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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
23/207

モルート領都にお出かけ

 教会の入り口に行く為に飛んでいると、お風呂場から行列ができている。

 お風呂を一般の人にも使ってもらうんだ。

 大司教様、良い人。


 列に並んでいる一般人に「飛んでる」「飛んでるぞ」と言われるけど、知らん顔して通り過ぎる。

 礼拝堂まで行列が出来ている。凄い。


 教会の入り口に着くとラズがホッとした顔をした。


「聖騎士を呼んで参りました。一緒に行きましょう」


「はい!いきましょう!」


 聖騎士は3人だった。本当はもう少し増やしたかったけど、人がいなかったんだって。大丈夫だよ。3人で。


 聖騎士が行きたい場所を案内してくれるんだって。

 行きたい場所というか、ふらふら散歩したい。

 困った顔をされた。

 大丈夫!きっと!ふらふら行くぞー!おー!


 教会は何処にあるのか聞いたら、街の真ん中にあるんだって。鐘の音が聞こえるように。ふーん。

 庶民の生活を見たいからそっちに行こうかな。


 ふんふん飛んで行くけど、教会勢は不安そうだ。何の為の護衛か!慣れてないのかな。目的地が無いお出かけ。


 覚悟してたつもりだけど、凄い見られる。もう大注目!


「子供が」「飛んでる」


 子供も飛びますよ!私だけかもしれないけど。見られるから、私も見返す。目が合ったらビクッとされる。ショックですがな。こんな可愛い子見つけてビクッて。


 くるくると周りを見る。住宅街に入ったようだ。人の生活している匂いがする。


 あ、子供達がいる。ぴゅーんと飛んで近づく。


「にゃにしてりゅの?」


 子供達が驚いた顔をした後、怯えた顔をした。くるりと後ろを見て注意する。


「にりゃまにゃいで!こどもたちがこわがりゅ」


「は!」


 怖い顔をしていた聖騎士達が了解してくれたみたいだ。

 また子供達を見る。半分は怯えて、半分は好奇心がある顔をしている。


「おまえだれだ?えらいのか?」


「さちでしゅ。えりゃくはにゃいよ」


 女の子達が「きゃー、かわいいー」って言ってくれる。怯えも無くなったようだ。


「おまえ、かわいいな」


 男の子が私を撫でようとしたのだろう。ラズがその手を掴んでいた。


「りゃず?」


 低い声で名前を呼ぶと「サチ様が汚れてはいけないので」と言い訳した。


 汚れてなきゃいいんだと、子供達を能力で綺麗にした。子供達が驚いてる。

 さっき触ってくれようとした男の子に抱きつく。びっくりしたようで尻もちをついてしまった。〈痛みよ無くなれ〉と思って男の子を見ると不思議そうにお尻を触っていた。


「おまえ」


「さち」


「え?」


「にゃまえ、さちでしゅ」


「さち」


「はい!」


「さっきの!さちがやったんだろ?きれいになったの!」


「しょうでしゅ」


「すごいな。さちはすごいな!」


 凄い凄いといいながら、わしゃわしゃと撫でてくる。

 むふん!と得意な気持ちになる。

 「なにしてあそぶ?」と聞いてきたので、なんでもいいよと答えると子供達は白いチョークのような物で地面に落書きした。ふんふんと見るけどよくわからない。子供ってそんなものかな?


 ちゃぶ台みたいな机を出す。子供達が注目した。

 ミニパルフェを出して子供達に「おやつをたべよう?」と誘うと、わっときた。


「食べていいの?」


「いいよ」


 きゃーと喜んで食べる。ラズも呼んで大きなパフェを出すと「にーちゃんいーなー」と子供達が騒ぎ出す。ラズは戸惑いながらも食べる。私は護衛達の口にどんぐり飴を入れていった。味は適当だ。多分いちごだろう。すんごい驚かれたけどね。


 お腹いっぱいになった子供達は帰っていった。眠くなったのだろう。大きい子はいなかったから。


 ちゃぶ台を収納にしまって、またふらふらと飛ぶ。

 おお、屋台の場所に出た。いい匂いがする。いい匂いに近づくと多分、焼き鳥があった。


「おう!飛んでら!お客さんかい?」


 店主が驚きながらも話しかけてくれる。


「しょうでしゅ。ごほんくだしゃい」


「分かったよ!待ってな!」


 肉を焼きだした。いい匂い。匂いだけで幸せになる。涎が出てきた。パルフェ食べたのに。


「お待ち!大銅貨2枚と銅貨5枚だ」


「ぎんかいちまいで、おねがいしましゅ」


「あいよ!おつりね!兄ちゃんが受け取るのか?」


 ラズがお釣りを受け取って数えている。大丈夫のようだ。収納にしまう。


「やきとり!みんな、たべて!」


 護衛にも言うと「いや」「仕事中なのに」と遠慮するから、口に突っ込んでやった。他の人は諦めて食べてくれた。私も食べる。塩焼きだ。パリッとして香ばしい。

 護衛の人は、とても素早く食べていた。味わったのだろうか?


