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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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サチの運命の相手

 注目されたサチは、口笛を吹くように口をヒューヒューと言わせた。

 見ている全員が「あやしい」と思った。


 ラズが片手で、サチのほっぺたをタコちゅーの顔にした。ぶちゃかわいい。


「サチ様、白状した方がいいですよ」


「ういおしえあいお」


 サチがタコちゅーのまま喋った。

 サチが何を言ったのか聞き取れなかったラズがサチのほっぺを解放した。

 サチはほっぺと口に違和感があるのか、むにむにとしている。


 ラズはまた聞く。


「サチ様、やりましたね?」


「にゃんにょことだかしりゃにゃいけど、いぼーくにょいえだよ」


 サチは空惚けた顔で行った後に、またラズにタコちゅーされている。懲りないサチだ。


「イヴォーク、あなたの家だそうですよ。カイザー、案内してあげなさい」


「はいよー」


 カイザーがイヴォークと弟君を連れて扉を潜っていった。

 奥さんは病気が治って健康だが、痩せて弱っているのでベッドで寝ている。


 ラズは珍しく強情なサチを素直にさせる為、ライデンにサチの脇下を持たせて、ぶらんとさせた。サチはされるがままだが、誰とも目を合わせようとはしない。


 ラズはサチのふわふわほっぺを掴み、びよーんと伸ばした。


「あにふうを」


「サチ様、自分の心に正直になるのです。創造神の使徒たるサチ様が気軽に嘘をおしゃっていいとお思いですか?」


 サチは目を泳がせた。嘘をついたらいけないと思ってしまったのだ。


「嘘をつくサチ様は、こうです!こうです!」


 サチの顔を弄り倒すラズ。一度やってみたかったのだ。サチはおもちゃにされた。


 そして、またラズに質問された。


「イヴォークの家を改造しましたね?」


 サチは素直になった。


「はい」


「犯行は、夜、ですね?」


「はい」


「後でイヴォークにごめんなさいしましょうね?」


「はい」


 ラズとライデンはイヴォークにサチが「ごめんなさい」をするのが個人的に嫌だが、サチの躾のためにしょうがなく自我を殺した。


 ラズはライデンからサチを受け取って抱っこするとサチをいいこいいこと撫でた。

 サチはこれ以上ほっぺをいじられたら嫌だと小さな手でガードしている。

 そんな、浅はかな所もかわいいが、サチをかまえて気になっていたほっぺを気の済むまでいじり倒したのでラズは満足だ。

 エレナもライデンも微笑ましげにサチを眺めている。


 そんなサチが「あっ!」と忘れていた事に気づいて、ラズの腕から素早く飛んで、イヴォークの家に繋がる扉を潜った!油断していた所をやられた!と、ラズとライデンが追おうとしたところで、カイザーとイヴォークが帰ってきた。

 入り口を塞がれた形だ。


「何かサチ様、1人だったけど、よかったのか?」


 呑気にカイザーが聞いてきた。


「良いわけないでしょう!サチ様を追いますよ!」


 気に食わないイヴォークとボケてるカイザーを押し除けて、イヴォーク宅に行くと、トイレの横で満足そうに飛んでいるサチがどこかへ続く扉を開けて入って行った。

 ラズとライデンが追うと、サチは浴室に入って行ったので、ラズとライデンが続くと、露天風呂も作っていたのか、外に出て『石鹸の木』を生やしていた。ちんまりとしゃがんでいてかわいい。今にも後ろにひっくり返りそうだ。


