サチ、大切なネックレスを作る 1
サチ達は、天空王国リー商会支店を後にして、お城で早い昼食を取った後に、サチの宣言で『午後休』となった。
サチはおうちの部屋に居るから、みんなは好きに過ごしてねって事だ。
そんなサチを心配に思ったラズは、サチのいる部屋を覗くと、ベッドの上でちんまりと座って、凄い集中力を見せるサチに声をかけられずに部屋を後にした。
そして、サチがいつ廊下に出てもいいように洗濯場などの掃除を始めた。
昼食を食べ終えたサチは自室のベッドの上に『守りの神の石』を出して、創造の力で『守りの神の石』をネックレスとして出来る限りの加工と付与をしていた。
まず、不壊は前提としてつけて、付け外し出来ると隙が出来るから身につけたら外れないようにして、その人が死んだら外せるようにする。身につけっぱなしだと不潔だから清潔を付与する。攻撃されたら自動迎撃システムを付けたら良いよね?そうしたら逃げれるし、犯人を逃がさないようにだって出来るかもしれない。
デザインは男性用と女性用と中性的なデザインがいいよね。
サチサイトでデザインを探す。
そして、ネックレス1つ1つ丁寧に作っていった。
どれだけネックレスを作ったか、ベッドの上がネックレスだらけになって、1つ作り終えたところで、抱き上げられた。
「ん?」
サチがずっと下を向いていた顔を上げると、心配した顔のラズが居た。
「サチ様、根を詰めるものではありません。リー家がすぐに危険になるなんて事はないのですから、ゆっくりとお作りください」
ラズに抱っこされて、部屋から出る。
廊下は明るい。
ダイニングに案内された。
「サチ様、ライデンがナタリーの家から作りたての夕食を持ってきてくれましたよ。
今からよそいますから、ゆっくりと食べましょうね」
リビングで映画でも見ていたのだろう、エレナとカイザーも席に座った。ライデンは廊下側から来て、サチに挨拶してから席に座った。
目の前に出されるナタリーの親父さんとお兄さんの手作り料理。
おいしそう。
と、思ったら、喉が渇いていることに気がついて、ストローマグで麦茶をごくごくと飲み干した。
「やだ、サチ様、そんなに水分を取ったらお腹が膨らんじゃうよ?」
「いや、サチ様のお腹は結構な量が入るから大丈夫じゃね?」
エレナとカイザーがサチに軽口をたたく。
気を使ってくれているのかもしれない。
ライデンも料理を持って来てくれたし。心配かけたかな?
「わたちのおにゃかは、ぶりゃっくほーりゅでしゅ!」
〈私のお腹はブラックホールです!〉は、通じなかった。ラズでも理解出来なかったのだ。
言語の壁とサチ語の悲しさよ。
「では、いただきましょう。あまねく神々に感謝を捧げます」
「「「あまねく神々に感謝を捧げます」」」
「あまにぇくかみがみに、かんしゃをしゃしゃげましゅ」
サチがカトラリーを自動で動かそうとしたところ、ラズがサチのカトラリーを掴んで、サチにあーんをしてきた。
それを見つけたエレナが物申す。
「あっ!ラズ!サチ様は1人で食事が出来るのよ!」
「お世話してはいけないと誰が決めましたか?」
カイザーも物申す。
「料理は温かいうちに食べないと料理人に失礼だろ?」
カイザーにしては良い事言った。
それには、ナタリーの親父さんのことを「お父さん」と呼んでいるライデンが同意した。
「ラズ、料理は温かいうちに食べなさい」
珍しい言い方だが、この中で一番の年上はライデンなのだ。
ラズも珍しく言いくるめられて、自分の非を認めてサチにカトラリーを返した。
サチ的にはどっちでも良かったので、自動でカトラリーを動かして食事を続けた。
天空王国の料理も美味しいけど、親父さんの料理も美味しい。
