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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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宝石商アレキサンドライト

 宝石を売っている店に着いた。

 店構えは大きいが入り口の扉は小さい。盗難防止の対策だろう。扉番らしき門番が入り口に立っている。


「いらっしゃいませ。どうぞ」


 門番の人が扉を開けてくれた。豪華な馬車で来たからだろうか?


「ありがとうございます」


 大司教様と中に入る。中にも店の護衛がいる。

 店内は広く清潔感がある。

 客を歓待するためだろうソファ席が何席もある。客が1組いるようだ。


 まずは受付らしき所に行く。

 綺麗な女性が挨拶してくれた。


「いらっしゃいませ。宝石商アレキサンドライトへようこそ。お探しの宝石がお有りですか?」


「いえ、宝石を買い取っていただきたいのですが」


「承りました。こちらのソファに座ってお待ちください」


 聖騎士4人と大司教様に抱っこされた私がソファ席に向かい、大司教様だけソファに座った。

 私は膝の上だ。


 すぐに、軍服に似たような服を着た人が来た。

 こちらのスーツみたいなものだろうか?


「ようこそいらっしゃいました。わたくし、買い取り担当のステラ・ウィルと申します。よろしくお願いいたします。それでは失礼して掛けさせていただきますね」


 初老の男性で顔は柔和だ。ステラと女性名に聞こえる綺麗な名前だが、れっきとした男性だ。正面のソファに座って厚い布を机の上に広げて宝石を見る為の器具だろう物を並べている。手袋を着けて準備が出来たようだ。


「お時間いただきました。それでは宝石の鑑定にうつらせてもらいます。買い取りの宝石はどなたがお持ちでしょうか?」


 26ctのピジョンブラッドのルビーを取り出し、大司教様に渡す。大司教様が鑑定士にルビーを渡す。


「ありがとうございます。しばし、鑑定の為のお時間をいただきます。お待ちくださいませ」


 スタッフの女性が飲み物を持ってきてくれた。

 ちゃんと2つある。


「ありがとうごじゃいましゅ」


 にっこりと笑って、お辞儀をしてから去っていった。


「むっ!これは!!」


 宝石を布で拭いて見ていた鑑定士のステラさんが、思わずと言うふうに声を上げた。

 一つ席を挟んだ隣の客が見てくる。

 豪奢な服を着た何処かの貴族のようだ。護衛とメイドさんらしき人がついた男女の客だ。

 視線が痛い。

 そうだ、お茶を飲もう。


「だいしきょしゃま、おちゃをのみましゅ」


「分かりました。隣のソファに降ろしますよ。大きいコップですからね。ゆっくりお飲みください」


 大司教様がコップを持って介助してくれる。ありがたい。香りが良いお茶だ。紅茶に近いかもしれない。高いんだろなぁ。美味しい。


「もう、だいじょうぶでしゅ。ありがとうごじゃいましゅた」


「また、お飲みになりたくなったら言ってくださいね」


「はい!」


 優しい。嬉しいな。

 あれ?ステラさん汗が出ている。今日そんなに暑くないんだけどなぁ。顔も赤い。大丈夫だろうか?宝石をいろんな角度から見ている。


「これは、素晴らしい!あ、失礼しました。宝石をお借りしてもよろしいでしょうか?店主と相談したいのですが」


「紛失しなければいいですよ。どうぞ持って行ってください」


「それでは失礼いたします。しばらくお待ちください」


 ステラさんは慎重に宝石を持って店の奥に消えて行った。値段の相談かな?



 大司教様とのんびりとお茶を飲んでいると、壮年の男の人とステラさんが着た。


「長らくお待たせいたしまして申し訳ございません。失礼します。店主のマインド・リーです。どうか、お見知りおきを。この度は当店に大変素晴らしい宝石をお持ちくださりありがとうございます。鑑定の結果ですが、他に類を見ない素晴らしい宝石です。宝石名をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「サチ様」


「りゅびー、る!びーのぴじょんぶりゃ、ぶ!ら!っどでしゅ」


「ルビーのピジョンブラッドですね?だそうです」


 私のような幼児が答えたことにステラさんと店主が驚いている。すぐに顔を引き締めたが。プロだね。


「ルビーのピジョンブラッドですか……ありがとうございます。こちらは初めて見るカットに大変素晴らしい宝石でしたので、この店の最高額でお取引きさせていただきます。ミスリル貨12枚でいかがでしょうか?」


