世界情勢と神聖教国とパラナラ王国
翌朝も鐘の音で目が覚めた。
まだ、頭に鐘の音がしている気がする。
「サチ様、おはようございます」
「りゃず、うはよぅ」
口の中が乾いている。口開けて寝てたかな?
ラズの用意してくれた水で顔と口をすすぐ。
うん、潤った。
「サチ様、朝食に参りましょう」
「はい」
朝食を食べに食堂まで飛んで行く。
お誕生日席に座ったら、大司教様が右斜め前に座った。
「おはようごじゃいましゅ。だいしきょしゃま」
「おはようございます。サチ様。良い夢を見れましたかな?」
「ゆめはみにゃかったでしゅ」
「そうですか。ぐっすりおやすみですな」
笑いジワのある目元がセクシーだ。おっさんビームにやられそうだ。
「大司教様、おはようございます。サチ様、朝食ですよ」
「おお、食事の邪魔をしてはいけないですな。どうぞお食べください」
「はい、いただきましゅ。あまにぇくかみがみに、かんしゃをしゃしゃげましゅ」
「はい、あーん」
「あーん」
きょうは丸パンに切れ込みが入っている中にバターが塗ってある。ちょっと固いけど香ばしくて美味しい。あったかい野菜スープも飲ませてもらう。美味しい。あっ!また美味しいオムレツだ!嬉しいな。朝だからか、少ないボアの焼き肉がちょこんと置かれている。うん、美味しい。赤身と脂のバランスがいい。
朝食を食べ終わったら大司教様と一緒に礼拝堂に行く。
なむなむ、お祈りが終わったら、部屋で待機だ。
ベッドで、デローンと横になる。余は満足じゃ。
◇◇◇
ー大司教ー
「大司教様、サチ様が入られた後の湯を鑑定を持っている下女に調べさせたところ、慢性疲労・病気・傷を癒し、身体と肌を若返らせる効果があるとのことでした。どうなさいますか?」
「そうか、女湯でも効果があったか。それに身体と肌を若返らせるとは。うーむ。どうしたものか。貴重なお湯だが、人が浸かった湯だ。飲むわけにはいかん。古傷を持っている者にお湯を渡すか?うーむ。いっそのこと日中は風呂を庶民に解放するか。日を分けて傷を持った物に男女1日ずつ交代で入ってもらうのだ。治療の効果があるとな。入浴だけを希望する者にも喜捨を貰い、入ってもらうのも良い。
誠にサチ様は凄い。入浴しただけでこうも効果があるとは……。それでは今日からでも始めよ!この地の活性化にもなろう」
「承りました。そのように周知いたします。御前を失礼します」
スクリナが部屋を出て行った。
サチ様の湯の効果で私も身体が軽い。
さて、今日も忙しいぞ。何しろこの国にある教会全部に手紙を書かなければならん。
神聖教国にいる教皇様へはグラン・ディーがサチ様から聞き取った重要な内容と神託、サチ様のことを書いた手紙を聖騎士5人に警護させて託した。いくら急いでも到着するにはまだ、半月ほどかかろう。
書き溜めた手紙はそれから出しても遅くはなかろう。誰か手紙を書くのを手伝ってくれんかのう。こう毎日同じじゃ嫌になろうもん。
サチ様からいただいたピンクダイヤモンドは腕利きの職人に飾り棚を注文しておる。出来上がりが楽しみだ。
◇◇◇
グラン先生が来た。今日は世界情勢の勉強だ。
文字は読めるけど、この幼児の手じゃ書けない。勉強内容は能力を使ってズルして紙に書いた。仕方ないもーん。幼児だし。
紙は高いらしいから自分で作った。
A4のルーズリーフの紙だ。ファイルで閉じておくんだ。
グラン先生が欲しがったから半分あげた。ファイルも。泣かんばかりに喜んでいたなぁ。また作れるけど。
さてさて、世界情勢。
暖かい南は大国が多いらしい。戦国時代の名残りだって。
寒い北は物好きが住むと言われているらしいが、少数民族が住んでいるのが確認されているようだ。
西と東は中・小の国家がひしめいているらしい。
それでも世界的に見れば未開拓な森が大半を占めていて、そこに魔物が住んでいるようだ。北ではアイスドラゴンが目撃されたことがあるらしい。
この王国は南の大国の一つ。住みやすいらしいよ。
情勢は西と東の中・小の国家で小競り合いがあるらしい。先生はいつもの事だと言っていたが、神様に遣わせられた私には放ってはおけないなぁ。
南の大国の一つに教会の総本山の神聖教国があって、教皇様が納めているらしい。「是非会ってくれ!」と言われた。
恐れ多いな。避けたい。
「身分はサチ様の方が上だから!大丈夫!」とも言われたけど、余計に行きにくい。もじもじしちゃう。
「教皇様は動けないから、お願いだよ〜!」と泣きを入れられてしまっては行かねばならぬ。教会にはお世話になってるからね。
今日はガトーショコラとホットミルクで休憩。もちろんホールで出してある。濃厚なチョコがうまー!
