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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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アンジェ父、目覚める

「サチ様とアンジェの父さんの身体が同じ状態だぁ?」


「そうよ!息はしてるのに心臓の音が聞こえないの!」


「サチ様の心臓が動いてないなんて……。こんなに身体は温かいのにっ!」


 ラズがサチを抱きしめて泣いてしまった。

 サチが息してるのを忘れてるんじゃないかな?


「そう!アンジェ父の体は冷たかったの!そこが違いね!」


「アンジェの父さんの目の色は?調べたのか?」


「調べてくる!」


 ばーっと走って、アンジェ父の瞼を開けて瞳の色を見ると、サチと同じ海の青の色だった。


 エレナが、バーっと戻ってきた。


「サチ様と同じ目の色だった!」


 カイザーが考えて呟いた。


「サチ様と同じ、創造神様の使徒になったのか?」


 エレナが驚愕した顔になった!

 考えても見なかった!という顔だ。


 だが、憶測だけなので、この件は保留、という事になった。


 今だにサチは目覚めないが、今は晩夏。少し過ごしやすい陽気だ。

 ラズはサチの小さな手を握って、心を落ち着けた。


 エレナとカイザーは時間がわからないので、疲れたら警戒を交代していた。


 夕方にライデンが起きて、円形の壁の中にトイレを作ってくれた。

 ちょっと歓声が上がった。

 ライデンの大地魔法が便利すぎる。


 見通しのいい場所での公開トイレは遠慮したかったので、みんな嬉しい。


 ライデンは車の運転席で椅子を倒して横になっていた。

 地味にサチのチャイルドシートが邪魔してる。


 エレナはアンジェリカに軽食とペットボトル飲料の差し入れをしたが、アンジェリカはその間も父の側から離れなかった。


 昨日、サチがふざけてエレナの剣帯のポケットに飲み物やおやつをたくさん放り込んでいたので、各自空腹を紛らわせるだけ食べて、暗くなったら寝ることにした。


 夜間警戒の順番は、体感で3時間おきに交代するようにした。

 アンジェは父の側の地面で寝るようだ。


 みんなアンジェを心配しながらも、好きにさせることにした。


 サチ一行がアンジェリカがラズの運命の相手なので、一方的に好感を抱いていても、アンジェリカにとっては今日出会ったばかりの他人だ。

 教会の服を着ていても敬われることも無かったので、この辺りは神への信仰心が薄いのかもしれない。


 各々、熟睡は出来なくても休む大切さは知っているので、仮眠という程度に睡眠を取っていた。


 夜中、アンジェリカの隣で動きがあった。


 それは隣で眠るアンジェリカをじっと眺めた後に、アンジェリカを包み込むようにして抱きしめて眠った。


 暗くて誰にも、気が付かれなかった。


 朝、何を警戒すればわからない中で警戒していたエレナは、朝靄の中で伸びをしていた。


 みんな車の中にいるから安全だし、と、チラリとアンジェリカを見た。

 二度見した。


 アンジェリカが、誰か(・・)に抱きしめられている。


 エレナは、さささーっと足音をたてないように動いて、運転席に寝ている(1番頼りになる)ライデンを起こした。


「ん、交代する」


 すぐに起きたライデンはそう返事して、車から降りた。


 小さな声でライデンに訂正した。


「違うのよ。明るくなるまで気がつかなかったのだけど、アンジェを抱きしめて寝ている?誰かがいるの。気味悪くて」


「……警戒して確かめる」


「一緒に行く」


 2人はなんとなく予想がついていたけれど、油断していい相手ではない。


 剣をいつでも抜けるようにして、足音をたてずにアンジェに近づいた。


 まず、確認のためにエレナがアンジェと誰かの顔を覗きこんだ。


「コソッ、アンジェ父よ」


「父を起こすから、アンジェの身を守ってくれ。アンデッドかもしれん。浄化の準備をする」


 エレナは驚いた!ライデンは浄化も出来るらしい。

 神聖騎士ってすごい。


 ライデンは精神統一した後に身体に白いモヤを纏わせて、アンジェ父に浄化を施したが、浄化した感覚がないのに気がついてホッとした。顔は真面目なままだが。


 そして、アンジェから離そうと父の手を掴んで一気に抑え込んだ!


