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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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使徒様の枯れない花の値段は? 1

「して、使徒様、この本と花はいかほどご用意できますか?」


 鑑定するには数と質、貴重さで値段をつける事が多い。

 手間がかかったり、貴重な付与がされていたり、技術的に量産できるのか?独占するのか?そう言った事が大事なのだ。


「いっぱいでしゅ」


 ラズの膝に着地して、おかわりのお茶を飲んでいたサチは答えた。

 事実、サチが作ろうと思えば部屋から溢れるほど作れるのだ。


 サチは部屋中にバラの花を降らせた。


 みんな驚いた表情になって、ギルド長なんかは慌ててキャッチして机の上に置いていった。


 サチはバラを降らせるのをやめた。

 ギルド長が大変そうだったからだ。

 目の前でおじさんが一生懸命、振ってくる桜の花びらをキャッチしようと頑張っている姿と言えば想像できるだろうか?かわいいを通り越して滑稽になってくる。


 そんなビルギルド長のおかげ?で机の上がバラの花だらけになってしまった。

 赤いバラの花だから何か怖い。


「使徒様、このバラの花はお売りいただけるので?」


 はぁはぁしていたビルギルド長が呼吸を落ち着かせて、問いかけてきた。


 ビルギルド長の頑張りを奪ったりなんかしないよ。


「あげましゅ」


 ビルギルド長の顔が壊れた。

 目ん玉が飛び出そうなくらい驚いて、口が開きっぱなしになっている。

 なんか、可哀想になってきたから、消えなかったバラの花を全てガラスケースに入れてあげよう。


 サチは善意で赤いバラの花をガラスケースに入れ、花言葉を書いて翼のマークを刻んでいった。

 置く場所がないので、床に直おきだ。


 終わった後もビルギルド長が正気に戻らないので、サチは飲みすぎた水分を排出におうちに入った。ラズも一緒だ。


 ちょっと不思議な事がある。

 サチのトイレはアヒルさんおまるでするのだが、排泄物の匂いがしないのだ。

 初めは直ぐ地中に排出されるから臭わないと思っていた。

 でもよく見ると、サチのおしっこは透明だ。色が黄色くない。うんちは茶色なのに不思議だ。


 まあ、排泄の話はここまでで、ラズに服を整えてもらってから、抱っこでおうちから出る。


 どうやら、ビルギルド長の様子がおかしいのを気にして職員さんが正気にもどしたようだ。(エレナ談)


 ソファに座ったサチ達にビルギルド長が聞いてくる。


「本当にバラの花を無料で貰ってもよろしいので?」


「むりょうでしゅ」


 サチが心変わりしないか焦っているように、黒子に徹していた職員さん達が素早く動きだして、特別室の隣の部屋へと持っていった。

 ビルギルド長が顔を両手で押さえている。心なしか震えているような?


 サチはこの瞬間に、中央都市の商業ギルド職員の特別給が決まった事を知らない。


 ビルギルド長は使徒様に直接バラの花をあげると言われたので、奥さんに使徒様特製のガラスケースに入れられたバラの花をプレゼントするのだ。

 これ以上の贈り物は無い。

 ビルギルド長泣きそう。


「しっかりしてください!」

「ギルド長!頑張って!」


 と職員さん達に応援されている。

 あ、1人職員さんが出て行った。


 サチはギルド長が話を進めないので、自分で飲み物を出した。

 生クリームココア。好きだったのだ。


 サチは、好きな物はみんなに配りたい。

 ラズと護衛達とギルド長の前にもそっと生クリームココアを置いた。


 そしてココアをそっと飲む。

 (むふー!美味しい!)

 サチ達の心は一つだったかもしれない。(ギルド長はココアに気がついていない)


 まったりとしている時に、ノックの音が響いた。


 そして、入って来たのは中年の女性。

 サチの方を見て綺麗な礼をしてくれた。


「創造神の使徒様、お初にお目にかかります。副ギルド長のヤヤコと申します。ギルド長に変わり商談させていただきます」


 その副ギルド長の後ろには敏腕秘書です!と言わんばかりの女性が付き添っていた。


 副ギルド長がビルギルド長の隣に座る。

 そして敏腕秘書が机の上に置いてある物を鑑定して副ギルド長に伝える。


「使徒様、これらの商品はいかほど納品してくださいますか?」


「いくつでもいいよ」


「そうですか」


 副ギルド長は持って来た書類の束をめくって秘書と相談しだした。


 む!聞こえな〜い。いい子には、聞こえな〜い。信じられないような金額が聞こえてくるような気がするけど、聞こえな〜い。


 ギルド長についていた職員2人が部屋を出て行った。


 いい子のサチは生クリームココアで鼻の下にヒゲを作っている。顔が小さすぎたのだ!いや、コップが大きかったかもしれない。


 むふーん、むふーん、と一口飲むたびに余韻を味わっているサチの耳に何か聞こえてきた。

 聞こえないはずなのにおかしい。


 ノックの音が聞こえたら、びっくりするほど大勢の人が入って来た!