食事処用に作られた料理は少しこってりとして、さっぱりとした天空王国の料理と違った味わいを感じさせた。
天空王国の料理はバイキング形式で楽しいけど料理が冷めている。冷めても美味しいが。
しかし、親父さんの料理は冷めたら不味い作り方をしているので、温かいうちに食べるのが正解だ。心も満たされる。
冷めた料理でもおいしいなんて、日本の弁当を作っている人しか考えなかっただろう。
それが出来る天空王国の料理人は、ある意味凄いのかもしれない。
サチ達は親父さんの料理を堪能した後、お風呂に入った。
サチは片付けが終わった途端にラズに拉致された。
ラズに拉致されて、綺麗に丸っと洗われた後、湯船にぷかぷかと浮いていた。
サチは目を閉じてまったりと考え事をしていた。
ザイデンに託された『守りの神の石』を早く必要な人に身につけれるように加工しようと集中してネックレスを造っていたけれど、みんなに心配をかけてしまったようだ。
(それでも、頑張れば今夜中に全部加工できる)
そう考えると、居ても立っても居られなくなって、サチは目を開けて湯船から飛び立とうとした。
そこにちょうど来たラズが、ハシッ!とサチを素早く捕まえて、何事もなかったかのように湯船に浸かった。
「りゃず、りゃず、はにゃして。おふりょかりゃでましゅ」
サチはジタバタとしてラズの腕から飛び立とうとしたが、しっかりと肩まで湯船に浸けられている。
ラズはサチのほっぺに口付けをして、サチを固まらせたあとに言葉を続けた。
「サチ様、今日の仕事は終わりです。ラズとゆっくりと休憩しましょう」
サチは意識がしっかりしている時にちゅーされたショックで固まっていた。
(こ、子供への親愛のちゅーだよね?ラズには運命の人がいるんだから!)
心は中年のサチは頭の中が沸騰しながら、もんもんとしていた。
ラズはこれ幸いとサチのぷりぷりなおしりを揉んだり、可愛い足を手のひらに収めてふにふにしながらリラックスして湯船に浸かっていた。
サチ、ラズにおもちゃにされすぎである。
寝転び湯にサチを連れていき、2人で横になっていたところ、サチは心地よさに寝てしまった。
それを、微笑ましそうにラズが見て、風呂上がりにサチを自分の部屋に持って帰ったとか。
異性にお持ち帰りされるサチ。チョロすぎである。
夢も見ないほど熟睡したサチは、奇跡的にラズと同じ時間に目を覚ました。
そして、貴重なラズの寝巻き姿を目撃した。
寝ているサチに背中を向けて着替えているラズ。サチにとっては貴重な瞬間である。
(ラズの夏の寝巻きは白の半袖短パン。男性の下着ってトランクスみたいなんだ。ゴムは無いのかな?)
いつも一緒にいるけど、見過ごしていることは多いみたいだ。
神官服に着替え終わったラズがサチを見ると、バッチリと目があった。
瞬間、ラズの目がとろけた。
「サチ様、おはようございます。今日はお目覚めが良いようですね」
「うはようごじゃいまちゅ」
ラズが好みの白のワンピース型ロンパースを来たサチは超絶可愛かった。
ラズはサチの頭を撫でてから起き上がらせると、小さな靴をサチに履かせた。
そして、抱っこで廊下に出る。
(まだ、静かだからみんな寝ているのかな?)
そんなわけない。
護衛達は十分な睡眠をとった後に夜明けと共に毎日、礼拝堂の庭で訓練している。
時間に余裕があれば、朝風呂にも入っていたりするので、起きるのは、護衛→ラズ→サチの順番である。
サチがいつもより早く起きたので、ラズと一緒にトイレをして、一緒に顔を洗い、一緒に歯磨きをした。
ふむ、連帯感があっていいものだ。
サチは機嫌良くラズに抱っこされて、おうちから出た。
護衛達がいたので、全員で朝食を食べに出かけた。