 サチを確保したラズは安心してサチに聞いた。


「サチ様、いきなり私達と離れてはいけませんよ。石鹸の木を植え忘れていたのですか?」


「う、うん」


 風呂自体を作っていなかったと、今さら告げるのは出来なかった。


 出口でイヴォークとカイザーが待っていた。


「おー、サチ様、風呂も作ったのか。弟が汚かったな。イヴォーク、息子を連れてこい。風呂に入るぞ」


 カイザーはマイペースに指示を出した。

 さりげなく、サチが風呂を作ったのを暴露している。


 ラズはサチをライデンに渡した。

 察したライデンがサチをぶら下げる。

 サチがほっぺをこねくりまわされてはかなわないと小さな手でガードするが、ラズが許す訳が無く、無茶苦茶にこねくりまわされた。


 鼻、鼻はやめて!とガードしようとするが、もう何が何やらわからないくらいこねくりまわされた。


 見ていたライデンが「子どもはかわいいな」と感想を抱いていたが、普通の子どもに、こんな事をしたら、泣く。サチだから泣かないのだ。


 気持ちが疲れたサチが、だらんとしたので、お仕置きはやめておうちに帰る事にした。


 イヴォークに謝るというミッションを忘れて。


 イヴォークは家を綺麗にしてくれたサチに感謝しているのだけどね。



 精神的に疲れたサチは昼食前にお昼寝することになった。


 おうちのベッドで横になり、不貞腐れるようにサチは目を閉じた。

 そして、あの中央都市で出会った商人風の男を思い出す。思い出しただけでサチの身体が熱くなるようだ。


 サチはもしかして、と思って商人風の男にネックレスでマーキングした場所を頭の地図に思い浮かべた。男はまだ神聖教国内にいるようだ。


 そして、サチの能力で『サチの運命の相手は何処にいる?』と探した。

 サチ自身は創造神様の使徒の天使で人間ではないので、運命の相手はいないと決めつけていたが、この身体が熱くなる感じとあの男を離してはいけないと叫ぶ心に「もしかして」と思ったのだ。


 そして、サチの頭の地図の中で、商人風の男とサチの『運命の相手』がピタリと重なった。


 サチは嬉しさと恥ずかしさでベッドの上をゴロゴロとして身悶えた。


 サチにもいた。運命の相手が。


 嬉しさでサチの顔がにまにましちゃう。


 そして、サチはハタッと気がついた。

 運命の相手はサチの目から見て20代の半ばほどに見えた。

 サチは自分の小さな身体を見つめる。

 これじゃ、愛し合う事も出来ない。

 サチは、嬉しさと絶望の狭間にいた。


 会いに行きたい。

 でも、会って真実を伝えたらあの男は一生独身になってしまうのではないか?

 サチは成長して、人間と天使の間に子供が作れるのか?と悩んだ。


 そして、サチはサチ検索で調べた。


 そして、サチを絶望させる結果にサチは泣いた。

 静かに涙を溢して、出していたシンジュがサチのほっぺに引っ付いて涙を吸い取ってくれた。

 「どうしたの?どうしたの?」とシンジュの思いが伝わってくる。


 人間と天使の寿命は違うと、なんとなくだがサチがわかっていた事を突きつけられた感じだ。


 創造神様、サチは、サチは、どうしたらいいですか?


『その答えはサチが持っているはずだ』


 創造神様が応えてくれた。

 大事な時には創造神様がサチに応えてくれる。

 創造神様のお声を聞いて、少し冷静になったサチはその答えにたどり着いた。


 あの男をサチのものにしてしまっていいの?


 葛藤の中で、サチはあの男とお揃いのネックレスを創造して自身に身につけた。

 お揃いの物を身につけているだけで、近くにいる気がする。


 サチは小さな手でネックレスを包み込んで、現実逃避するように眠りについた。


 小さな身体で、大きなベッドにスヤスヤと。



ーサチと別れた後の運命の相手ー


「なぜだ、なぜいらっしゃらない」


 商人風な格好をした男が中央都市の商業ギルド入り口に居座っていた。

 御付きの人が呆れたように言葉を返す。


「きっと別の出口からお帰りになったのですよ。使徒様だったのでしょう?」


「ああ、絶対に使徒様だ。こう、翼を出して私の腕の中に飛んでいらして、カッと胸が熱くなって気が動転してしまったんだ。離してはいけないと、咄嗟に抱き留めたのだが、私にこのネックレスを授けてくれた後にすぐ去ってしまわれた。ああ、あの時に引き留めていれば!」


「何度聞いても信じられないですが、その立派なネックレスを作れる人はこの世に1人いればいい方ですからね。

 と、言うか、いい加減、帰りましょうよ。もう我々、不審者ですよ?職員の人に目を付けられていますからね?」


「くっ、うっ、くぅっ!いや!ギルドが閉まるまでねばる!きっと、きっといらっしゃる、はず!」


 サチの運命の男は、サチ達が瞬間移動で別の街に行ったのを知らずに、商業ギルドが閉まるまで出入口でサチが出てくるのを待ち続けた。

 読者の皆様、誤字脱字報告を沢山ありがとうございます。

 どうやって誤字脱字報告を見るかがわからなかったのですが、検索してわかりました。こんなにも間違えていたのかと愕然とする思いです。

 これからも今作品をよろしくお願いします。


 文字が降ってきましたら、更新いたしますので、どうぞ気長にお待ちいただけると嬉しいです。

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