが囲って流れからサチとラズを守ってくれる。
カイザーが進行方向を向いた。背の高いカイザーには見えるんだろう。
「あー、喧嘩ですよ。刃物ぬいてら。エレナ、俺は騒ぎを止めてくるから、ここでサチ様達を守っていてくれ」
「わかった!」
「サチ様、ちょっと行ってきます」
「いいよ。きをつけてにぇ」
「はい!」
カイザーが走り出した。人が居なくなって騒ぎが見える。どうやら、チンピラ同士のいざこざだそうだ。
カイザーが剣を抜き相手の刃物をちょん切った。ん?何を言ってるかって?そのままだよ。私があげた切れ味の良い剣で刃物を切断したのさ。剣怖!
警備隊が来て、喧嘩してる奴を捕まえた。
カイザーが事情を説明している。
喧嘩してた奴等はしょっぴかれた。
カイザーが剣をしまい、帰って来る。
「いやー。聖騎士の格好で来たから警備隊に感謝されましたよ。さあ、いきましょうか」
人のいなくなった通りを飛んでいく。民衆の見事な危険回避の集団行動だ。日常的にあるのかなぁ。それも嫌だな。
武器屋に到着だ。みんなで入る。私とラズは店の奥に移動する。カイザーとエレナの剣の手入れをしてもらうからね。
「おっ!こいつはいい剣だね!手入れも丁寧にされている。ちょっとだけ待ってな。すぐ終わらせるからよ」
カイザーとエレナは剣の手入れがいいらしい。ちょっと誇らしい。
店の奥で待ってると、店内に賑やかな客が来た。奥さんにいちゃもんつけている。奥さんが口答えすると、剣で奥さんを刺した!!犯罪を目撃した!お金を漁っている。強盗だ!エレナが飛び出す!強盗の腕を切った!取り押さえた!仲間は!?逃げたか。カイザーが確かめに行っている。奥から旦那さんが来た。私とラズは奥さんの所に行く。
「おい!おまえ、ユタ!ユタ!起きてくれよぅ」
旦那さんが悲痛な声を出す。私は怪我よ治れ!ついでに病気も治れ!と祈った。
怪我を見ていた旦那さんが塞がる傷に辺りを見渡して、私達を見た。
「神官様ですか?治してくれたのは?」
「そうです。こちらのサチ様です」
「赤ちゃんが、ありがとう。ありがとうなぁ」
「店主すまん。仲間も捕まえたから警備隊を連れて来てはくれんか?」
「は、はい!わかりました!」
腕を切られた犯人の止血だけする。こんなやつの、無抵抗の人を刺すような奴の傷なんて治してやらない。
ラズに抱きつく。首に縋りついている私を優しく撫でてくれた。
その後は警備隊が来て、一部始終を話して店主に確認を取っていた。
奥さんの血だらけの服と傷のない肌を見て「神官様がいてよかったです」と警備兵に言われて店主も嬉しそうにしていた。
それから手入れの終わった剣の代金をタダにしてくれて、おまけにお金もくれようとしたから、それは断った。
「また、来てください!」と言われたけど、もう来ないと思う。すまんな店主。
それより!この街犯罪、多すぎ!
昼食を食べる店を探して、武器屋の店主に聞いた店に入ると人で賑わっていた。
4人座れる席に案内してもらって、メニューを見るけど、全然どんな料理かわかんない。
「サチ様は何を食べますか?」
「てんしゅのおしゅしゅめで」
「店主のおすすめですね。ちょっと!そこの方!注文いいですか?」
「はいよ!」
結局みんな店主のおすすめにしたらしい。外れが無いからだって。
「はい!おまちぃ!」
ゴロゴロといろんな野菜とモツが煮込まれたモツ煮がドンと置かれた。おお!多い!それにパンがついてる。
熱々のモツ煮をカトラリーを浮かせながら食べる。おーいしー!!この世界でもモツって食べられるんだ。スプーン5つ用意して冷ましていると、店内の客が気づいた。
「おい!スプーンが浮いてるぞ!魔法か?」
「本当だ、浮いてる」
「すげー」
わぁお。大注目!幼い私の口に入るスプーンに、客が気軽に「誰がやってんだよ?」と聞いてきたから、スプーンを客の顔に飛ばした。寸止めだ。でも客にはそれで十分だったらしい。「能力のこと聞くのは御法度だよな。すまん」と謝ってくれた。本当は良い人なんだろな。こちらこそ私がやったと言えんですまん。
それからは静かに食べた。美味しいから店主と料理の持ち帰りの交渉をしたい。ラズに伝える。食べ終わったカイザーが代わりに交渉してくれるそうだ。まかせたぞ、カイザー。旅の食事は君にかかっている。
私は大人1人分ぺろりと食べてしまってラズにお腹の心配をされた。ぽんぽんだけど大丈夫!それよりもトイレに行きたい。
店主に場所を借りておうちを出す。4人みんなでトイレに行く。私はおまるで、早く出て来た人に服の着脱を手伝ってもらう。
スッキリした私達は今日のお代を支払って、明日以降なら鍋1つ多めに作るから代金と引き換えに料理を作ってくれるって。やったね!割符を5枚貰って先払いする。こういう注文がたまにあるんだって。「ご馳走様」を全員で言って出て来た。
今から、店主に聞いた「作り置き」してくれる料理屋をまわってみるつもり。旅の食事は楽しみでっせ。
10軒ほどまわって、全部作ってくれるって。嬉しい嬉しい。カイザーに受け取りは任せた。
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