教会にお風呂を作る
大司教様に、さっきのお兄さんの話をすると「国王陛下の3番目の王子でしょう」と言っていた。見たことあったのか。
多分だが、領主の息子の結婚の儀式に出席する為に来たのだろうが、来るのが早いから観光しがてら来ているのだろうと言っていた。領主館に滞在しているのだろうから、領主様も大変だ。
また、いつのまにか抱っこされている私。
いいんだけどね。大司教様、遠慮がなくなってきたな。
それより、村長などはここを街と言っていたが、領都らしい。だから大きいんだね。街中を馬車で移動するくらいだもんね。
冒険者ギルドに着いた。宝石店で4の鐘を聞いたから遅くなっちゃった。中に入ると冒険者が結構いる。仕事から帰って来たんだね。
受付に行くとダヴィドさんが迎えてくれた。解体場まで案内してくれる。
ホビーさんが待っていた。肉を扱いやすい大きさに切ってくれている。肉が山みたいだ。
ありがたく収納にしまっていく。一塊が大きいから、ギルド長とホビーさんとダヴィドさんでわけてもらう。
「サチ様、ありがとうございます。ギルド長も喜ぶでしょう」
「お嬢ちゃんありがとうな」
感謝されると照れる。大司教様の胸元に顔を埋めた。優しく体を撫でられる。心地いい。今日お昼寝してないから眠くなっちゃうよ。
受付に行って特級ギルド証をダヴィドさんに渡すと素材の精算をしてくれた。
牙と大きな毛皮が取れたから大銀貨4枚と銀貨7枚になった。ギルド証とお金をもらう。
「またの起こしをお待ちしております」
「ありがとうごじゃいましゅた」
「お世話になりました」
外に出ると馬車が準備してあったから、乗り込んで教会まで帰る。
「サチ様、帰ったらアルキマイラの値段のお金を渡しますね」
大司教様、そんこと気にしてたんだ。いいのに。
「だいしきょしゃまにあげましゅ。ぷれじぇんとでしゅ」
「ぷ、プレゼントですか。サチ様、私は宝石もいただきましたのに」
「いいんでしゅ」
「そうですか。サチ様、ありがとうございます」
抱きしめられた。中身、大司教様と同じくらいの歳だから照れる。ダンディなおっちゃんに抱きしめられると。
話を変えよう。
「だいしきょしゃま、かえったりゃ、おふりょ、お!ふ!ろ!にはいりたいでしゅ」
「お風呂ですか。すみません。教会には水浴び場しかありません。ご期待に添えそうにないです」
がーん。お風呂が無いだと?水浴び場?寒いじゃないか。むーん、もう5日もお風呂に入ってない。いい加減入りたい。どうしたものか。
「あいていりゅ、とちはありましゅか?」
「聖騎士の訓練場しかありませんなぁ」
聖騎士の訓練場を潰すわけにはいかない。
水浴び……いやだいやだ。お風呂に入りたいんだ!
むーん、むーん、教会の空間を広げてお風呂を作ったらいいんじゃないかな?それなら土地もいらないし!
「おふりょ、ちゅくりましゅ!」
「いやいや、さすがにダメですよ」
「だいじょうぶでしゅ!くうかんをひろげましゅ!」
「空間を広げる。おお!それならいいですぞ!」
「かえったりゃ、ばしょをおしえてくだしゃい」
「分かりました。楽しみですなあ」
大司教様がご機嫌だ。気分がいいと空気も軽いよね。帰ってからが楽しみだ。
◇◇◇
教会の入り口に馬車をつけてもらって入り口横の待機室でお世話係を待つ。
大司教様のお世話係とラズが来てくれた。
「お帰りなさいませ。大司教様、サチ様」
「お帰りなさいませ」
「ちょっと寄りたい場所があるので、今は先導は結構です。それでは行きましょう」
一般庶民の人も良い服着た人も大司教様を見ると頭を下げる。偉いんだなぁ。
大司教様の案内で礼拝堂と教会関係者の居住地の真ん中あたりの壁を示された。
「サチ様、ここです。ここに風呂場を作れますか?」
「わかりましゅた。おりましゅ」
床に下ろしてもらって、壁をよく見て触って飛んで天井までいってイメージを固める。
〈いでよ!男女別風呂場!トイレもお願いね。〉
何故か、壁のあった場所に『ゆ』と書かれたのれんがぶら下がって入り口が出来てしまった。
教会関係者も入るだろうと大きめのお風呂場をイメージしたら、旅館の風呂場をイメージしてしまった。垂れない汗が垂れた気がする。どうしよう。
「これが、風呂場ですか!さあ!サチ様参りましょう!」
「あ、おとこゆはあおでしゅ」
「青色の入り口ですね。なんとも不思議な模様だ」
中に入るとすぐに靴脱ぎ場があったので、みんなに脱ぐように伝えて下駄箱に収めてもらう。
からりと横に扉を引いて開けると扉を珍しがられた。多分引き扉は中にもあると思います。脱衣所と風呂場を仕切る為にね。
中に入ると脱衣所が珍しいらしく、お世話係2人は危険がないか探っているようだった。大司教様は純粋に楽しんでいらっしゃるようだ。
「このカゴは何に使うのですかな?」
「ふくをいりぇりゅためでしゅ」
「なるほど、ここで服を脱ぐのですな。あちらの巨大な鏡は素晴らしいですな!」
「おふりょあがりに、みだしにゃみをととのえましゅ」
「なるほど!」
ドライヤーがあったので、いたずら心を思い出して大司教様にドライヤーの風を当てた。
「うわ!」
「「大司教様!」」
なんか洒落にならなかった。髪を乾かすものだと挽回して難を逃れる。お世話係2人が不思議そうにドライヤーをチェックしていた。
何故か魔道具になっているらしいよ。
そして、待望のお風呂だ!私には扉が重いのでカラリと開けてもらう。
むわりと熱気が来た。お湯が張られている。あ!白く濁ってる!きっと温泉だ!手で湯を触ると思い当たる節がある。玉◯温泉だ!やったー!美肌の湯だよ!