「おいしかった!ありがとう!」


「おう!また来てな!」


 口のまわりがベトベトだ。ラズが拭いてくれようとしたが断って、〈綺麗になあれ〉と思ったら汚れがとれた。能力、便利。ラズも納得顔。ラズと護衛達の手も綺麗にした。脂が垂れてたからね。


 また、ふんふんと飛んでいくと、水飴みたいな店があった。


「こりぇ、ふたつ、くだしゃい!」


「あいよ!ひぇ!飛んでる!」


 凄い怯えられたけど、手は動いてる。壺から木の枝に水飴らしきものをつけて渡してくれる。


「だ、大銅貨1枚です」


 ラズに持ってもらって、お金を払う。ちょうどだ。


「ありがとうございましゅた」


「へい、まいど」


 隅に寄って、ラズから1組貰う。ねりねりすると白くなってきた。ねりねり、ねりねり。


「サチ様、こちらはどうなさいますか?」


 もう1組の水飴を差し出された。


「りゃずにあげましゅ」


 驚いていたが、ラズもねりねり。水飴垂れるもんね。


 真っ白になったら舐める。麦芽糖かな?素朴で美味しい。

 ラズと2人で舐め舐めするけど、聖騎士がいるから注目される。だって、銀色?鈍色?に光る鎧を着ているからね。動きにくくないかな?思ったよりスマートだけど。夏は暑そう。別の服を着るのかな?


 護衛に紙コップにスポドリを入れて渡す。

 きっと汗かいてるよね。


「冷たい」

「美味しい」

「新しい味だ」


 喜んで飲んでくれた。男だけかと思ったら、女性もいるんだよ。聖騎士。


 舐め終わった枝を水飴屋のゴミ箱に入れて、またふらふらと飛ぶ。すると正面から豪華な馬車がゆっくりと来たので隅っこに寄る。

 周りに聞き耳を立てると、どうやら領主の息子の嫁が来たらしい。

 ふ〜ん、結婚の儀式をする人か。馬車の中は見えなかった。


 馬車が去ったら元の喧騒が戻ってきた。


 またふらふらと飛ぶ。あっちこっち見ていると時期外れだけど、さつまいもに似たふかし芋があった。この世界では旬なのかな?


「しゅみましぇん。みっつくだしゃい」


「飛んでる!あ、ありがとね。大銅貨1枚と銅貨2枚だよ」


「大銅貨2枚でおねがいしましゅ」


「銅貨8枚のお返しね。芋は熱いよ。大丈夫かい?」


「だいじょうぶでしゅ。ありがとうごじゃいましゅ」


 2個は収納にしまった。1本を半分にする。能力でスパッと切れた。怖い。半分をラズに渡す。

 何か諦めたように貰ってくれた。


 うん!ほくほく。さつまいもみたいかと思ったけど、里芋みたいだ。美味しい。もちゅもちゅ食べる。


 お腹がぽっこりしてきた。もうそろそろ食べるのやめようかな?


「りゃず、まんじょくしましゅた。かえりましゅ」


「そうですか。帰りましょう」


 ラズがホッとした顔で言った。そんなにストレスだったかな?それなら、私1人でいいのに。


「こんど、でかけりゅときは、りゃずはきょうかいにいて、いいでしゅよ?」


 なんか、凄いショックを受けました。みたいな顔で見てくる。どうしてだろう。ストレスだったんじゃないの?


「私はいりませんか?」


「りゃずはついてきたいでしゅか?」


「はい!」


「じゃあ、つぎもいっしょに、いきましょう」


「はい!」


 嬉しそうな顔になった。教会にいる時より幼く見える。その方がいいよラズ。


 聖騎士に先導されて帰る。ふらふら来たから帰り道がわからないからね。


 住宅街に入った。何処からか子供の火がついたような泣き声が聞こえる。悲痛な泣き声だ。


「まってくだしゃい。こどもにょにゃきごえのとこりょに、いきましゅ」


 みんな戸惑っていたけど、聖騎士が警戒しながら先導してくれる。


 1軒の家の前まで来た。扉を開けようとするが開かない。〈扉よ開け!〉かちゃん、と音が聞こえた。扉を開ける。


 そこには血だらけの子供とこれまた血だらけの母親だろう倒れた人に、刃物を持った男がいた。


 聖騎士がとっさに飛んでいた私を抱っこして、もう2人の聖騎士が男を捕らえに家の中に入った。


 けたたましい音がする。家の壁にぶつかるような。聖騎士が私の目をふさぐ。刺された人を助けなきゃ。


 私は聖騎士の腕の中から勢いよく飛び上がった。そのまま家に突撃する。

 男は取り押さえられていた。

 それよりも倒れている母親だ!怪我よ治れ!元気になれ!子供も怪我よ治れ!健康になれ!


 ほわんと母子が金色の光に包まれた。首に手を当てる。どくんどくんと脈拍の音がする。生きてた良かった。


 ひくっと喉がひくついた。あ、泣く前兆だ。泣くな。迷惑になる。幼児の身体よ我慢して。


 ひくっ、ひくっ。


「うぎゃ〜〜ん!うわ〜〜ん!」


 ラズが慌てて抱っこしてくれる。身体をゆすって宥めてくれるが、子供の身体は思うようにならない。


 私はただただ、泣いていた。


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