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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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サチ、大切なネックレスを作る 2

 朝食を食べて、おうちに戻ってきたサチは、みんなに「今日1日休み」を言い渡した。

 残りのネックレスを作る為だ。


 みんな何故かサチの頭を撫でてから各部屋に入って行った。

 心配、されてる?


 ラズに抱っこされたままサチの部屋に入り、ネックレスまみれのベッドに下ろされた。


「サチ様、ネックレスを整理いたします。箱をご用意いただけますか?」


 サチはザイデンに渡す為に、作ったネックレスが傷つかないように(不壊を付けてるから傷つかない)クッション製のある箱を創造で作った。


 ラズは蓋を開けて、ベッドの上に完成してあるネックレスを大切そうに箱の中に入れていった。


 サチは昨日の続きで、『守りの神の石』でネックレスを作っていった。


 昨日はザイデンから衝撃的な事実を聞かされて真面目に黙々とネックレスを作っていたが、今日は気持ちに余裕がある。

 昨日ゆっくりと休んだのが良かったかもしれない。


 ちょっと遊び心を出して、立体的な花の宝石のネックレスを作っていた。花の中心に神の石を埋め込むようにして。


 (わぁー!綺麗!後から自分の分を作って宝石の花の花束を作ろうかな?)


 サチは男性も身につけるものだと忘れて、夢中になって女性用ばかり作ってしまった。


 午前中が終わる頃には、全てのネックレスを作り終えて、箱いっぱいのキラキラしいネックレスが見目良いように詰め込まれていた。


「りゃず、ありがと」


 サチはストローマグから麦茶を飲んだ。ちょっといっぷく。

 ラズにはフルーツミックスジュースを用意した。


 2人でベッドの上でまったりしてから、昼食に出かけた。


 新セグウェイに乗ったラズの頭の上を飛びながら、ラズの頭の上って新鮮などと思っていた。


 2人でゆっくりと城の料理を食べてから、サチが無茶を言い出した。


「じゃいでんしゃんにょ、とこりょにいきましゅ」


 駄目だ。

 今日は護衛達を全員休みにしてしまっている。ラズだけではサチを守りきれない。


「駄目です。護衛が居ませんから」


 サチはガーンとした顔をした。


 作ったばかりのネックレスをすぐにでもザイデンに渡しに行きたかったからだ。


 サチだけで瞬間移動しようとしたら、ガシッ!とラズに捕まえられて、2人でザイデンの目の前に出現してしまった。

 心なしかラズのサチを掴む腕の力が強いかもしれない。


 ザイデンは商会の事務室にいた。

 サンティに教育しながら、天空王国の名前を出さずに果物の取り引き方法を幹部たちと議論していたのだ。


 そこにいきなりラズとサチが現れてびっくり仰天した!


 いや、瞬間移動できるのは知っていた。

 だが、いきなり目の前に現れるのは想定外だった。

 事務室に居た全員驚いた!


