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1歳児天使の異世界生活!  作者: 春爛漫
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再び!ザイデン家族、天空王国で商談を 2

 ここは、お城の『国王の部屋』。


 部屋の中の「大臣達が昼食を食べる場所」のソファは、今は応接として機能している。


 いつも国王様が座る席には大臣。

 その向かい側に座るのは、ザイデン家族3人。

 そして、机の上には【天空王国果物冊子】が互いに開かれている。


 そして、昨日決裂した『値付け』が行われようとしていた。


 共に試食会を乗り越えた大臣達とザイデン達に遠慮は無い。

 互いの意見を遠慮無くぶつけ合うだけだ。


 ザイデンが口を開く。


「まずは『卸値』を話し合いましょう。地上への販売額はリー商会で決めさせていただきます」


 お!ザイデンがマウントを取りに来た!

 仕入れ先に販売額を教えないのは基本だ!


 本来なら、仕入れ先も情報戦として販売額を調べておくのが基本なのだが。


「いいでしょう。卸値、互いの納得のいく額を話し合いましょう」


 天空王国民は商売に慣れていない。

 大臣すらも素人だ。

 ザイデンはスカをくらった!

 でも大丈夫!リー商会は『誠実』がモットーだから!


「昨日、天空王国の貨幣価値と地上の貨幣価値が違う事が判明しました。

 そして、果物畑は『国営』です。

 どうでしょう?この機会に、国を今より豊かにする為に、『卸値』は地上の貨幣価値でのお取引にするのは?」


 大臣は悩んだ。


 それを聞いていた国王が、ちょこちょこと近づいてきて、自然とソファ席に座った。

 『国を豊かにする』と聞かされては国王様も黙ってはいない。


 ザイデンは続ける。


「もちろん、天空王国の民にも果物を食べる権利はありますから、天空王国民は天空王国の価値での果物販売を検討されては?」


 財政管理大臣は昨日も「美味しい提案」だと思った事を思い出す。

 そうすれば、外貨はがっぽりと入ってくるし、民は果物を家計の負担に思わない値段で買える。


 財政管理大臣は、密やかに隣に座った国王の説得にかかる。国王様を味方につければこちらのものだ。

 取り引き相手のザイデンからの提案なのだから。


 ザイデン達家族は、目の前の天空王国の代表達を真剣な表情で見つめる。

 試食会は、商売人のザイデンだけでなく、消費者側の護衛達の意見を取り入れて果物の値付けを真剣に検討したのだ。

 これで果物が売れなければ、天空王国との再度の商談をすればいいだけの話になる。


 1番参考になったのは、庶民派のエレナの値付けだったかもしれない。


 ライデンは社会人になった時には、すでに高給とり。

 カイザーは一般家庭だが、貧しい身の上で育っている。

 超!普通の家庭でお金に困る事なく幼少期から過ごしてきたのはエレナだけなので、金銭感覚が普通・平均的なのだ。


 ザイデンは商談で出張する時は、現地人とのコミュニケーションを大事にしている。

 そして、情報を検討・調整・総合的に『売れる』かを考える。独りよがりではないのだ。


 財政管理大臣は国王を堕とした。

 お次は農業大臣を説得する。


 農業大臣は善人だ。

 人民大臣の次に国民と密接な関わりがある。

 農業=農家の仕事に平等かつ誠実に対応しなければならない。


 財政管理大臣が農業大臣を墜とせない。


 話し合いはザイデン達にも筒抜けである。

 そして、ザイデンは提案をした。


「大臣、では別の提案をさせていただきます。

 天空王国はリー商会に三月(みつき)果物を取り放題で提供していただきます。そして、リー商会は三月分90日の売り上げを天空王国に提示します。その金額を見れば天空王国の果物の価値を理解していただけるのではないでしょうか?」