 聞こえな〜い、フリをしていたサチが動揺した。ラズに縋り付く。


「使徒様」


 優しい声が聞こえた。

 きっと魔女の声ってこんな声。


「品物を出せるだけ出してください」


 だ、出してやる!いっぱい人を連れて来やがって!出してやるよ!


 ラズに縋りついたまま、ガラスケースに入れられたひまわりとマーガレットが部屋を埋め尽くす勢いで現れた!!


 それを処理していく大勢の人!人!人!

 廊下と部屋を凄い勢いで行き来する!

 職員でダブルチェックする掛け声が聞こえてくる!

 箱が沢山運び込まれては、荷物を詰められて廊下に出ていく!


 サチは怯えてラズにコアラ抱きついていた。

 ラズはサチを守るように包み込んでいた。


 ラズは知らないだろうけど、サチの顔にはココア混じりの生クリームがついていたんだ!

 今!サチの顔はラズの胸元!染み抜きが大変だぞ!だって、白い服だから!


「使徒様?」


 きっと、魔女の声だ。


「この御本は売り物ではないのかしら?欲しいわ?」


 魔女の声に逆らってはいけないんだ。


 サチは【花言葉集】をたっっっくさん創造した!

 雪崩れの音が聞こえた気がする。


「サチ様、おうちに入りましょう?」


 エレナの声が聞こえる。

 でも、責任者はいないといけないでしょ?


「サチ様、お風呂に入ってきた方がいいよ。筋肉ほぐれるよ?」


 エレナとラズの独断と偏見で、サチがお風呂に入ることが決定したらしい。


 ラズがサチを抱っこしておうちに入ろうとしたら、魔女から声がかかった。


「サチ様、私、このお花を拝見した事がございませんの。種はお持ちでして?」


 雑然とした部屋の中でもよく聞こえた。

 サチは意外なところで律儀なので、サチ検索を元に生育環境と咲いた花の画像をつけた花の種を沢山出した。


 もう、解放して?


 魔女の高笑いが聞こえた気がした。


 サチとラズとエレナがおうちに入った。


 エレナはソファで待機。

 ラズはサチを抱えたままお風呂場の脱衣所に行く。


「サチ様、服を脱ぎますよ」


 ラズがサチを支えるのをやめてもサチはラズから離れない。こんなの初めて。

 意外とサチの力が強かった。


 ラズはサチの力が緩まるまで、辛抱強く待つことにした。


「サチ様、ここには怖いことはありませんよ。サチ様とラズの2人きりです。サチ様の丈夫なおうちの中ですから」


 サチの力が少し弱まった気がする。


「サチ様はよくラズには理解出来ない事をなさいますが、ラズはいつでもサチ様の味方です。例え国がサチ様の敵に回ろうとも、ラズはサチ様さえいれば勝てると思っているのです。だって、サチ様には創造神様がお味方でしょう?これ以上に強い味方はいませんよ?サチ様、創造神様は今のサチ様を見てどう思われるでしょうか?ラズはサチ様が商業ギルドに卸した商品で幸せになる人がいると想像しているのですが、どうでしょうか?」


 サチの力が緩んだ。もう、大丈夫だ。


 ラズは一度サチをぎゅっと抱きしめた後に、ラズからベリっと剥がしてサチの服を脱がせ始めた。

 素直に服を脱がされるサチ。

 その顔は少し汚れてしまっていた。眉毛も垂れている。


 ラズはサチを優先して、自分の服は脱がずに浴室内に行き、サチを優しく綺麗に洗う。

 自分の服が濡れても気にしないラズにサチの手が握られる。


 サチの身体を洗っている時に気がついたラズは、小さな指を一本一本優しくほぐしていった。

 完全に力の抜けたサチはラズに抱っこされてお湯の中に入れられた。

 反射的に翼が飛び出す。


 プカリと浮かんだサチは、ラズの目から見ても、もう大丈夫そうで、ラズはサチの近くで濡れた服を脱いだ。

 そして、サチが沈まないか確認してから自分を洗いに行った。


 サチは、翼を出して開放感に浸っていた。

 これが自分の在るべき姿だと納得するように。

 小さなストレスを解放するように翼を大きく伸ばしている。小さいけどね。


 ラズが身綺麗にして、サチの入っている湯船に浸かってサチを見ていてくれる。


 サチは安心感に包まれて目を閉じた。

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