 衝撃でアンジェ父の目が開いた。

 驚いた顔をしている。


「どうやって動いている?」


 ライデンは抑え込んだままアンジェ父に尋ねた。

 心臓は動いてないとエレナ達から聞いていたが、掴んだ腕が温かい。


「俺は、知らない」


 アンジェ父が掠れた声で答えた。


「ここは戦場だろう?どうして来てくれたんだ?」


「なぜ、私達がここに来たことを知っている?」


 ライデンは腕を掴む手を強めた。警戒度を上げたのだ。


「あいたっ、いや、痛く、ない?私は人をやめてしまったのだな」


「質問に答えろ」


「私は娘をここに連れてきてくれた君たちに危害は加えないよ。見ていた(・・・・)からね、死んで肉体から離れて」


「どうやって見ていた?死んでいただろう?」


「そうだね。殺されて、丸1日ぐらいかな?肉体から、多分、魂が離れたのだと思う。俺は死体の近くに浮いていた。死体あさりに食べられたのも見ていたよ。複雑な気分だった。

 あの、小さな子供が俺の体を再生してくれたのも見ていたが、その後に不思議な声が聞こえた後、肉体に魂が引っ張られて、その時、凄い力を感じたと共に、自分が変化したのを感じた。それだけだね。あ、他の俺と一緒に死んだ奴等は天使様のお迎えで天に昇っていったよ」


「どんな声が聞こえた?」


「ちょっと曖昧なんだけど、『サチ命を縮める。手伝う』と聞こえたよ。何だか魂が痺れる声だった」


 惚けたように、声を涸らしてアンジェの父が話している。

 そこに嘘はかんじられなかった。


 ライデンとエレナは『サチ命を縮める』と物騒な内容とアンジェ父が知らないはずのサチの名前を知っていたことに驚いた。


「サチ命を縮めるとは何だ?何が起こった?」


「いや、わからないよ。それよりも喉が渇いて干からびそうだ。水をくれないか?」


 エレナが、アンジェがおいしいと飲んでいた経口補水液をキャップを外してからアンジェ父に飲ませた。

 アンジェ父がライデンに抑えられている腕とは反対側の手を使って、容器を持って飲み始めたので、エレナは手を離した。

 相当喉が渇いていたのか、一気に全部飲んでしまった。


「はあ、生き返る。そうか、生き返ったのか俺は……」


 アンジェ父が涙を流し始めた。

 飲み物を飲んで生きている実感が湧いてきたのだろう。


 だが、起き上がらない。

 経口補水液を飲んでいる時も首を上げただけだった。


「攻撃はしてこないか?」


「なぜ、俺があなた達を攻撃しなければならない。敵ではないんだろう?アンジェが安心して眠っている」


「いや、アンジェ父が、起き上がらないなと思ってな。体調が悪いのか?私も治療は出来るが」


 神聖騎士のライデンは凄い。治療が出来るらしい。

 聖騎士のエレナとカイザーは軽い傷口しか治せないのに。


「いや、若い女性がいる場で言いにくいのだが、死んだ後に脱糞してしまったらしくてね。被害を拡げない為に起き上がれないんだ。情け無い」


 下半身が汚れてしまったらしい。

 ライデンの浄化では、脱糞した汚れは綺麗にならない。傷口の浄化は出来るのだが。


 ライデンが思わず謝る。


「それはすまん。腹が空いてないか?何か食べるか?」


「……いや、腹は空いてないな。ありがとう」


 ライデンは抑え込んでいた腕を解放した。

 バサリとアンジェ父が横になる。

 その後にアンジェの手を見つけて握った。


 仲のいい父子なのだろう。


 エレナとライデンは少しの間、監視していた。


 そして、『サチ命を縮める。手伝う』の意味を考えていた。

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