サチ達、ダレーン司教と教会に行く
隊長と司教が正気に戻ったら「何で飛べるんだ!」と聞いてきたので「しとだかりゃとべましゅ」と言っておいた。
何か納得していたのでいい事にしておいた。
教会内で飛ぶのも大丈夫になったかな?
司教の先導で教会に行く。聖騎士が4人司教の護衛で来ていた。囲まれて進んでいく。
私はラズに抱っこされている。カイザーとエレナは居心地が悪そうだ。同じ聖騎士に囲まれたらねぇ?今は旅装だし。
馬車で来たようで司教と私とラズは馬車に乗った。エレナとカイザーは護衛だから歩きだ。
「いやあ、手紙をもらったのはつい先日でしてね?こんなに早く使徒様に会えるなんて思ってもみませんでした。モルートの大司教様が創造神様に神託を下されたとか?本当ですか?」
「ほんとうでしゅ。しょれとりょうしゅのむしゅこの、けっこんのぎしきでも、しんたくがありましゅた」
「なんと!それは初耳です!内容をお聞きしても!?」
「それは私がお答えします。創造神様の神託は【我が使徒に愛されし人間達よ。幸を約束しよう】です」
「おお!なんと!創造神様は神の国から使徒様をご覧になっているのですね!」
「たぶんしょうでしゅ」
司教は「おお!おお!」と感動している。
この司教様は信心深いようだ。なんか初めて会った時の大司教様を思い出す。
司教様を見ていると視線に気づいたようで、サチに話しかけようとするが、外から声が聞こえた。
『司教様!教会に着きました!』
「ああ!もう着いてしまった。サチ様が泊まる部屋へご案内いたします」
司教が鍵を開けると、外からドアが開いた。司教が馬車から降りて、サチ達もそれに続く。もう、飛んでも大丈夫だ。だが、ラズが、ガシッと飛んでいるサチを掴んで抱っこしてきた。
まだ飛んじゃいけないの?それとも過保護?
ラズに抱っこされて馬車から降りる。ここの教会も大きい。
サチを気にする司教に連れられて、部屋に案内された。客間だろうか?ベッドが1つある。大きいベッドだ。カイザーとエレナも着いてきている。サチの護衛だから。
「この部屋にお泊りください。どうですか?この部屋は?」
「べっどがおおきいでしゅ」
「そうでしょう!そこが自慢の部屋です。お付きの者達の部屋にもご案内します」
カイザーが即座に断った。
「いいえ、司教様。私達はサチ様の護衛です。この部屋で十分です」
「え?ですが、寝る場所は床になりますよ?」
「大丈夫です。不便はありません」
「はぁ、それでいいならよいのですが」
どこか呆れたように司教が呟く。
「それでは食事までゆっくりとお休みください」
司教は部屋から出て行った。やっと4人になった。
「サチ様のおうちを出してください。そこで寝ますから」
カイザーはにやりと笑って言ってきた。それが目当てだったか。床で寝かせる訳にはいかないから、おうちを出す。
カイザーは中に入って行った。トイレだろうか?寝るには全然早い。エレナが部屋を確認する。怪しい物がないか調べているのだ。
サチはベッドに降ろされて靴を脱がされる。お昼寝をしていなかったからお昼寝だ。ラズに一緒に寝ようと誘う。
「仕方ないですね」と横に入ってくれる。
言ってみるもんだ。
ラズにぴとっと引っ付く。
少し暑いので部屋を冷やす。うん、寝心地がよくなった。
「おやしゅみにゃしゃい、りゃず」
「おやすみなさい、サチ様」
うと、うと、として、サチは夢の世界へ旅立った。
懐かしい鐘の音で目を覚ます。ここは教会だ。鐘が鳴る。それも大きな鐘の音。
隣を見ると慈しむように自分を見る瞳があった。
「おはようございます、サチ様。よく眠れましたか?」
「おはようごじゃいましゅ、りゃず。よくにぇむりぇました」
「食事の時間ですよ。食堂に参りましょう」
「はい」
2人で起き上がって、ラズに靴を履かせてもらう。
護衛2人はソファに座っていたようだ。旅装じゃない聖騎士の服に着替えている。
ラズに抱っこされて、部屋を出て食堂に行く。どこに食堂があるのか分かるのか?