 いわば、『問題の先送り』である。


 でも、これは悪い事ではない。


 売り上げが上がれば上がるほどに、天空王国の果物の価値を理解してもらえるからだ。


 農業大臣が納得した。

 農業大臣は各家庭の1年の収穫量を計算して税を取る為に奔走している。

 「まず売り上げを見てから」は、この考えにピタリと当て嵌まったのだ。


 そして、天空王国側が納得した。


 ザイデンはシン達にも通達をお願いして、国王の部屋を後にした。


 さて、使徒様がいらっしゃらなければ家に帰れない。


 あ、そういえば、昨日聞いた天空王国の礼拝堂があるのだったかと思い出して、もう一度部屋にお邪魔して礼拝堂の位置を聞くと、農業大臣が案内をしてくれた。


 スナーだと早いが、昨日乗せてもらった新セグウェイもサチが持ったままだ。

 ザイデン達は徒歩で礼拝堂に向かった。


 礼拝堂に着いたザイデン達は大臣と別れて、疲れきった身体を地面に座り、飲み物を飲んで休憩していた。


 そして、息が整ったところで立ち上がり、礼拝堂に入った。


 城の礼拝堂だけあり立派で、大きく歴史を感じさせる神像だった。


 ザイデンは祈る前にマジックバッグからワインを取り出して、栓を開けて祭壇にお供えしてから、エリーとサンティを促してお祈りした。


 さすが、神聖教国民だ。

 祈る姿が堂に入っている。


 祭壇にお供えした赤ワインの小樽はいつのまにか消えて、その後には白い小さな石が山をつくっていた。


 祈り終わったザイデンが顔を上げて、確か小神様がいらっしゃるのだったと思い、視線を神像に移そうとしたところで、ギクリと身体が固まった。


 自分がお供えした赤ワインが消えて、何かが祭壇に乗っている。


 ザイデンはスッと立ち上がって、広い礼拝堂を見た。

 自分とエリーとサンティ以外には誰もいない……。

 イタズラでは、無い?


 もうすぐ、夕方になろうとしていた。




 サチ達は、飛んでも飛んでも、農家しかない天空王国に、今日の観光はここまでと決めて、バイクを収納にしまい、城に瞬間移動しようとした。


「ザイデンさん達はどうなさるのですか?」


 あっ!と思い出したサチはザイデンの元に全員で瞬間移動した。


 サチ達が出現した時、ザイデンは礼拝堂の隣の部屋を発見していて、中にいたジロー爺とカミロを発見して事情を説明していた。


 ザイデンが幸運だったのは、ただの教会では無かった事だろう。


 ジロー爺もカミロもサチもラズも護衛達も善良だ。


「私は祭壇に赤ワインを小樽でお供えしました。そして、祈り終わった時に祭壇を見たら、白い物がたくさん祭壇に乗っていました。どうしたらいいか分からずに神官様に相談していたのです」


 サチは思った。

 それは神様からのプレゼントではないかしら?と。


 サチは神様から、頻繁に、とは言わないものの、服の贈り物などはもらっている。


 好奇心でワクワクとザイデンの後ろをついて行った。


 ジロー爺とカミロが神像に祈った後に祭壇の上を検分した。


 ジロー爺とカミロはサチと同じ答えに辿り着いていた。


 「神様からのお下がり物ではないか?」と。


 ほんの数日前に自分達がいただいた物だ。(その時はサチがお供えしたお酒の代わりだったが)


 ジロー爺がザイデンに告げる。


「神様から、貴方への贈り物でしょう。いただいてください」


 ザイデンは雷に打たれたかのように固まった。

 小さい頃から神聖教国で暮らしてきたザイデンには神は身近で遠い存在だった。

 その、神様からの贈り物?リー家族は震えた。


 サチは白い石?の前までラズの抱っこで運ばれてきた。


 白い丸い石?を鑑定する。


 ー守りの神の石ー

 石の持ち主を守る。不壊。


 サチはザイデンに鑑定結果を教えた。


 ザイデンは何かに納得したように、祭壇の前で頭を下げて、マジックバッグの中にしまっていた。


 ザイデンはジロー爺とカミロとサチ達にお礼を言って、礼拝堂から出た。


 そして、サチ達と明日の約束をして、ザイデン家族を屋敷まで瞬間移動で送り届けた。


 ザイデン達には良い日になったようだ。

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