 店主が持っていた紙に宝石の名前を書いている。忘れない為だろうなぁ。


「鑑定間違いではありませんね?」


「鑑定士ステラを信用くださいませ。この道40年ほどのベテランでございます。お値段に間違いはございません。いかがでしょう?」


「サチ様、どうでしょうか?」


「だいじょうぶでしゅ。しょのにぇだんで、おとりひきしましゅ。おかにぇはみしゅりりゅかいちまい、くじゅしてくだしゃい」


「その値段でお取引きするようです。ミスリル貨1枚は細かい金銭にして欲しいそうです」


 通訳すみませんなぁ。大司教様。助かります。


「そうですか!それは喜ばしい!今、貨幣の準備をして参ります。お待ちくださいませ」


 店主が立ちあがろうとしたら、隣の隣の客から声がかかった。


「店主!待て!その宝石を見せてくれ!」


「お客様、申し訳ありません。まだ取引が終了していない為、お見せすることはできません。何とぞご理解をお願いいたします」


「ふむ、いいだろう。取引きが終わったら見せてくれ」


「かしこまりました」


 今度こそ店主が奥に下がっていった。ステラさんは見納めとばかりに宝石を見ている。微笑ましい。宝石が好きなんだな。前世の職業仲間に親近感を覚える。


 お姉さんがお茶のおかわりとクッキーのような焼き菓子を持って来てくれた。嬉しい。


「ありがとうごじゃいましゅ」


 またも、にこりと微笑んで去っていった。


 私は大司教様に餌付けされるように食べさせてもらう。少し硬いが十分美味しい。


「美味しいですか?」


「むぐむぐ、おいしいでしゅ」


 あ、口からかけらが飛んでしまった。〈綺麗になあれ〉。飛ばした事実を無かった事にした。


 大司教様にお菓子とお茶を飲ませてもらってくつろいでいると、店主がやってきた。


「お金を持って参りました。合計金額をご確認くださいませ」


 聖騎士の1人が机の横に屈み込み、バラの貨幣を数えてくれる。おお!聖騎士ってそんな事までしてくれるんだ。気がきくね。


「大司教様、問題ありません。ミスリル貨11枚と大金貨9枚、金貨9枚に大銀貨9枚、銀貨が10枚ございます」


「ありがとうございます。さ、サチ様、しまっていただいても大丈夫ですよ」


「ありがとうごじゃいましゅ」


 収納に全てしまった。店主とステラさんが頭を下げて礼をしてきた。


「今回は素晴らしいお取引をありがとうございます。お茶とお菓子が無くなるまでは、ごゆるりとお寛ぎくださいませ」


「ありがとうございます」


「ありがとうごじゃいましゅた」


 店主とステラさんがにこりと笑って、荷物と宝石をしまい、店の奥に行った。


 む、お茶とお菓子を食べたらトイレに行きたくなった。大司教に言う。


「だいしきょしゃま、といりぇにいきたいでしゅ」


「む、そうですか。私も一緒にいきますかね。貴方達も行きたいなら一緒に行きましょう」


 大司教様が聖騎士に声を掛けている。みんなで連れションだね。1人はお茶とお菓子に何か混入されないように見ておくそうだ。

 カウンターにいたお姉さんが案内してくれる。大司教にトイレを譲って、私はおまるでする。聖騎士のお兄さんが脱ぐのを手伝ってくれた。いい人だね。私も出すものが終わって、パンツを履こうとしたらトイレから出て来た大司教様が手伝ってくれた。ありがとうございます。聖騎士の人達はかわりばんこでトイレを使っていたが、出てくるのが早い。早くするコツでもあるのだろうか?


 みんなで席に戻ると、例の客の声が聞こえてきた。


「ミスリル貨12枚と大金貨3枚など、手持ちにない。王都に行けばあるのだが、どうにか出来んか?」


「王都に知り合いの宝石店があるので、そこまで輸送して購入していただければいいのですが、さらに金額を上乗せされるでしょう。王都で購入となるとミスリル貨12枚と大金貨6枚といったところですな」


「うーむ、モルートに金を借りるか?どうしようか?」


 私が売った宝石を巡って交渉しているようだ。なんか責任感じちゃうな。モルートって領主様でしょう?結婚の儀式を控えてるのにお金貸しちゃったら困らないかなぁ。


「すみましぇん。おにいしゃん、おかにぇいくりゃもってましゅか?」


 大司教様とお兄さんと店主が驚いている。


「ん?私に話しかけたのか?何と言っているのだ?」


 大司教様が通訳してくれた。


「そこなお方にお金をいくら持っているのか聞いています」


「ふむ、普通なら失礼な、と言うところだが、この宝石の売主だからな。ミスリル貨6枚は持っている。それがどうしたか?」


「ほうしぇき、おにゃじので、ちいしゃいにょにゃらかいましゅか?」


「同じ宝石でも、小さい物なら買いますかと問うております」


「何!?あるのか!?見せてくれ!」


 宝石は大きいほど価値がある。26ctのピジョンブラッドより小さくて、ミスリル貨6枚で買えるものだと、う〜ん、12ctで作るか。


 〈いでよ!12ctのピジョンブラッド!〉


 創造した宝石が手の中に収まった。お兄さんの方に手を伸ばす。お兄さんが宝石を受け取ってくれた。


「おお!小さくても素晴らしい!カリネスどうだ?これでもよいか?」


「小さい方が気軽に身に着けれますわね。ちょうど良い大きさにきらめき綺麗なカットです。気に入りました。パピオン殿下こちらでよろしゅうございます。大きい方はキープして王都に運んでいただいてお義母様にお見せすればよろしいのではないでしょうか?」


「お母様にも気をつかってくれるか!素晴らしい奥さんだな。そこな子供、ありがとう。支払いはミスリル貨6枚で良いか?」


「お待ちください。宝石商で頭越しに売買してもらっては困ります。しっかりと鑑定士の鑑定書をお付けしますので、鑑定してから当店と売買していただきとうございます」


「そうか、其方の顔を潰して悪かったな。手間は掛かるがそれで良いか?子供よ?」


「わかりましゅた。まってましゅ」


 大司教様と聖騎士3人と席に戻る。また違ったお茶とお菓子が追加された。


「だいしきょしゃま、しゅみましぇん。おしょくなってしまいましゅた」


「いいえ、いいのですよ。サチ様の慈しむ心に感銘を受けました。ここでのんびりとしましょう」


「ありがとうごじゃいましゅ」


 待っていると店主がお金を持って来てくれた。鑑定結果はミスリル貨5枚と大金貨8枚だった。収納にしまって、冒険者ギルドに行くことにする。


「そこな子供!ありがとう。また、何処かで会ったらよろしく頼む」


「はい!」


 殿下って呼ばれていた。王子様かな?


 

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