「しょくどうわかりましゅか?」
「分かりますよ。だいたい教会の作りは似ているものです」
カイザーとエレナも「そうです」と頷く。そうなのか。
ラズに抱っこされているとチラチラと見られる。幼児が教会にいるのが珍しいか。そうか、珍しいか。
食堂に着く。席はお誕生日席ではない。ここはモルートではないのだ。
見慣れない幼児と聖騎士に食堂にいる教会関係者の視線が刺さる。「誰だ?」「誰だ」と噂している。
ラズとカイザーが4人分の食事を貰ってきた。聖騎士に挟まれる格好で食事をいただく。
今日はあーんは無しだ。ラズが残念そうだが、自分の食事を食べてほしい。カトラリーを能力で動かして食事を食べるとざわめきが大きくなった。
後ろから近づいて来た人物にカイザーとエレナが警戒する。ラズと私も見る。
「おお、そんなに注目しないでくれ。私は聖騎士団長だよ。そこの子供が食堂のざわめきの原因だったので、騒ぎを治めに来たんだ。教会に子供を入れたのは誰の許可だい?」
「司教のファイン・ダレーンと言う人だ。気安くサチ様に話しかけないでもらおう」
「最高責任者のダレーン司教ですか。その子供は何ですか?」
「聞いて驚け!サチ・スメラギ様は創造神様の使徒様だ。サチ様は全ての教会を頼っていい事になっている。神託でだ!」
カイザーが自慢そうに言った。そこまでドヤ顔しなくても良いと思うの。
それを聞いた聖騎士団長は雷にでも打たれた顔をした。食堂のざわめきもピークだ。
そこに話に出て来たダレーン司教がお供を連れてやって来た。
「皆さん!何の騒ぎですか!?落ち着きなさい!聖騎士団長!これは何事か!?」
「はっ!この子供の正体を聞いておりました!」
「ふむ、良い機会でしょう。明日紹介しようと思いましたが今しましょう。ここにおられる子供!サチ・スメラギ様は創造神様の使徒で在られる!失礼の無いように頼みますよ!」
食堂の空気がビシッと固まった。衝撃的な事実を聞いたからだ。
サチ達はこれで安心して食べれると食事を再開した。サチ達の食事をする音だけが聞こえる。
「あの、使徒様。食事の味はいかがでしょうか?」
「ごくん、おいしいでしゅ。ありがとうごじゃいましゅ」
「いえいえ、なんのなんの。ごゆっくり食事を楽しんでください」
ダレーン司教は猫撫で声で言ったあと、自分も席に着いて食事を始めた。ちゃっかりとサチの正面に座り。
サチの座る椅子が大人サイズなので、サチの頭しか見えないが。
自動で動くカトラリーを不思議そうに見ている。大体のことは神の名の元に済ませれるのである。教会では。ダレーン司教だけかもしれないが。
ひそり、ひそりと食堂に喧騒が戻ってきた。驚愕の真相を皆、個人個人で理解したようだ。
食事が終わったら、ラズとカイザーは食器を返却口へ持って行った。エレナがサチを抱っこする。
サチは思った。女の人の抱っこ良い。柔らかい。ラズが聞いたら泣きそうだ。
ラズが帰って来たら、サチはラズに抱っこされた。エレナは護衛だからサチを抱っこして歩けないのだ。つかの間の癒しであった。
部屋に帰るとサチのおうちにみんなで入る。みんなが客間で眠れないからだ。
豪華なおうちにみんな落ち着く。
一度生活の質を上げてしまったら、贅沢に慣れてしまったら、質を落とすのは難しいのである。
サチは今日はエレナと風呂に入る。
「エレナ、サチ様のお世話は任せましたよ」
「はい!サチ様お風呂に入りましょうねー」
子供扱いになっているが、それも心地いい。エレナに抱っこされて女湯に入った。
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