 そこにマイペースなサチの、のんびりとした声がいやにはっきりと響いた。


「じゃいでんしゃん、にぇっくりぇしゅが、できましゅたよ」


 即座にラズが通訳する。


「ザイデンさん、いきなり失礼いたします。ザイデンさんに頼まれた例の物の納品に参りました。ご確認いただけると嬉しいです。サチ様、渾身の作になっております」


 幹部と事務員は空気を読んで、誰も話さない。ラズが教会の服を着ていたからだ。


 ザイデンが我に返り、事務室の奥の自分だけの執務室にラズ達を案内した。

 ちょっと、動きがぎこちなかったかもしれない。


 ザイデンはラズ達に先に部屋に入ってもらって、ドアの鍵を閉めたら、魔道具を起動させて部屋を防音にした。防音の魔道具はとても高価な品だ。


 サチがソファ席の机の上に大きな箱を収納から取り出して置いた。

 そして、ザイデンを見た。その目はキラキラしていた。


「じゃいでんしゃん!はやくみて!」


 珍しく、1発でザイデンに言葉が通じた。


 ザイデンは驚きすぎて未だに高鳴る胸を抱えながら、箱の蓋を開けた。


 そこには、光り輝く色とりどりのネックレスがびっしりと入っていた。


 ザイデンの頭が一瞬くらっとした。

 目が肥えてるので、目利きが発揮されてネックレスの値段がとてつもない事に気がついたからだ。


 サチの目は未だにキラキラとしてザイデンを見つめていた。上手くできたネックレスを褒めてもらいたかったのだ。


 しかし、ザイデンは現実を受け入れたくなくてちょっとだけ放心していた。

 そして、思った事が口から出ていた。


「ムエルナが喜びそうです」


 そう、リー家の中で、サンティとムエルナが守りのネックレスを貰っていなかったのだ。


 ネックレスを認められたと受け止めたサチは目を煌めかせた。苦労が報われたのである。


 そして、ザイデンの言葉に我に返る。


「お値段はいかほどでしょうか?」


 ザイデンは、これほど値段を聞きたくないと思ったことはない。でも、聞かなければならない。自分がお願いしたことだから。


 だが、サチは自分の考え無しが引き起こした問題なので、加工賃を貰おうなどとは一切思っていなかった。


「むりょうでしゅ」


 その言葉を聞いたザイデンの心の中には天使なサチと悪魔なサチがせめぎあっていた。


 【むりょうでしゅ。おかにぇはいりましぇん】

 【そうだよ。むりょうだよ?ふとこりょがいたまにゃいじぇ。いっひっひっ】


 ザイデンが苦悩している中で、もっと褒めて欲しかったサチはザイデンを見つめていたが、これ以上のリアクションは得られないだろうとラズに懐いた。

 ラズに優しく撫でられたことで達成感を得られたサチは、天空王国の城の客室まで瞬間移動した。


 来るのも突然なら、帰るのも勝手すぎる。


 ザイデンはしばらく放心した後に、部屋から出て、商会の鑑定士を呼び出した。


 そして、内密に、ネックレス全てを鑑定しきった鑑定士は、素晴らしい品に卸値と売値を書いた紙をザイデンに渡した。


 それを見たザイデンは、崩れ落ちた。


 天使なサチと悪魔なサチに魂を明け渡した瞬間だ。


 【むりょうでしゅ】


 そう、無料なのだ。

 この鑑定結果は己の胸の中だけに留めて、このネックレスを家族と商会の為に有効活用しなければならない。


 鑑定士に口止めの為に、鑑定士自身とその家族の分のネックレスを一番初めに選ばせた。

 これから商会が危なくなるから、絶対に身につける事を約束させて。


 防音の部屋に鑑定士の歓喜だか驚愕だかの悲鳴が響き渡った。


 聞いたのはザイデンだけだが。


 おうちの部屋に戻って来たサチはラズに怒られていた。

 「勝手に瞬間移動しないこと」と言う約束を破ってしまったからだ。

 それに護衛もいなかった。


 サチは「今日はずっとラズと一緒にいること」を約束に許してもらった。

 サチもちょろいが、ラズもちょろかった。


 ラズの部屋で、ラズがお茶と果物を用意して、サチに手ずから飲み食いさせていると、ラズは邪魔者が誰もいない空間で幸せに浸っていた。


 サチの口にあーんさせて、食べ物を待ち侘びるサチのお口が可愛い。

 それを口に入れてもぐもぐするサチが可愛い。

 一息つく為に、ラズがわざと大きいサイズにしたカップを口にしてお茶を飲むサチが可愛い。


 ああ、し あ わ せ はーと


 ラズは満足、大大大満足だった。


 その後はサチを膝の上に乗せて猫可愛がり。

 無駄に3着の服を着替えさせて、堪能。

 早めにお風呂に入って、ずっとサチの側で2時間。もちろん岩盤浴もしたよ。

 それから、早めに夕食を食べて、部屋に戻って宝石遊びするサチを堪能。

 早めに就寝して、眠っているサチの寝顔を目に焼き付ける。

 こっそりとサチの隣に入って、サチを抱きしめて就寝。


 ラズは幸せだった。

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