大きな浴槽だ。大理石だろうか?石で出来ている。
シャワーで1人ずつ区切られて身体を洗う場所もあった。
ちょっと期待が高まる。
風呂場の奥に行くと、あった!!露天風呂だ!!ドアを開けて外に出る。日本庭園を模している中に岩で出来た風呂がある!嬉しい!外の空気がする。
大司教様達も来て驚いている。
「外に風呂が……」と。
「だいしきょしゃま!おふりょにはいりましょう!」
「いいですね、入りましょうか。貴方達も入りなさい。ラズ、サチ様のお世話を頼みましたよ」
「はい!」
アメニティグッズやタオルや身体を洗うゴシゴシタオルも準備しないと。忙し忙し。
用意が終わったら各員にタオルを渡して、床に座って服のボタンをパチンパチンと外していたら、服を脱いだラズが手伝ってくれた。どこがとは言わんがぶらぶらしてたよ。
いや、私も子供がいたけど経験が多い訳じゃないから目で珍しいものを追ってしまう。女湯に行けば良かったか?いや、今の私じゃ1人でお風呂に入れない。やっぱりラズに面倒を見てもらわないと。
今気づいたけど、男湯に男3人と女児1人。痴女になった気分。身体に心が引きづられているけども。
服を脱がせて貰ったら、飛んで行く。ラズがカラリと入り口を開けてくれたのでシャワーの所に行くと困った大人が2人。どうやって使えばいいかわからないらしい。私が見本を見せる。シャンプー、トリートメント、ボディソープ。女児、見せ物になる。ラズがちゃんと全身洗ってくれたけどね。
私をまるっと洗い終わったら、男3人がめいめいに洗い始めた。私?私は翼を出して浮いている。翼が水に濡れないんだよ。すなわち浮く。
良い湯だ〜。浸かり方を間違っている気がするけど小さいから仕方ない。翼を仕舞うと溺れちゃうからね。
男達が洗い終わる頃、露天風呂に行く。はぁー!気持ちいい空気!そしてまた浮く。
「はー、良い気持ちだ。開放感が素晴らしい!」
男達が来たようだ。一緒に浸かる。みんな不思議そうに私を見る。大司教様なんて翼をつつく。楽しいようでなによりです。
みんな茹って来たので上がる。ふいー!スッキリ!
ラズに身体を拭いてもらって、ラズも自分の身体を拭く。それから私に服を着せてくれる。
至れり尽くせりですな。ラズ、自分の事は後回し。なんか、心配になる。
飛んでドライヤーを構える。誰かおいで〜。大司教様が来た!髪にドライヤーの風を吹き当てる。気持ち良さそうだ。だけど、手で整えてくれないともっさもさになっちゃうぞー。あ、ブラシを発見したお世話係が大司教様の髪を解かしている。正解〜!
大司教様が終わったら、次は私がラズに乾かされる。人の手って心地良いよね〜。
お世話係2人が髪を乾かしている間に顔のお手入れをする。クリーム塗って肌を保護する。大司教様がまたまた不思議そうに見るから大司教様の顔にクリームを塗ると驚いていたが目を閉じて私に任せてくれた。
顔がいい奴は得だな〜。あ、今は私も顔が良かった。
次はラズの顔に塗る。お世話係の人は自分で塗っていた。
みんなに冷えた牛乳を出す。昔ながらの瓶の牛乳〜!私のは小さめ。みんなでごくごく飲む。ぷはー!これだぜー!
「サチ様の知っている、お風呂とは変わっていますね。外に風呂があったり、お湯が出てくる管があったり、風が出る魔道具があったり。面白いですね。肌もツルツルです」
「しょとのおふりょはね、りょてんぶりょっていうんだよ。ろ!て!ん!ぶ!ろ!」
「露天風呂ですか。言い得て妙ですね」
「きょうかいのひとは、にゃんにんいましゅか?」
「教会の人ですか?72人ですがどうかしましたか?」
「じかんをわけてはいりゅと、じぇんいんはいりぇりゅ」
「サチ様は優しいですなあ。それではここは教会の皆にも解放しましょう。スクリナ、伝達は頼みましたよ」
お世話係の人の名前がわかった!スクリナさんね。なんか女性っぽい名前の男の人、多い気がする。
お風呂の前で大司教様達と別れた。
私は女湯のアメニティグッズを揃えていった。
創造するタオルが多い!タオルが!
私はフラフラ飛びながら眠気と戦っていた。部屋に着いたらふわふわのベッドに突撃してラズに靴を脱がせてもらった所まで覚えてる。
私はそのまま眠ってしまったみたいだ。
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