ザイデン家族、天空王国へようこそ! 3
それからは、腹を割っての話し合いになった。
サチは「ザイデンのお店を天空王国につくりたい」と話し、それにザイデンも同意する。
地上と天空王国が繋がれば、地上からの天空王国侵略もあるよね?という話しになれば、サチが「入場制限を作る」と言い、それはいいと国王とザイデンが同意する。
そして、具体的な案が決められていく。
相手の意見を肯定すると、相手の好意を得やすくなる効果がある。
サチと国王とザイデンは、腹を割った事により、より良い未来と信頼に進んだ。
そして、空気になっているサンティは、国王に顔を見せた事で仕事は大体終わっている。
だが、父と国王とサチの雑談と言える商談を聞いている事によってサチの非常識さと素晴らしい能力が分かり、国王の苦労話を聞いて国と商会の運営は似ていると考えたり、父の熱い思いと発想を聞いて、いつか自分もそこに並び立ってみせると勉強し、少しずつ成長していた。
そして、王妃様とザイデンの妻・エリーは、服の話で盛り上がっていた。
王妃様がエリーの見た事もない服を褒めて、エリーが地上の最近の流行や、王妃様が来ている服は地上ではいつ流行ったデザインだとか。
王妃様がめざとく、ザイデンのネックレスとエリーのネックレスがお揃いで羨ましいと言えば、使徒様のお願いを聞いたお礼に貰った品だとか、宝石を知らなかった王妃様を馬鹿にせずに、商人の妻として、地上の富裕層の生活を教えたり、そこから話しが広がって、魔道具から冒険者から魔物、文化の話になったり、エリーは王妃様を飽きさせないように頑張っていた。流石、大商人の妻である。
それから、王妃様があまり地上に興味を持たないように、天空王国の素晴らしい点を大袈裟なほど誉めておいた。だって魔物がいないのは素直に羨ましい。
自国を誉められて嬉しくない人はあまりいないものだ。
それから子育ての大変さに移っていく。
サチが飲み物を適宜追加していたので、大臣達がうるさいのに迷惑している以外には問題が無かった。
昼食が部屋に届いて、やっと話が中断した。
初めは上下関係から始まった関係が、友人と言えるくらいにはランクアップしていた。
サチ一行とザイデン家族は、せっかくだから天空王国の食事を食べてみようということになり、食堂に行く為に部屋を後にした。
そして、食堂まで遠いので、サチの改良した新セグウェイをザイデン達の3人分創造して、護衛達に乗り方を指導してもらった。
ライデンから丁寧に教えてもらったザイデンは密かに感動していた。
神聖騎士とは神聖教国の男の子が一度は憧れる職業である。
その服装を近くで堂々と見れて、乗り物の乗り方を丁寧に教えてくれる。
憧れの芸能人が一般人に丁寧に教えていると例えたなら理解出来るだろうか?凄い事である。
ザイデンは密かにミーハーだった。
そして、全員が乗れるようになったら、サチが先導して飛び、ザイデン家族をサチ一行が囲んで、ゆっくりと進んで行く。
ザイデン家族は、城の内装や横から走り去っていくスナーやすれ違うスナーに心を奪われているのか、乗り方が危うい。
どうにかこうにか食堂について、スナー置き場に新セグウェイを置いたら、ザイデン家族が目立つ事目立つ事。
服が国王様や王妃様よりも高級なのが悪い。
村人ルックの人達の目が自然に吸い寄せられている。
エリーがエレナに控えめに話しかけた。
「エレナさん、飲み物を飲みすぎてトイレに行きたいのですが案内をお願いしてもよろしいかしら?」
恥ずかしそうにしながらもエレナに問いかける。
「エリー殿、天空王国のトイレはあまり綺麗ではない。サチ様に頼んでみるので『おうち』のトイレに行きましょう」
実は朝食を食べて、その後トイレに行ってからエレナもトイレに行っていなかった。飲み物を飲んでいない分我慢が出来ただけかもしれない。
エレナが飛んでいるサチにこっそりと話しかける。
「サチ様、サチ様、おうちを出してください。トイレに行きたいです」
サチは、あ!そうだ!トイレに行ってなかった!と思い、急いでおうちを出した。
エレナがエリーをエスコートするので、サチは慌ててザイデン一家も入れるようにした。一応結界を張ってあるので。(悪意や害悪のある者にしか効かない。おうちは基本的にサチ一行しか入れない)
そして、全員で連れションだ。
大丈夫!トイレの数は多いから!
そして、食堂でおうちを出した事によってさらに目立っている。
約20分後、みんなおうちから出たので、サチはおうちを収納にしまった。
そして、ラズ達と護衛達が天空王国のバイキング形式の食事の仕方をザイデン家族に教える。
ザイデンはこの食事の仕様を地上で広めては……と考えて、無理だな採算が取れないと諦めて、エリーとサンティは楽しみながら料理を皿へよそっていた。
そして、やっぱり食堂中の注目を集めている。
料理を取ったら食堂を見回すが、8人が全員一緒に座れるテーブルは見当たらない。
仕方なく、4人と4人が座れるテーブルに分かれて座る事にした。
ザイデン一家のテーブルにはエレナが一緒に座り、おかわりなどに付きそう事になった。ザイデン一家が注目を集めているので護衛だ。
1時間ほど、ゆっくりと食事をとった。
それからまたおうちに入ってトイレをしてから、国王様の部屋に行く事になった。
国王様の部屋にて。
「おお!サチ様!何かお忘れですかな?」
国王様は午前中いっぱい、サチとザイデンとお話しして満足感でいっぱいだった。また、サチ達が訪れるとは思わなかったのだ。
国王様と親しくなったザイデンが代表して用事を言う。
「国王様、失礼します。先程お話しした『果物の取り引き』について、果物畑は国営だとお聞きしましたので、価格交渉と継続したお取引きをする為に誰か派遣していただきたいのですが……」
そうである。
天空王国国営の果物畑であるからして、勝手に価格をサチ達とザイデンとで決めては問題があるとして、国王様の部屋まで来たのだ。
「う〜ん、それでは、財政管理大臣と農業大臣がザイデンさんについて行って交渉してください。全部任せますので」
国王様、財政管理大臣と農業大臣に丸投げである!
だが、国王様と長いこと付き合って来た大臣達は慣れていた。特に急ぎの仕事も無いし。
天空王国は残業の無い国である。クリーンな国だ。
大臣2人が立ち上がって、ザイデンに挨拶する。
そして、案内を開始した。
廊下に出て大臣達がスナーに乗り込み走りだす。速度が早い!早い!こっちは初心者がいるんだぞ!
ザイデン家族は心の中で慌てたが、サチ達は慌ててなかった。
きっと、城を出た所で大臣達はサチ達がいないのに気がついて待っているだろうと。
サチ様一行はザイデン家族を囲んで、城の正面入り口に走り出す。
案の定、大臣達が待っていたので、サチ達はザイデンを促して車を収納から取り出して乗り込んだ。
ザイデンもマジックバッグの中に入れてきた赤のスポーツカーを取り出して乗り込んだ。
準備は万端である。
そして大臣達に先導してもらい、果物畑に走り出した。