先生とラズは美味しすぎたのか、無言で食べている。あ、おかわりをどうぞ。
ちょっと長い休憩を終えて、勉強の続き。
ラズの運命の相手がいる西の国は何処だ?先生におおよその場所を聞くと、パラナラ王国、西の小国らしい。ラズ!お嫁さんは連れてくるからね!目的地が決まった。先に神聖教国らしいけど。
パラナラ王国のことを聞くとよくわからないらしい。周辺国から攻められていないのなら、旨みが無い国だろうと言われた。世知辛いね。
昼食を食べて、ラズに領都を見てまわりたいと言うと大司教様がすっとんで来た。
「領都を見てまわるなど、危ないですぞ!お考え直しください!」
「だいじょうぶでしゅ。わたちはじょうぶでしゅ」
「駄目ですぞ!許しません!」
「わたちは、じゆうでしゅ。そうじゃにゃいでしゅか?」
「ぐっ!そ、それは、そう、ですが」
「にゃら、でかけてもいいでしゅ」
「う、う、う。仕方ないです。ですが!聖騎士は連れて行ってくださいね!」
大司教様がガクリとうな垂れた。
でも、言う事は言ったぞ!って顔で見てくる。
仕方ないなぁ。聖騎士ならいいか。
「わかりましゅた。しぇいきしをつりぇていきましゅ」
大司教様はトボトボと出て行った。何かお土産でも買ってこようかな?
「サチ様、私も行きます」
ラズが言った。ラズならいいや。
でも大司教様が言うには外は危険なんでしょ?何かお守りをつけてもらわないと。
う〜ん。あ、ラズに良い宝石があった。パライバトルマリンだ。周囲との仲を円滑に出来る。性格が不器用そうなラズにピッタリだ。この効果と悪意のあるものを弾く結界の効果をつければ、バッチリだ。
〈いでよ!パライバトルマリンのネックレス!〉
宝石の裏の土台にラズの名前と私の翼を刻んだ。
私が昔見たパライバトルマリンよりも大きな石だ。親指の爪ほどの大きさ。私の服の色にも似ている。ラズを私カラーに染めちゃうぞ!
「りゃず、こりぇをつけてくだしゃい。りゃずをまもりましゅ」
「そんな!勿体ない!」
「こりぇをつけないと、ついてきてはいけましぇん」
ラズは悩んでいたが、受け取ることにしたようだ。
「へんきゃくはうけつけましぇんかりゃ」
「そんな!」
騙された!って顔してもダメですからね。ラズの安全の為です。ラズが身に着けるのを待ってから外に出る。慌ててラズが追いかけてきた。私を抜かして「教会の入り口で待っていてください!」と叫んで早歩きで行ってしまった。じゃあ、のんびりと飛んで行こうかな?
あ、忘れてた。神のマント。マント着なきゃ。留め具が上手くつけれない。慎重につける。よし!行こう!